想いでの山峡(やまかい)～林間学級の秘密 第11話「逡巡(しゅんじゅん)」
- 2016/09/23
- 11:24
7月23日の木曜、この日は雨。これが、この年の梅雨最後の降雨となる。
健(たける)、徹の二少年。この朝は、いつもの戸外での朝錬が叶わない為、ラジオ体操と早めの掃除に充てる事にした。勿論、後者は途中まで。続きは、朝食後に持越しだ。
「お早うございます！」「はい、お早う！」二女講師と挨拶を交わし、朝食に臨む二少年。メニューは、定番の洋朝食と大体同じ。この日午前は、午後から川下の親類宅へ向かう、香緒里の二限に亘る授業。途中休憩を挟み、前半で英語、後半で理数系をできる所まで。
午後は、午睡を挟んで、初美の授業が一限と言う日程であった。多少難儀な所はあったが、二少年はいつも通り、ほぼ無難に一日をこなした。午前の教科開始は、JR中央西線上り貨物 3088、終了は同じく、上り貨物 3084の各列車通過が合図である。
昼食後、暫しの午睡。午後3時半、香緒里が中山荘(ちゅうざんそう)を離れるのを見送って、初美の授業開始。同4時半過ぎの、下り貨物 81列車の通過を合図に終了。この間合いで、入浴や夕食の準備に当たっていた管理人 早瀬夫妻が帰宅。中山荘に居るのは、初美と二少年だけになる。
彼女は、少年たちからの情報も得て、JR中央西線の、貨物列車通過予定表を作って準備していた。同線の旅客列車は、一日にN市と信州のG市とを結ぶ特急「しなの」が13往復、主にF県下とG県下とを結ぶ各駅停車が、普段10往復、冬場以外の土・休日は、N市から直通の快速列車1往復が加わる。
貨物列車は、日に5往復が基本で、主に冬場、まれに夏場も不定期の1往復が加わる。貨物列車の、大体の通過時刻は以下の通りである。
下り 午前9時35分頃 6883列車 石油専用で、主に冬場の不定期便
午後4時40分頃 81列車 日に一便のコンテナ専用。基本 月曜日休み
午後5時20分頃 5875列車 石油専用で、基本 土・日曜日休み
午後8時10分頃 5885列車 内容、日程は 5875列車に同じ
午後9時50分頃 3081列車 内容、日程は 5875列車に同じ
午前2時35分頃 3089列車 石油専用で、基本 日・月曜日休み
上り 午前8時55分頃 3088列車 油槽車返却用で、基本 土・日曜日休み
午後0時20分頃 3084列車 3088列車と同内容で、基本 日・月曜日休み
午後7時15分頃 6882列車 3088列車と同内容で、主に冬場の不定期便
午後9時35分頃 5878列車 内容、日程は 3088列車に同じ
午後10時30分頃 5880列車 内容、日程は 3088列車に同じ
午前1時30分頃 80列車 日に一便のコンテナ専用。基本 始発の日曜日休み
とまあ、こんな所だろうか。土曜日の運休は、時折「活転」と言って、必要時には運転される事がある。深夜に通過の上り便が「始発の」とあるは、前日の夜に出発し、途中で日付が変わるからである。下りの3089列車が通過すると、普段、早朝の約四時間は、列車の往来がない。
この日も、ほぼ定刻通りの下り貨物 81列車の通過で一日の授業が終わり、入浴、夕食の両準備が整った午後5時頃、二少年は初美から、先に入浴を促される。たまの一番風呂に、彼たちも有難く応じ、快く汗を洗い流す。温泉かけ流しとは行かないが、心地良い一時。5時20分頃、下り貨物 5875列車の通過音に合わせたかの様に、浴室のドアがノックされる。
「二人、一緒に入っていい？」声の主は、勿論女講師 初美。一瞬、戸惑った彼たちだったが、すぐ周りを片づけ、健が「OKです。どうぞ！」の返事。
腰にフェイス・タオル一枚の、裸の美女が眩しく現れる。「ようこそ！」二少年、恭(うやうや)しく迎え、ヤンヤの喝采。当然か。二人は、交代で師の背を流したり、垢すり奉仕などの後、もう一度浴槽へ。程なく、初美も入る。「二人、お風呂は好き？」「勿論、好きですよ。特に今日は、貴方と一緒ですし」二少年、こう返す。初美「ふふ、好い裸のつき合いでしょう」と言えば、彼たちも「もう最高ですよ！綺麗な女性(ひと)と一緒って！」喜々として応じる。
「この後の補習、楽しみね」と初美。彼たちも「こちらこそ、宜しくお願いします」少しおいて彼女「あたし、髪を洗うから、二人は先に上がっていいわ。気が向けば、つき合ってくれても好いけど」と言うも「一緒にいたい・・けど、いや、落ち着かないでしょうから、お先に出ます」少年たちは逡巡の末、一言伝え、上がって行く。本当は、二人共、更なるボディ・タッチの誘惑に駆られて仕方がなかったのだが。
健「いや参ったよ。見事なボディだけど、余りジロジロ見るのも嫌らしいと思われる。それは俺も好かんからなあ」と言えば、徹も「本当になあ。真に受けてしつこく見れば、そりゃ変態と思われるかもよ。この前の悪戯(いたずら)みたいにさ」と応じる。
健「そう言えば、あれから何日経ったっけ？」尋ねると、徹「そうだなあ。確か三日前じゃね？」こう答えた。健「もう三日か」 徹「ああ、速いな。時間が経つのって」と返す。二少年が、入浴を適当に切り上げたのは、続く「夜の補習」の事もある為だ。「でも、垢すりは大事だな。あの女性(ひと)には、いつも綺麗でいて欲しいから」これは、二少年の一致した想いだった。
程なく夕食。片付けの後、暫くTVやスマート・ホンのチェックなどしてから、寝室へ下がろうとした二少年。その時、廊下の方から「ちょっと、二人来て」呼ばれる。応じて出向いた彼たちの前に、前回とは少し趣 異なる、妖艶な装いを纏(まと)う、大人の妖精が現れたのは、その時だった。
(つづく 本稿はフィクションであります 2016=H28,7,1記)
今回の人物壁紙 葵
渡辺貞夫さんの今回楽曲「ステップ・アウト・オン・ザ・ストリート(Step Out On The Street)下記タイトルです。
Step Out On The Street
