想いでの山峡(やまかい)~林間学級の秘密 第10話「軌跡」
- 2016/09/22
- 16:18
7月22日の水曜、曇り空の朝だ。夜は、降雨の天気予報が出されている。
前夜、特別林間学級の主任講師 伊野初美(いの・はつみ)によって、早過ぎる童貞卒業と相なった、白鳥 健(しらとり・たける)、箕輪 徹(みのわ・とおる)の小6二少年。浅かった眠りの夜が明け、この日の朝錬は、軽くキャッチ・ボールをして終わろうと言う事になった。
前夜は、良く眠れない事もあって、学習絡みの事共や、性行為の体位などを含む雑談が日付が変わっても続き、ようやく眠りに就けたのは、午前1時半頃、JR中央西線上り貨物 80列車が、中山荘(ちゅうざんそう)の真下を、轟音と共に通過する頃だった様な。
健「午後早く、雨が降ると嫌だな。俺、朝飯前に洗濯の準備して来るわ」と言えば、徹も「なら俺は、掃除をできるとこから始めるかな」と応じる。それを、目に留めた初美「二人共、夕べは余り寝つけなかった様ね。ふふ・・」呟く。
「生まれて初めての経験だったから、それは大きな衝撃だったでしょうよ。でもね、人は慣れるもの。次は、そしてその次は、きっと落ち着いて来るものよ。初めて迎え入れた少年『自身』、とても好い感じ。少し小ぶりの、程良いサイズ。しなやかさのある、程良い硬さ。それに、ああ・・繋がり、子宮口にキスする時の、程良い感触。周りの体毛がまだなだけで、次も、その次も交わりたくなる・・」
「お早うございます。夕べは、有難うございました!」「お早う。午後は頑張ってね!」朝錬後のシャワーを経て、三人は午前7時に朝食。この朝は、初美が粥を炊いてくれ、二少年にも歓迎された。茹で卵、海苔、漬物、あさりのしぐれ煮、梅干しと言ったライン・ナップか。果物少々とコーヒーは、いつも通りだった。
早めに平らげた健「ご馳走様です。先生、早めですが、洗濯にかかります」告げて作業に。「宜しくね」と応じる初美だったが、微かにニヤリ。その理由は後述する。僅かに遅れるも、徹も朝食を終え「ご馳走様です。僕は、持ち場の掃除に入ります」と一言。「了解よ。もし早く終わったら、どちらか遅れてる方の応援ね。白鳥君にも伝えて」と初美。「かしこまりました」徹は、まず生徒の寝室掃除にかかった。
些か危ない「夜の補習」のあった翌朝の洗濯は、少年たちの役目になった。理由は、管理人 早瀬夫妻の出動が午前10時からにならざるを得ず、前夜の着衣を、なるべく早く収納できる様、早めに洗って干す必要があるからだ。彼たちもそれが分っていて、大いに協力的である。掃除と言っても、全部しなければならないのは、生徒の寝室だけ。教室の方は、健と合流しての分担作業。途中からは、朝食の片づけを終えた初美も加勢してくれるので、余り重荷に感じる必要はなかった。
8時過ぎだったろうか。自室の掃除を終え、教室のそれにかかった徹の所へ、健から声がかかる。「徹、ちょいと手伝ってくれんか?」 徹「何だよ。こっちはまだ途中なんだ。ここでズラすると、先生が好い顔しないからなあ」 健「まあ聞けよ。夕べの、その先生のエロコスが、フルセットで洗濯に出てるんだよ」「おい!マジか?」徹の態度は一変した。初美に上手く一言、掃除途中の教室を出る。
健「ほらほら、お前の憧れてた白コス、この通りだよ。洗ったから、丁寧に干してあげろよな」 徹「ああ、分った分った。早く乾く様に干さないかんな」午後には、川下の街から、特別講師 山音香緒里(やまね・かおり)が戻って来る。それまでに、収納できなければ拙い。もうすぐ出動の管理人 早瀬夫妻は大丈夫だろうが。コソコソと笑いながら、二少年は洗濯干し、そして残りの教室掃除をこなした。
JR中央西線上り貨物 3088列車が通って少し後の午前9時、この日の授業に入る。午前の前半は、二少年のペースでできる、自由研究関連の作業。ここに初美も加わって、国語授業の教材作りを並行して行う。次いで後半、正午過ぎの上り貨物 3084列車の通過まで、初美の授業が行われたが、彼たちは、何となく眠そうだった。初めて性交(セックス)を経験したあおりかも知れないが。
