日付変わって「男女の宴(うたげ)」もひとまず終わり、就寝・・と行きたい所だが、二部屋に分れてとは言え、六人も居ると、そう簡単に寝付けないのも事実だった。一足先に内風呂を使って、浴衣を纏(まと)って寝床に入った、初美と由香は、暫し雑談に興じ。
初美が切り出す。「由紀ちゃんとは、よく出かけたりするの?」対する由香「そうですね。二つ違いなんで、小学校時分辺りから、よく家の近所で遊んだり、親の使いに行ったりしてました。少し齢が行くと、ウチらの地元 梅田や難波、日本橋の繁華街へ、買い物とか映画観たり、ネカフェ行ったりとか、今までよく一緒に行動してますね。まあ、旅行はあたしが高校に通う様になった辺りからですが・・」と返し。「そうか。羨ましいわね。あたしは女きょうだいがいないから、貴女たちの様な経験がなくて・・」 「ですが、余り気にされない方が良いんじゃなくって?あたしたちだって、一長一短なんかなあ?なんて思う事ありますもん」 「なる程ね。何となく分る様な・・だわ」二人は笑った。
初美は続ける。「所でねぇ、由香ちゃん・・」 由香「はい・・」 「宙(そら)ちゃんって、変わった趣味があるわね」 「趣味・・ですか。あっ・・分ります。その前に・・」 「うん、何かしら?」 「宙ちゃんと行った、お花見の時の事ですか?」 「そう。あの娘(コ)ね、昨日になるけど、昼間、県境の山間でお花見してた時、変な出方をしたのよ」 「ああ、発電所横の公園ですよね。丁度、あたしが伯父様たちと、蒸機の写真を撮ってた時じゃないですか?」 「そうそう・・」 「うーん、何か大声じゃ言えない様な事・・ですか?」 「そうなの。小半時位 お花を観て、ベンチで休憩してる時、あの娘、あたしの乳房(おっぱい)をねだって来たのよ」
由香「わわ、何と!女どうしでそんな出方して、どうするのかしらね?しかも、野外でしょう?」 初美、困った様に「そうなの。まあ、彼女の話だと、小さかった頃、お母様・・つまりあたしたちの社長ね、と触れ合ったりする機会がとても少なかったって事らしいの。それで、つい、そちらの感情が、あたしに向かったって事の様だわね」 「ああ、なる程。聞いてるだけじゃもっともらしいけど、深い所は分りませんよね」 「まあ、そうかもね。それにしても、野外でそれってのはどうかなぁ?とも思いますね。それから、アノ事でしょうか?」 「そう、アノ事よ・・」
初美が由香に語ったのは、夜の男女の行為の折、宙が、他の女たちに対し、順に仕掛けた、細筆(トレーサー)での悪戯の事だった。初美「本当に・・」 由香「はい、お聞きしましょう・・」 「宙ちゃんが、あんな出方をするなんて意外・・なんてもんじゃないわ。トレーサーで、あたしの大声じゃ言えない所に仕掛けて来るんだもの」 「初美先生、それ、あたしもやられました。女のくせに。、ホンマに意外ってか、心外ですよね」 「そうなの。でも・・ね」 「はい・・」
初美は続ける。「筆の穂先をアソコに当てられた時って、ちょっとだけ快感・・なのよね」 由香「う~ん、快感ですか。そうですか・・」 「そうなの。新さんと正常位で交わってた時に、あの娘、あたしのお尻の所にうずくまって控えたのよね。『何かしら?』と思ったら、あたしの下に咲く、あの花の襞を、筆の穂先で一本ずつ、丁寧になぞってくれるのよ。あれ、初めは確かに恥ずかしいんだけど、慣れるとほら、何となく快感になっちゃって・・」 「ああ、分るなあ。あたしも、周(あまね)君と事に及んでる時、同じ事をされましたから・・」
初美「・・ね。だから、終いには『あっ、やめないで!』みたいな感じになっちゃって、正直困ったわ」 由香「彼女、新しい技を覚えた位に思ってるんでしょうね。やれやれ、とんだ嫌らしい『菊いじり』だわ!」 「まあね。でも、余り高圧的にやめさせたりしない方が良いかもよ」 「・・ですよね。余り『やめろ!やめろ!』なんて囃(はや)し立てると、気持ちが歪んで、もっと大変な事をしでかすかもやから」 「そう、それも心配よ。さあ、日付が変わってちょっと経つから、この位にするわね。明日の運転もご苦労様。お休みね!」 「はい、有難うございます。お休みなさい!」これが、初美と由香の寝室の様子であった。
