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この雨は こんな風に聴こえる 第45話「予行」

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殆ど雲を見ない晴天と 逃れようもない猛暑の下、昼食を終えた麗海(れいみ)と一旦別れ、黒木が金盛副都心の方に近い居所に戻ったのは 3pmに近かった。土曜のこの日は終日休み。翌日曜と繋いで連休だ。掃除などの家事は日曜に回し、この日は徹底して己の趣味などに充てようと決めた彼だった。

撮り貯めていた鉄道や航空などの乗り物写真を CD-Rなどに整理。少しの間のネット徘徊などを経て 5pmを回り、近場の食品スーパーまで 夕食ネタなどの買い物にでも出ようかと思っていた矢先・・玄関のドア・チャイムが二度鳴った。これはこの地域の JR列車がドア閉めの時に鳴らすそれと同じ音階(トーン)だ。

「さてと・・」彼は呟いた。この日 弟・存(たつる)は、彼の勤務先会合参加で会えず、折に諸々の相談で訪れていた 巽 喜一(たつみ・きいち)弁護士も、顧問先の用事で外出しているはず。そして宥海(ゆうみ)は 夜の TV番組出演に備え、もう出局しなければ間に合わない時刻だ。彼等以外に黒木の居所を訪れる者は、直ちには考えられなかった。

「一体、誰だろう。それに、階下ロビーの暗証番号を知ってる者といえば・・」そう思いながら、玄関を窺う。どうやら若い女の様だ。「あれは・・」そう思いながら、一言応答してみる。「はい・・」 返って来たのは「ふふ・・あたしよ。来ちゃった・・」 ドアの外には、昼間と変わらぬ麗海の姿があった。

「おいおい、どうしたの。仕事は大丈夫?」 部屋に通しながら、黒木はそう反応した。昼食の後、まだ 3時間も経たないだろう。聞いた麗海は「うんうん、ご心配有難と。でも大丈夫。状況にもよるけど、あたしのお仕事はスマホかタブさえあれば、何とか回る事もあるのよ」 「ああ、そういう事ね。それならまぁ、安心だけどさ・・」そう返した黒木は、本当に安堵の表情を浮かべた。そして「コーラで良いかね?」

麗海「うん、お構いなく。もう直ぐお食事だし、お任せって事で・・」 聞いた黒木は、彼女が顔を見せる様になった事で少し買いおく様になった 冷やしたコカ・コーラをグラスで出した。そして「荷物、寝室の方が良い?」 「いや、大丈夫よ。お昼の時より、ちょっと多いだけだからさ・・」携えていた肩バッグは、前より少し中身が増えた様にも感じられた。

小半時を経て、黒木は 麗海が寛いだ様子を見て「夕飯 どうしようかな。俺の知ってるとこへ行くか、それとも今から買い物に出るか・・」 麗海「貴方に任せる。あたしはどっちでも良いよ。ただ、お酒は程々に・・ね!」これを聞いて、さしもの鈍い黒木もピン!ときた。「あぁ、やっぱりアレ・・か」

弟・存とは何度も訪れているインド料理店に、彼は初めて麗海を案内する事に。女を伴っての来店は、流石(さすが)に店員達の注目の的となりもした様だが、彼は「あくまで勤務先の関係」としておいた。麗海の注文通り、夕食の酒気は 生ビール一杯だけにしておいた。麗海は、コース料理もさる事ながら、食後のアイス・ティーを特に褒め称えた。聞いた黒木が「又 ちょくちょく来て良いよね」と応じると、優れた笑顔で頷いて返した。

店から黒木の居所までは、徒歩で 10分足らず。部屋に落ち着くと、まずは TV番組をチェック。その一方で「良けりゃ、先にシャワー行くかね?」と麗海を促す。「有難と。でも・・」と籠った様な反応。「ん?」黒木も又 曖昧に返すと 「あのね、一緒に使いたいわ」ときた。

「それ、何となく分る・・」黒木は呟いた。「つまり、貴女の下着の『芳香』を、俺にチェックされたくないんだよね。本当は、もう直ぐにでも愛でたいんだが、仕方がない・・かな」 そんな呟きを、麗海は特に注意して聞く様になった。「分かってくれたかしら?」 「うんうん、つまり・・」 「はい・・」 「つまり、貴女は俺に下着の香りを愛でられたくないって事だよね」

「それもあるわ・・」麗海は そう返したが、続いて「それもあるけど、折角だから シャワー中にも貴方と遊びたいって事」 「あぁ、それね。まぁ、良いでしょう。一度位 一緒するかな・・」 「ハハ、そう来なくちゃね・・」 半時程寛ぐと、二人は浴室へ。