管理人 早瀬夫人が用意してくれた昼食の後、二少年は暫しの午睡。ただ、午後2時半には起きて、洗濯物の収納をしなければならない。乾かない物は夕方まで放置だが、そうは行かないのが、初美の着る、例の妖精調白コスだ。特にショーツはTバック。香緒里が見たら、一発で怪しむ事だろう。幸い、徹が気を利かして早めに干した事もあり、ミニ・スカートや二ーハイを含む全部が乾いていた。「さあ、バレない様にしまおうや」二少年は、初美の指示で、そのコスのセットを、分り難い所に収納した。
「お疲れ様です!」香緒里の乗る、トヨタ・アルファードが再び姿を現したのは、問題の白コス収納が終わった直後の午後3時。「ふぅ、危なかった」これが、少年たちの本音である。彼女の着後、すぐ全員で、車に積まれた物品の取り降ろし。部屋への収納を含め、15分位で作業を終え、休憩を経て、午後4時過ぎから、香緒里の英語授業。これが、5時過ぎの、下り貨物 5875列車の通過まで続く。
入浴と、夕食の準備は、早瀬管理人夫妻と初美が協力して行ってくれたので、授業後は、二女講師、二少年の順で入浴。簡単な浴室整理の後、中華の一品 回鍋肉(ほいこーろー)メインの夕食。その後は、香緒里がピアノ演奏を披露してくれ、その鑑賞と、初美の歌唱を聴いたりして、一日の締めくくり。心配された降雨は、夕食中の通り雨程度だった。
晴天ならできる天体見物は、曇天の為、又も流れ。実は、初美にとっては、この方が気分が好かったのである。その訳は、彼女の分れた前夫の、ディープな趣味だったからだ。なりゆきで結婚した前夫は、実は、偏執的な天文オタク。交際期間から成婚後を通し、観測と称して、深夜でも平気で一人でかける事が間々あった。夜の生活も思い通り行かず、すれ違いが増えた揚句、二人は協議離婚した経緯がある。その事が、初美を天文の世界から遠ざける結果となったのだ。
その代り、強みとする歌の方は、存分に聴かせてくれた。香緒里とはライバルの間柄だった事もあり、張り合う事もあったのだが。そう言えば、日中に雑用をする時も、よく演歌や昔の歌謡曲を口ずさむ事があり、その内の一曲が「この愛に生きて」と言う古いナンバー。少年たちも、この曲は喜々として聴いてくれた。
その合間、一瞬、曇天の暗闇に包まれた窓外に目をやった健が、光る物体を目に留める。「あれ、蛍じゃないか?」「そうだよ。あの辺だけ、ちょっと水場があるせいかな」徹も応じ、二人はすぐに戸外へ。
静かに近づき、確かめた後「先生方、蛍です。間違いありません」告げると「まあ、この敷地で蛍なんて。見た事がないわ」二女講師も応じて外へ。暫し、点滅する光の祭事に見とれる四人。その際の、初美の本音「天体見物より、ずっと好いわ・・」
夜9時に終礼。二少年が寝室へと戻った直後、ドアがノックされる。香緒里がやって来たのだ。「君たち、昼間ちょっと元気がなかった様だけど、何かあったの?」「いや、特にありません。そう見えたなら、ご免なさい」健が応じる。「僕ら、異常はありません。ご心配かけて済みません」徹も返す。
「それなら良いけど、何か心配だったら、いつでも言ってね。じゃ、お休み」こう告げて香緒里、講師の寝室へと引き上げる。「有難うございます。お疲れ様でした」返事と共に、二少年、見送る。
「いやー、香緒里先生は敏感だな。もう何か感じ取ってられるぞ」健が言うと「そうだなあ。前から思ってたけど、あの女性(ひと)に嘘はつけないって感じがするもの」徹も応じる。
「それにしてもあの体験、これからも続くのかな?」健が問えば「そうだなあ。初美先生は、続きありの話をされた様な」徹も返す。
健「あーあ、今夜もオナ禁か。辛いなあ」そこへ徹「その話、生きてるのか?」 健「初美先生、何も触れてないから、多分そのままだろ」と返す。徹「て事は、確実に続きがあるな。お前、どうしたいの?」続いて問う。
健「正直、したくない・・気もあるけど、あの女性(ひと)の美しい身体と肌は、一度絡んだら忘れられん。だから・・」 徹「だから、どうなのよ?」尋ねる。健は「したくない・・けど、したい」呟き、徹も「したくない・・けど、したい・・か。健、俺もズバリ同じだよ」応じる。少年たちの「あの事」への、ギリギリの心情が表された瞬間であった。窓外には、蛍の静かな舞が続く。
(つづく 本稿はフィクションであります 2016=H28,6,28記)
今回の人物壁紙 天海つばさ
渡辺貞夫さんの今回楽曲「ファイア・フライ(Fire Fly)下記タイトルです。
Fire Fly