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ちょっと入淫 第10話「夜陰」

入院二日目の夜も、窓外は暑かった。降っていた雨は、夕食の頃と前後して止んだ様だが、高い湿気が残り やや不快な気候。それでも病棟の中は 程よく空調が利き、まあ快適さが保たれていた。それは 宮城一路(みやぎ・いちろ)の入る、上階の特別個人病室も ほぼ同様であった。全ての病室は、原則 9pmに消灯となる。一般病室を含め、個人的に必要な時は 寝台灯(ベッドサイド・ランプ)や足元灯の使用が許されていた。宮城も例外で...

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ちょっと入淫 第9話 「再来」

「ちょっとなあ・・」集改札口の傍らに佇(たたず)む中条(なかじょう)は、己の方へと向かって来る 若い美女二人に目を遣りながら呟く。「又会えるのは嬉しいが、あのバカ犬共の四重奏を見る為だけに、関西くんだりからここまで来るってのも何だかなあ・・」そう思いながらも、美人姉妹は近づいて来る。6pm少し過ぎに、ほぼ時刻表通りに到着した 大坂なんばからの近畿参宮電鉄の特急から降りて来た 木下由香・由紀(きのした・ゆか...

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ちょっと入淫 第8話「回診」

8/18 雨の金曜日。中条 新(なかじょう・しん)が、その居所で起床早々 斜め向かい家の不良な飼い犬「マル」の「粗相」なる 低レベルな雨情を見せつけられていた同じ頃、彼の学生時分の同級生 宮城一路(みやぎ・いちろ)は、予想超えの 入院先特別個人病室にて、久々に穏やかな朝を迎えていた。前記の様に、彼の会社兼居宅は N市でも西寄りの下町。結構遅くまで、近隣の製造業の機械音などが聴こえて来たし、週末などは、彼も若...

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ちょっと入淫 第7話「受信」

「来たな。間違ぇなくあいつらだ・・」宵の窓外を見下ろしながら、中条が呟く。斜め向かいの商家「松乃家(まつのや)」の通用門で、用務車から下された 動物の載っているらしい籠(ケージ)は、計三つであった。大旦那、若旦那と若女将らしい女性が、一つずつを手に提げ室内へ。その後を「ワン、ワン!」落ち着かない様子で しきりに尾を振りながら飼い犬「マル」が続いて行く。暫くして、ワン・ボックスの用務車も 駐車場所に戻さ...

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ちょっと入淫 第6話「問診」

確かに、様子がおかしいのは事実だった。初めの話で 宮城一路(みやぎ・いちろ)は、一般病室・・つまり他の患者との「相部屋」に入るものと思っていた。しかし、通されたのは 普通この手の病室が多く設けられる中以下の階ではなく 12F建ての病棟 最上階に近いフロアであった。この辺りの層は、複数ある個人病室、そして症状が重かったり 社会的立場のある人物がよく入る 特別個室である。「宮城さん・・」落ち着かない様子で、...

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ちょっと入淫 第5話「合流」

「間もなく 三瀬ヶ谷(みせがたに)、三瀬ヶ谷に着きます。お出口は左側。お降りのお客様は、お忘れ物ございません様 お仕度をしてお待ち下さい・・」人気(ひとけ)のない列車の乗降台(デッキ)に、山井(やまのい)車掌の 落ち着いた案内が流れる。故郷の北紀長島町から N市へ向かう JR紀勢東線の特急「紀伊4号」の化粧室(トイレ)内で、男女の「事」に及んだ瀬野美波(せの・みなみ)と豊野 豊(とよの・ゆたか)は、乗り込んだ次の停車...

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ちょっと入淫 第4話「時限」

真夏の曇り空の下、K半島を南北に縦走する JR特急列車 上り「紀伊4号」は、鬱蒼(うっそう)とした深い森林を縫って、上り坂とカーヴの多い紀勢東線を N市へと向かう。その最後尾 4号車の化粧室内では、看護師 瀬野美波(せの・みなみ)と、かつて世話した若い患者 今は高校生の豊野 豊(とよの・ゆたか)の 大声では語れぬ行為が進んでいた。「手間取らない様にしないといけませんね。ここじゃ、余り空調(エアコン)も効かないし・...

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ちょっと入淫 第3話「北進」

「そうかよ・・あの一家と宮城さん、顔見知りだったとはなぁ。犬繋がりたぁ言っても『世間は狭い』たぁ、この事か・・?」暫くぶりの、学生時分の先輩と再会を果たした夜、勤務先でもある妹夫婦宅での夕食に便乗の後 居所に帰った中条は、寝酒のグラスを手に TV番組をチェックしながら そう呟いた。「あの一家」とは、前回も記した 彼の視界から斜め向かいに位置する 松下家。店の屋号は「松乃家(まつのや)」である。その一家...

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ちょっと入淫 第2話「告知」

ほぼ南北に細長い 金盛(かなもり)公園の西は、既に触れた様に 東海道、中央西の 両JR線と、名豊電鉄本線が並行し、高い頻度で南北両方向への列車が往来する。線路を望む 西向きのベンチに陣取り談笑する三人の男たちの会話も、度々かき消されたのだが、特に中条が 所謂「ゆる鉄」と呼ばれる緩めの鉄道愛好者という事もあって、目立つ不快感を示す者はいなかった。それは宮城(みやぎ)の連れ犬三匹にも言える事で、かなりの音響...

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ちょっと入淫 第1話「対面」

「あぁ、バカだなぁ・・」至近のコイン駐車場(パーキング)に車を停め、公園に現れた中条 新(なかじょう・しん)は 目にした光景に、呟いて反応す。場所は N市中心部の金盛(かなもり)公園。JR東海道線や中央西線、名豊電鉄本線沿いに 東西に数十m、南北に数百mに渡って広がる、細長い敷地の公園だ。多くの桜並木も整備され、春の見頃には N市屈指の名所としても賑わう。時季は 曇天の真夏の盆明け午後。花の後、これも鮮やかさを...

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hakase32

Author:hakase32
愛知県在住の後半生男です。恐れながら、主に18歳以上限定内容を記して参ります。

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