パノラマカーと変な犬 第46話「問答」
- 2018/04/06
- 21:59
「ふふ・・」含み笑いを交えての、初美の問いが続く。「・・で、由香ちゃんに由紀ちゃんとは、深い事したの?貴方が認めても、怒る気もしないけどね・・」 対する中条「ああ悪い・・じゃ済まねぇかもな。確かに、あの美人二人とは、一度は深くまで行ったな」 「正直に答えてくれて 有難う。ま『姉妹味比べ』って風情ね」意外にも、本当に怒る事なく、初美の態度は淡々としていた。
「ちょっと、初ちゃん。気分転換して良いかな?」男が問うと、女は「まあ、いいでしょう。例の向かい家にいる『彼』でしょう?」 「ああ、まぁな。『彼』と呼ぶには能の足りんオタンチンかもだが・・」二人の問答の間中、斜め向かい家の屋上には、男の目には「不良犬」にしか映らぬ「マル」が、恒例ともいえる 階下を行く犬連れ散歩人に 喧嘩を売っている最中であった。
「又また・・」男は呟く。散歩人が遠ざかり、その飼い犬をへこました「マル」は、まずは空調室外機の所へ行って 片足を上げ、ハイキック。雄ゆえの特徴だ。やる事は・・ズバリ、室外機に放水を見舞うのである。用が済むと、今度は、これもしばしば演じる 己の尻を追ってグルグルと回る仕草に入る。中条がこれを「気狂い踊り」と揶揄するのは、これまでにも記した。
「ハハ、おめでてぇ奴・・」又、男は呟く。「さぁ、祭りだ祭りだ!お前の頭ん中なんかは、毎日それこそ 盆と正月、それに五月連休が一緒になって来るみてぇな風だろうが!」 「確かに、お散歩の人たちに吠えついた後の『彼』って、何か軽くて好い調子にも見えるわね」珍しく、初美が合わせてくれた。「ああ、有難よ。たまにゃ合わせてくれるんだ・・」 「ふふ、ホントにたまにって事よ。さあ、彼女たちと入れ替わりに 続きはお風呂で聞こうかしら・・」 「わ・・分かった。姉妹とどうだったか、全て話すわ・・」 ニンマリと反応する初美と向き合う中条は、何か冴えない風情だった。
「どうも、お先でした!」バス・ローブを纏った、由香と由紀が居間に戻った。「それじゃね」待っていた初美が、姉妹に厨房の状況を話し「あたし、新さんとお風呂行って来るから、出窓のとこに出てる テーブルの上をセットしてくれるかしら。ピザはね、あたしたちがお風呂から出る位のタイミングで来るからね」 「分かりました。ここは お任せを!」姉妹に後を頼み、初美と中条は入浴。
「あのね・・」初美の問いが続く。「お風呂では、あの行為したの?」 「それは何、入浴行為(バス・セックス)の事かい?」 「ええ、そうよ。貴方はとも角、若い二人は『あの方』の欲求だって、それなりのはずだわ。可能性は有りでしょう」 「ああ、いやいや・・それはねぇよ」 「ホントに?」 「ああ、嘘言ったって仕様がねぇ、それはなかった。何でかってぇと・・」 「はい・・」 「風呂ん中じゃ、喘ぎでもしたら 周りに丸聞こえだからなぁ。そりゃ 怪しまれるってもんだぜ」 「そう。まあいいでしょう。・・で、今夜はどんな風に進めるつもりなの?」
「その事でござるよ」問われた男は 「貴女の面前でもあるし、今夜は、姉妹には見物・・ていうか見学・・に回ってもらおうと思う。その対象は・・」 「ふふ・・分かった。貴方とあたしが『行為』をするとこを見てもらう・・でしょ?」 「ああ、いかにも。寝室のベッドか、居間のソファか、それは成り行き次第だが・・」 「あは、新さん・・」 「はい、何ぞ?」 男がそう返すと・・
初美は言った。「実はね、あたしも同じ事考えてたのよ。由香ちゃんに由紀ちゃんも、そりゃ貴方から 嫌らしい実技指導をしてもらっただろうけど、ここはやっぱり あたしたちの行為を見せつけてやる必要がありそうだわ。それで得られる事だってあるでしょ?」 聞いた中条「流石(さすが) 元教師だな。今の考えが 後々どう効いてくるかなんて。俺なんかは良う理解せんからな。それ自体は反対しねぇ。ただだ・・」 「はい・・」