「まぁまぁ・・」脱衣➡生まれたままの姿に還った麗海が、窘(たしな)める様に言った。「あたしの『香り』を愛でたいのは分かるわよ。名残惜しいでしょ。でも・・」 「はい、何でしょう?」又も黒木は、とぼけた様な反応だ。そして「確かにね、貴女の優れた『芳香』が感じられないのは残念ですよ。でも、もう一つありそうだね?」 「そう、その通りよ」

麗海は続けた。「姉ともそうだろうけど、どうせ貴方は 衣服(コス)を全部は脱がせないんだよね。極端な事言えば、ショーツだけ下ろさせて、後は着せたままで攻めて来るんだ。あたしだって それ叶えだけたい。絶対イヤとは言わないけどさ、でも 一度は全裸(スッポンポン)のとこをしっかり見て欲しいのよ。これは姉だって同じ想いだわ。きっと・・」 「ご免ご免。どうしてもね、俺の趣味の方が先走っちまうとこがあるの。でも そういう事なら、これからじっくり眺めさせてもらうからね・・」

二人 浴室で初めの内、シャワー・ヘッドを奪い合って湯水のかけ合いに興ず。次いで身体洗い(ボディ・ウォッシュ)に入り、背の流し合いなどの定番行為を経て、麗海「さぁお兄さん、ちょっと腹這いになって」と来た。「ハハ、何となく分る。あの術を使うのかな?」 「そうそう・・」

腹這いになった黒木の上に、麗海が重なり、ソープをまぶしたままの身体の上で ゆっくりと滑り始める。「やっぱり・・これ、所謂『マット・プレイ』だな。それにしても上手い。どこで覚えた?」そう思いながら、黒木は声をかけた。「良いねぇ。ホントに『大変よくできました』レベルですよ」 「ハハ、有難と。これもね、ネットの情報で覚えたの。まだ見よう見真似ってとこだけど、好い感じで伝わって 嬉しいわ」その後暫く、麗海からの「裸の愛撫」が続いた。

「洗髪がしたい」との麗海の希望を容れ、黒木は先に浴室から居間(リヴィング)へと戻る。薄手のアンダー上下にバス・ローブを纏い、TV番組チェックの傍ら、少し早いが寝酒の準備を。麗海には 甘口リキュール「シャルトルーズ」の黄札。自らはコニャック「マーテル」のVS。どちらも、ちょっと前に欧州へ出張した 巽弁護士からの土産だった。

どの途 女の洗髪にはそれなりの時間を要するは分かっていた。黒木自身は 先程のシャワー遊びの合間にサッと洗ってしまったのだが。「まぁ良い。ゆっくり・・は良いが」と、ふっと別の想いが過った。「彼女、今夜マジで泊まる気なのか?」まさか!わざわざ口に出すのも野暮ったい。ここはまぁ、成り行きから察するとするか・・とも思った暫く後。

黒木が戻ってほぼ半時後、「お・待・た・せ・・」 装いを改めた麗海が、居間に戻って来た。昼間とはうって変わった夜姿。黒木の好みを知り抜いた様な、袖の短い薄手の白いフレア・ミニコスに 以前とは異なる柄の これも白のにー・ハイ。アンダー越しに、随分小さい横ストラップのショーツがチラ見えする風情だ。「どう、これが貴方の夢・・でしょ?」

「ハハ、有難と。ホント、上から下まで 俺の夢ですな・・」 頭頂から爪先まで、悉く黒木の願望がちりばめられた 麗海の夜姿は、ちょっと看護師の雰囲気も感じられる、抜群に黒木の理想を具現した様な 妖艶さと刺激十分なものだった。加えて「お兄さん」なる親愛な出方が、黒木には 有無を言わさぬ雰囲気を伝えてくる。

「何かね・・」本当は勃起を始めた下方を悟られぬ様用心しながら、黒木少しずつ反応を表にする様にした。そして「何か、ヤバい展開になりそうな予感。そういう貴女見てるとね・・」 麗海「ふふ、それは良いわ。今夜はね、お兄さんにはもっともっと暴力レベルまで高まって欲しい気もあるわね。お兄さん、今夜はね・・」 「はい・・」 「この後、存さんや姉も交えて集まる時の、予行演習って意味もあるのよ」 「予行演習、か。ははぁ・・」遅れて事の成り行きを理解しようとする黒木は、返事の前に 唇を奪われた。「そうか・・」女の口舌を受け入れ、息を荒げながら彼は思った。「少し荷が多かったは、このせいか・・」
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 希志あいの
今回の「音」リンク 「雨は毛布のように」 by キリンジ (下記タイトルです)
Ame ha Mohfu noyohni

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