隣接する、16畳の上級大部屋では、周と中条が「語るに堕ちる」動物絡みの雑談に暫し興じ、初め別の話題に花を咲かせていた、宙と由紀も 結局は巻き込まれて同調して行ったのだが、翌朝の風呂でも繰り返された、その大体の内容を、以下に記したく思う。
明けて 4/30の日曜朝も、雲はあるも晴天。「お早う!」「お早うございます!」周と中条は 6/30amに起床、宙と由香も少し遅れて目を覚まし、それぞれ男湯と女湯に赴いた。湯を使いながらの、周と中条の会話を少し。周「しかしまあ、何ですねぇ。猿にそんな特技があるんですか?」 中条「まあ、録画し損ねたんで、物証なしが残念なんだが、あの頃の TV画像じゃ、間違いなく実行してたからな。まあ、信じる他ねぇだろう」 「そうですか。自分の生まれる前の事だから、是非見たかったけど、残念だなあ」 「まあそう失望すんなや。又、再放送があるかもだから、俺が一応注意しといてやるわさ」 「はい、宜しくお願いします!」
これは極めて、低レベルな会話であった。中条が語ったのは、まだ彼が大学生時分の平成初期、某深夜TV番組の、視聴者悩み事相談中、心配性の男性視聴者がした「自慰(オナニー)をし過ぎると、死ぬまで止(や)められなくなる、と言う話を聞いたが、本当か?」と言う意味の質問。番組司会者(R18映像監督 山本晋也であった)や出演者が回答を濁した末、突如「猿に訊いてみましょう」との、大変愚かな対応と相成った。これは「雄猿に自慰を教えると、死ぬまでやるらしい」との、根拠のない話を真に受けたものだ。出演した雄猿は、初め自分の身体を掻(か)いたりしていたのだが、少し後、ものの弾みで手淫を始めた様に見えた。最後は、射精らしい行為に及んだのだが、当然ながら、核心部分はボカされていて、真実かどうかは分らなかった。
中条は言った。「まあ、画像は一定処理されてたし、作話のとこも相当あるとは思うんだが・・」 周「はい・・」 「しかし、何分の一かで、本当かも知れんしなぁ」 「ハハ・・だと良いですね。まあ大抵、作り話でしょうけど。あ、お客さん増え始めた。これ以上はやめましょう」 「ああ、それがいい・・」この話は、宙と由紀が女湯でも拡散し、四人の女は「あり得へんレベルでしょう!」と呆れながらも、結構盛り上がったものだ。
そうこうする内、朝風呂の時間が終わり、昨日と似た平装に着替えた一同は、前夜夕食で集まった食事処で、朝食。焼き魚に納豆、生卵、海苔、野菜煮つけに、誇りの新潟白米と言う「朝の定石」とも言える和朝食。周、中条、由香が白飯を代えたが、この朝は、米と煎茶の美味が一同を魅了した。
食事が終わると、暫し隣接の喫茶室で、地元紙「新潟日報」をチェックしながらのコーヒー・タイム。この合間に中条の元をフロント要員が訪れ、木下姉妹を含む、一同の手回り荷物が、丁度宿から新潟市内へ向かう自動車便に載せられる事が分り、この夜の宿までの送付が叶った。「有難う。まあこれも、須見さんのご尽力だろうな」一同は、そう言い合った。
8:30am過ぎ、一同が宿を離れる時が来た。阿賀野対岸にある、遊覧船着場を 9amに出る、この日始発の川船に乗る為だ。中条たち四人は、この後諸々の荷物を新潟市内へ送る使命を帯びた宿のトヨタ・ハイエースに乗り込み、由香と由紀は、乗って来たトヨタ・シエンタに乗り、二台続行で 少し川下の橋を迂回しながら、船着場を目指す。迂回と言っても、所要時間は 10分弱である。
予定のほぼ10分前に船着場へ赴くと、既に 10人余りの船客が集まっている。宿のワゴン車は、更に荷物の積み込みなどの為、一旦戻る。迎えは 9:45amの予定だ。「お待たせしました。ご案内します!」初老の船頭と、三十路位の補佐 二人の男の案内で、船客たちは、屋形の遊覧船に乗り込む。9am、船は定時に川面へと滑り出した。山間を力強く流れ下った、阿賀野の流れが平地へと向かう所、すぐ川下の人工大堰(頭首工)のせいもあって、その威容を一気に増す辺りが、川船の周遊コースである。約40分に及ぶ、船旅の始まりだ。
(つづく 本稿はフィクションであります)
今回の人物壁紙 AIKA
葉加瀬太郎さんの今回楽曲「ボン・ボヤージュ(Bon Voyage)」下記タイトルです。
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