レディオ・アンカーの幻影 第13話「日時」
- 2019/12/03
- 17:44
下方の「不心得」を伴いながら、自らは気持ち良く由香利の放送を聴き遂げた前嶋。大型連休直前の一週間は、日々の仕事を無難にこなし、下旬から 5月第一週にかけての長い休日に臨んだ。確かにまとまったたまの休日は嬉しくないと言えば嘘だったが、主な行楽地や「趣味」でもある JRや私鉄の沿線好撮影地はどこも人出が多く、やり難いのも事実だった。
「こういう時は・・」普段乗り気でない、そう遠くない同じ県下にある実家の雑用や、平日にできない買い物などを集中してこなす事にしていた。やり始めるとこれらも結構面白く、好い時間利用にもなるのだった。更に暇があれば、これ普段は通えぬ最新映画の鑑賞や 貸 DVDを確保、集中して居所でチェックする事もあった。勿論これは、何となく仲が深まり始めたかに見える 社内の同僚・理乃と話題を擦り合わせる為でもあったのだが。
混雑しがちな遠出を諦め 結局は ほぼ居所で燻る毎日だったが、概ね天候には恵まれ、為に近場の撮影には赴いた。帰宅は夜。仕事のある平日程ではなかったが、近年話題の工場夜景なども試していると、どうしても暗くなってからになる訳だ。連休中 3回位 理乃とメールを交換する位はしたが、先日の「深い事」に及んだ後だっただけに、次の行為はもう少し先送りしようと考えていた。
元号が「平成」→「令和」へと替わった 5月は、初日の曇天が、二日目にはうって変わった快晴に。「まぁ、今日も近場だ・・」主な所を避けた鉄道沿線と、県営空港周りの余り知られぬ航空撮影のスポットを周ると 忽ち一日が過ぎた。夕食を「外」で済ませて暗くなってからの帰り。入浴を終え、自室で TV番組とネットを並行してチェックしていると、携帯メールの着信通知があった。
「さて、誰か?ん・・?」 目を落としたアドは、由香利からのものだ。「感謝です。今日は貴女もお休みですか?」と返せば 由香利「いえいえ、こちらはお仕事の合間よ。深夜じゃないけど、この後ラジオ特番に出るの」 「そうか。そりゃ聴かんといけませんね」 「宜しくね。所で、今月に貴方の近くへ行く件だけど・・」 「はい・・」返事を送った前嶋は、短い深呼吸を一回。
由香利は続けた。「5/16と 17の木・金曜に二日間の予定で、そちらの支局へ番組の事で出かけるの。まぁ出張ね。それでね・・」 前嶋「はい、聞いてますよ」 「二日目の金曜は直退扱いなの。つまり現地で OFFにして良いって事よ。だからその夜と続く土曜で、貴方と会えたらッて思うとこよ」 「好いですねぇ。それ!自分は大丈夫ですよ」 「OK!それで決まりね」
かくして、由香利と前嶋の初の逢瀬は 5/17金曜夕方の内定をみた。前嶋は彼女に、N放送の支局からも遠くない金盛副都心・金盛公園傍の よく列車撮影に赴く「末前(すえまえ)橋」と呼ばれる陸橋の事を伝えた。雨天でもなければ、そこを待ち合わせ場所にしたかったのだ。直ぐに由香利の同意も得られた。彼女は「まぁ大丈夫でしょう。今まで行った事ないけど、グーグル・マップとかで調べれば分かる事だし・・」 受けた前嶋も直ぐに「それも良いですね。ですが、念の為 後で周辺図添付の PCメールも送りますよ」と返した。「うんうん、そうしてくれれば心強いわ・・」そう返した由香利の気分は、少しほぐれた様だった。
「のぞみさん、所でね・・」 「はい、聞きましょう!」今回のメール交信は、まだ続きがある様だ。「もう少し時間があるの。だから・・」 「はい・・」 「少し濃いお話をしましょう。終わったら消去するのが条件よ。約束できる?」 「ああ、勿論!」 「じゃあ始めるわ。もう分かると思うけど、初めのご挨拶の次は、口唇(リップ)でするご挨拶・・よね」 「おお早い!もう来ましたか?まるで新幹線だな!」返す前嶋、驚きを文面に滲ませた。
