この雨は こんな風に聴こえる 第46話「対峙」
- 2020/12/30
- 11:19
「困った事だが・・」上体を預けてきた 麗海(れいみ)の口舌を受け入れながら、一方で黒木はこうも感じていた。「俺は・・俺はいつも、こういう場面になると どうなってくのか気づくのが遅いのだ。いや、女が相手の時ばっかりじゃない・・」つまり「一事が万事」に近いという事を 今更の様に認めざるを得ないという事かも知れない。幼少の頃、時に両親から虐待まがいの扱いをされた記憶もあるだろうが、学生時分・・そして社会人...
この雨は こんな風に聴こえる 第45話「予行」
- 2020/12/25
- 15:36
殆ど雲を見ない晴天と 逃れようもない猛暑の下、昼食を終えた麗海(れいみ)と一旦別れ、黒木が金盛副都心の方に近い居所に戻ったのは 3pmに近かった。土曜のこの日は終日休み。翌日曜と繋いで連休だ。掃除などの家事は日曜に回し、この日は徹底して己の趣味などに充てようと決めた彼だった。撮り貯めていた鉄道や航空などの乗り物写真を CD-Rなどに整理。少しの間のネット徘徊などを経て 5pmを回り、近場の食品スーパーまで 夕食...
この雨は こんな風に聴こえる 第44話「予兆」
- 2020/12/21
- 13:04
7月の下旬、梅雨が明けた様だった。よく夜に見る 宥海(ゆうみ)が出演する TV番組の気象情報でも「梅雨明けしたとみられる」の報がもたらされ、これに接した黒木は「やれやれ・・」と思わずため息を漏らした。「この夏も・・」彼は独り続けた。「又 灼熱の日々が来るな。昼間も地獄、夜も地獄・・か」 確かに、ここ数年の 中京圏の夏の暑さは半端ではなかった。昼間の最高気温は連日 30℃台後半。時に 40℃に迫る日もあった。夜に...
この雨は こんな風に聴こえる 第43話「試案」
- 2020/12/15
- 22:43
「この事は・・」先程までの行為を終え、シャワーを前に 依然として下方を露出したまま 黒木が言った。「ええ、続けて。手短に済ますんでしょ?」長手ソファ上で 同じく下方を露わにした宥海(ゆうみ)が 両の脚を開いて寛ぎながら返してきた。黒木は続けた。「つまり、麗海(れいみ)ちゃんの関心を なるべく早く俺からそらす為に、ちょっと試したい事があってね」宥海「良いわ。聞きましょう」 黒木「はい、それで・・」 「そ...
この雨は こんな風に聴こえる 第42話「推察」
- 2020/12/09
- 11:08
「これは・・」 後背位(バック)で交わっていた時の事。後ろから、宥海(ゆうみ)の黒髪をかき分け、露出した右耳に息を吹きかけながら、黒木が続けた。「俺の邪推かもだけど・・」 「ふっ・・い、良いわ。聞いてるから続けて。あ、あうっ・・」 「ご免ご免。余り腰動かさない方が良さそうね。少し止めるわ。それで・・」 「うんうん・・」 黒木、更に続けた。「少し前のあの夜、つまり麗海(かのじょ)に初めてモデル・ルームを案...
この雨は こんな風に聴こえる 第41話「勘案」
- 2020/12/05
- 00:17
とに角「あの夜」は、黒木兄弟にとり、特別に心地良いものになったのは事実だった。事後のシャワーを使い、弟・存(たつる)がその殆どを担ってくれた モデル・ルームのリセットを済ませると、麗海(れいみ)を交えた三人は 直下にある黒木の居所へと戻り、彼女と存は寝室、黒木自身は居間(リヴィング)の長手ソファを延長して、ついでに兄弟の貴重品は手を出されぬ様 黒木のみぞ知る小型金庫に収めて施錠の上、泥の様に眠った。朝方...