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想いでの山峡(やまかい)~林間学級の秘密 第27話「再来」

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どれ位経ったろうか。雲間からの陽は西に傾き、蜩(ひぐらし)の声に送られる様に、早瀬管理人夫妻が帰宅の途に就いていた。午睡から覚めた二少年、まずは挨拶に。
「お疲れ様でした。ご安全にお帰りを。又明日、宜しくお願いします!」「有難う。皆さんもつつがなく。失礼します」眼下を行くJR中央西線は、午後のコンテナ貨物便 81列車が通らない月曜なので、良くは分らないが、午後4時は過ぎている様だ。

「少し寝過ぎたな。今夜は、眠れるかなあ」彼たちの脳裏に、少し不安が過った。その不安は、この夜に起きるだろう、もう一つの事に対してでもあったのだが。
健(たける)は気を利かして、入浴準備がどうなのかを覗いてみた。確かめると、風呂は既に適温に達し、入れるばかりの風情であった。「明日、管理人さんにお礼を言わないとな」彼は、徹にもそう話した。「そうだねえ」賛同を得る。

二少年は、厨房で夕食準備を進める初美の所へ行った。「先生、応援が要る所はあるでしょうか?」「そうねえ、テーブルの上を拭いて、皆の箸とか取り皿を出しておいてくれるかしら。でも、分る範囲でよろしい。目途がついたら、二人、先にお風呂に入る様に」笑顔で応じる彼女。しかし、どこか微かに薄気味悪さが漂う美しさであった。

食卓の用意を整え、早めの入浴。そして・・。「二人、入るわよ」途中から初美が加わり、又も楽しい?混浴に。二少年からは、彼女にボディ・タッチを仕掛ける絶好の機会(チャンス)である。垢すり奉仕などの名目で、彼たちは、これまでより多めに、魅惑の裸体に入念に触れる機会を与えられたが、三人だけの、この楽しい混浴は、この日が最後となった。師よりやや早めに風呂から出た二少年、グレーの下着姿で夕涼みの眼下を、少し遅れの下り貨物 5875列車が通り過ぎる。この日は、二機しかいない、ブルー・グレー基調に白帯の、広島支社色の電機が先頭を務めていた。

早瀬管理人夫人が下ごしらえをしてくれた、肉野菜炒めやしじみ汁、米飯、果物などの夕食。これも、やや早めの時間で推移。プロ野球中継もない月曜、少しの間、TV番組やスマート・ホンでネット・ゲームのチェックなどした所で、講師の寝室より呼び出し。「二人、ちょっと来て」

「失礼します」ドア・ノックと共に、入室を促されたそこに、二少年が見たのは・・。
「ふふ。さあ、これはどうかしら?」これまでとは大きく違う佇まいの、初美の夜姿だった。
上体に装うキャミソール、下方に纏うミニ・スカートと二ーハイ・ストッキングのデザイン自体は、大きくは違わないものの、その全てが黒基調。正に「夜の大人の妖精」の風情。しかも、薄目ながら化粧している感じは、気のせいか。
「う~ん、これも素敵!」「夜らしくて好いですね!」健も、徹も感銘を受け、暫し見とれる。初美「二人も、少しずつ大人に近づくから、あたしも、少し雰囲気を変えようと思ったのよ」こう返す。「あれ、化粧されました?」と徹。「ふふ、ちょっとね・・」初美、微笑みながら、応じた。

「さあ、これから夜の講話と補習に入るわよ。二人とも、会いたかったわ。さあ、寝室で、健の伯父様としたお話とかを聞こうかしら」「了解しました」二少年を従え、生徒の寝室へ。曇り空で、時折小雨が降るも、蛍の舞が見られる夜だった。

この夜の初美、まずは先行となる、健のベッドに、例の際どい、立膝のスポーツ座りで陣取る。
半ば露出の、下半身と脚の、絶妙で流麗な線が魅惑的だ。「安心しなさい。穿いてるわよ」落ち着かぬ風情の、二少年にこう応え。下方は、黒のTバック。これも、男性雑誌の付録にありそうな、華のある刺激的な紋様をしている。

「まず、昨日伯父様としたお話が聞きたいわ。君流のマッサージもしてね。徹も来て」初美は、艶っぽく健に尋ねる。左隣に座る健、彼女の肩や腋、次いで乳房に手を回し、右隣の徹は、太腿や臀丘などに指を滑らせながら「はい、それでは・・」切り出す。前日に、中条を交えて話した内容の全てを報告した。
聞いた初美「有難う。伯父様も、中々良いお考えの様ね。それに、二人に、あたしとどう接したら良いかも、教えて下さってる。仰る通りよ。あたしも、二人は、今はあたしのものだと思ってる。この学級の間はね」照明を落とした、寝室に浮かぶ微笑み。昼間見せた、あの同じ微かな薄気味悪さの漂う、美しい笑みである。

健は言った「そうですね。伯父貴の話は、大袈裟かもですが、俺も大体そうなんだと思います。徹も、賛成してくれてますね」傍らで、徹も頷く。
初美「いえ、大事な所は、大袈裟位で丁度好いのよ。特に、あたしの事を大切にする様にってお話は、あたしも感動してるの」途中から、涙声の様な。この時、彼女には、中条に対する「ある感情」が生じたのかも知れなかった。

「初美さん、どんな事があっても、お一人で悪者にならないで下さい!俺たちは、貴方の運命に従います。もし貴方が、牢獄に繋がれる様な事になれば、俺たちも鑑別所へ行きますよ。そして、時間がかかっても、必ず、貴方を取戻しに行きます!」師の手を片方ずつ握り、少年たちは、強い調子でこう言った。

初美「有難う、二人とも。健の伯父様は、本当に大切な事を教えて下さったわ。ああいう男性(ひと)が、学校や学院の先生になってくれれば好いのにね」思わず言うと「俺たちも、そう思います。伯父さんは、学校や学院以外の大切な先生だなって、最近思う様になりました。先生の免許はないですけどね」少年たちも、笑いながら応じた。

初美「じゃ、伯父様は、少しなら時間を下さるって仰った訳ね。健、どう思う?」
健「大体、そうだろうと思います。まあ俺も、もう少しだけ貴方と触れ合っていたいって想いもありますし、それは徹も同じだと思いますよ。なあ」徹に、話を振って行く。
徹「・・ですね。もうすぐ終わりだろうど、少しでも、それまでを充実したいなあって想いもありまして」応じ、健も「伯父貴は、多分それまで分ってくれてると思いますね」こう続けた。
初美「分った。じゃ、今夜の補習は、もっと濃くて深いものにしようね」と告げ、「了解しました。俺たちも、できるだけ分る様、努力します」二少年も、こう返した。

午後7時半少し前頃だ。「じゃ、これから補習の変更する所を話して行くわね」と初美。「これは、二人も期待してるんじゃないかと思うわ。一つの『卒業』って言うのかしら?」「はあ、卒業ですね。それは、何でしょう?」今一つ、呑み込めない感じの二少年。
初美「二人、もう少し近寄って」と、少年たちの肩を抱き寄せて小声でこう言い。「それはね・・」と耳打ち。それを聞いた彼たち「嘘でしょう!」傍からでも分る程、一瞬で、表情が一変して行った。
(つづく 本稿はフィクションであります 2016=H28,8,8記)

今回の人物壁紙 雨宮琴音
渡辺貞夫さんの今回楽曲「ホワット・ドゥ・ユー・セイ(What do You say)」下記タイトルです。
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