由香利「それ位で驚いちゃダメ。新幹線は、貴方でしょ?」 前嶋「ハハ、そうかもですね。それならご免なさい。でも、新幹線と思われて結構です。俺にゃ光栄な事ですから・・」 「そうでしょ。だから早めの接吻(キス)になる訳よ」 「そうそう。初めと二コマ目の間は短い方が好い。ただその接吻、舌かを使っちゃダメですか?」 「まぁ、その時次第よね。でも、どうしてもしたかったら、あたしへの『押し』が強くないとダメかもよ」 「わ・・分かりました。そこん所は一つ、粘り腰で希望を持ってやりますから宜しくお願いします~!」
「うんうん、好いぞ好いぞ!」徐々に濃く、際どさを伴うメール文面のやり取りを感じ始めた前嶋には、こんな気分が漂い始めた。「由香利さん、では伺いますが・・」前嶋、今度はこう出た。「何かしら?」の返事を確かめ「舌舐めずりとかを伴う、随分濃い接吻な訳ですが、その時にですね・・」 「はい・・」 「貴女のお耳とか、首筋を舐回しちゃダメですか?」 「ふふ、困った子ねぇ・・」返信の向こうから、本当に由香利の困り顔が見えそうな気がした。が、それも美しく・・
で、返事の続きは「絶対に嫌・・とは言わないわ。貴方の出方次第よ。私の不満がなければ、それも有りね」 「そうですか。有難うです。こりゃ期待大だ。頑張りまぁ~す!」 「まぁまぁ、そう昂奮しないで。貴方を自然に出せば、きっと上手く行くわよ」その由香利の返事を見て、前嶋はふと思った。「それって何か?由香利さんの眼前に、俺の『竿』を差し出すって事か?」
「あ~あ!叶うならホント、そうしたい!」鎌首をもたげて来る そんな不良な想いを、前嶋は辛うじて押し留めた。「おおっと、ダメダメ!ここは言葉だけにしとくんだ。勿論、お前もだぞ。分かってんのか?」と彼は、隙を見ては勃起しようとする己の「竿」を何度も叱りつけた。余り効き目がなかったのも事実だが。
「さて、由香利さん・・」少しの良からぬ昂奮を収めると、前嶋は由香利にこう送った。「はい、聞くわ」返事を得て 「今度は、貴女の胸に飛び込んでみたいですね」とやった。見た彼女「ほらほら・・」と呟いた。そして「来ると思ったわ。スケベ・・」 その一方で、試す様に男に返した。「そうですか。飛び込んでみたい・・ね」 そして続けた「どんな風に?」
前嶋は、些か返答に窮した。ここで今 露骨に「乳房(おっぱい)揉んで摩って舐め回し・・」などと露骨な事は言えまいて。一呼吸おいて、こう返した。「まぁお気づきかと思いますが、貴女の美しい『胸の双丘』をゆっくりと、じっくりと愛でてみたい訳でして・・」なるべく言葉少なに綴ったつもりだったが・・
「やっぱり、下心って奴ね・・」聡明な由香利に 本音の所を察知されたのは無理もなかったかも知れない。読んだ彼女は「それ見ろ!」位の受け止めだったろうか。「やっぱり、下心見え見えよ。でも まぁ、好いか・・」の諦めに似た気持ちも、一方にあった。「要は・・」彼女は思った。そして・・「あたしの『胸の双丘に、じっくりと『悪戯』がしたいんでしょ。嫌らしい『夢と希望』だわ。でも、まぁ良しとしましょう。彼に一摩り位させたって、減るもんじゃなし・・」そして、前嶋への返事。「まぁ、それも貴方次第よ・・」 読んだ前嶋「有難うございます」と返す一方で 「まだまだ・・」とも思う。「これから、下方があるからな。いやぁ、あの美脚も攻めないと・・な」
(つづく 本稿はフィクションであります)
今回の人物壁紙 桜羽のどか
日野皓正さんの今回楽曲「スウィーター・アンド・スウィーター(Sweeter&Sweeter)」下記タイトルです。
Sweeter&Sweeter