男は続けた。「もしもだぞ。姉妹のどっちか、まあ二人共でもいいんだが、周(あまね)君の彼女の宙姫(そらひめ)みてぇにだなぁ、交合中に、貴女の菊花(肛門=しりあな)に悪さをする様なタマだったら どうしようなぁ?」 「ふふ・・それなら大丈夫よ。姉妹の内のどっちかが そんな手に出たら、その時はその時の事よ」 「よしゃ 分かった。そいじゃ、そういう事で・・」男女が入浴したのは、半時程であった。
「じゃあ、乾杯!」初美と中条が浴室から戻った直後にピザが着き、姉妹が用意を終えていた席に、飲み物グラスや野菜スティック、チーズなどと共に配膳、夕食に入る。中条の赤ワイン「十勝トカップ」の大瓶が開けられ、由紀はジンジャエール、酒気の後は、全員が冷やした烏龍茶であった。
中条「内飲みもいいなぁ!」そう言い、ピザや野菜スティック、好みの 真っ黒なブラックペッパー・チーズを順に嗜みながら続けた。「・・ですね。何かね、落ち着いて味わえるのが、ホンマに『○』でしてん・・ 」彼の向かい席に着く、由香が合わせくる。隣席の初美、姉の隣の由紀も 頷いて同意した。
食後の果物とコーヒーをも含め、一時間余りで夕食は終了。姉妹に片付け、初美に寝室準備を頼んだ中条は 少し先に 居間のソファに落ち着き TV番組をチェック。この夜も、贔屓(ひいき)のプロ野球チーム NCドラゴンズは 首都圏遠征をしていたが、どうも調子が今一つの様だった。
「あ~あ、そんな事なら」男は、又も呟く。「わざわざ TVで観んでもいいレベルだな。それじゃ、ラジオに替えるか・・ 」TVを消し、愛用の、私鉄某社の電車に似せた造りの ラジオ放送に替え、食後のブランデーを嗜みながら、会社から持ち帰りを許された、前日付の新聞に目を通していると・・「伯父様・・」居間と厨房の間を仕切る扉(ドア)が少し開き、由香が 少しだけ顔を出す。
「由香ちゃんか。その感じだと、今は余りそっちを覗かん方がよさそうだな」男が返すと、彼女は「さよですね。その辺は 初美先生が仕切られてる思いますんで、もそっとお待ちを・・」 「ああ、分かった。由紀ちゃん共々、華麗な変身を期待しとるぞ!」 「ハハ、なるべくご期待に沿える様にしますさかい。今夜、野球はどないですか?」 「それなぁ・・残念やが、戦況今一つや。そやからラジオに替えたって訳」 「さよですかぁ。夕べは勝ってたのになぁ。ま、あたしたちの応援しとる タイガースも、似たり寄ったりのとこ ありますさかいに」 「ああ、波ありってとこな。困ったもんだが、まあ良ぅなるのは、すぐにゃ無理だし・・」 「ですねぇ・・」
そう言い合っている内に、今度は 寝室とを仕切る扉が少しだけ開き、初美が顔出し「新さん・・」と声をかける。「はい、何ぞ?」彼が返すと 「そろそろ 好い時間ね。あの事を始めても良いんじゃない?」と続け。中条は「あの事ね。分かりはするけど、まあ焦らんと ゆっくり目で行こうや。美人姉妹さんも、準備はできたんかな?」と訊き、初美も「・・でしょうね。あたしは、先に入るわ。さあ、二人もここへ入るのよ」こう言って、姉妹に居間への入室を促す。
「じゃあ、入ります」初美に続き、由香と由紀も 再び居間に現れた。今のところは、三人共 純白のバス・ローブに身を包んではいるが、その下がどうにかなっているらしい事が、男の期待を膨らませる。照明を落とした居間では ちょっと分かり難いが、三人の女たちは、どうも 思い思いのストッキングを着けているらしい位は、中条の乏しい創造力でも分かる様な。「よーし、これからが楽しみだ」彼は、三人の立ち姿を、暫くの間 居間で愛でる事にした。
(つづく 本稿はフィクションであります。次回は 4/9月曜以降に掲載予定です)
今回の人物壁紙 椎名もも
中村由利子さんの今回楽曲「モン・シェヴァリエ(Mon Chevalier)」下記タイトルです。
Mon Chevalier