想いでの山峡(やまかい)~林間学級の秘密 第4話「悪戯(いたずら)」
- 2016/09/13
- 12:41
7月20日の月曜。前日の日曜が祝日「海の日」と重複の為、その振替休日でもある。ただ、学校関係は夏休みに入ったので、影響があるのは、主に社会人だが。
この日から、特別林間学級も本格始動した。健(たける)、徹の二少年は、午前6時起床。この朝は、所属する草サッカー・クラブ向けのパスやシュートなどのシュミレーション練習をこなした。眼下を通るJR中央西線(ちゅうおう・さいせん)は、旅客の一番電車が下りは6時30分過ぎ、上りは7時前に通る。遅くとも、この上り一番が来たら、朝錬は終了。この間に、初美と香緒里も起床。全員の朝食準備をしてやる手はずだが・・。
「香緒里。今朝はゴミを出す日だから、あたしが集めるわね。朝の支度、暫くお願い」と初美。香緒里も「了解。ご面倒だけど、お願いするわ」講師の寝室と居間、厨房のゴミを集めた初美は、続いて生徒二少年の部屋ゴミの回収に入る。朝錬は終わっておらず、彼たちはまだ戸外だ。
案の定、健と徹の席のゴミ入れには、使用済みのティッシュが、何枚か丸めて捨ててあった。手に取った瞬間、「あの臭い」が鼻を突いた。そう、精液のそれだ。
もう一つ、健のベッドの枕元にはアダルト劇画誌「漫画スパーク」、徹のそこには、際どい記事やグラビアが話題の雑誌「週刊衆目」が隠されているのが見つかった。「仕様もない・・」ゴミを集め、二冊の雑誌を取り上げて、初美は思った。「その内、好い事を教えてやるわ」そう呟いた。香緒里に気付かれるのも拙い所だ。初美は、少年たちのゴミを、何食わぬ顔で他のそれとまとめると、常備の自転車に乗せ、ごく近所の回収場所へ向かった。
7時過ぎ、朝錬後のシャワーを経て朝食。大体定番の洋朝食と言う感じ。ホットのロール・パンにゆで卵、ゆで野菜と果物。ヨーグルトに牛乳、コーヒーと言う所か。日によってはお粥や漬物が出る事もあったが。
初美「食べながら聞いて欲しいわ。今日は午前の前の方で、香緒里先生の英語、それからあたしの国語。午後は、二人に自由研究の時間をあげるからね。それと、希望により自然観察に行ってよろしい。それから、25の土曜夜は、本荘(小町)先生が来られるからね」「了解しました」と二少年。
健は徹に「今日って、中央西線貨物の3088って来るんだっけ?」「今日は、月曜だから来るんじゃね」と徹。「分った。それまでに、俺たちの部屋の掃除を済ませようぜ」健が続けると「うん、それで行こう」徹も応じる。上り貨物 3088列車は、所定なら午前9時少し前に、中山荘(ちゅうざんそう)の下を通るはずである。
「宜しく、お願いします」8時頃、朝錬で汚れたユニフォームなどの洗濯を初美に願い、二少年は、まず自室の掃除にかかる。手分けして、手早く処理。その後、教室の掃除にも周る。夕方前には、浴室の掃除をする事もあった。講師の寝室は、彼女たち自身が、それ以外の所と外周は、日中に管理人が行ってくれるので、少年たちの掃除の守備範囲は、基本は毎日自身が学習に使う範囲の所である。尤もこの朝、彼たちの枕元とゴミ入れがクリアされていたのを見落としたのは、お間抜けだったのだが。
一連の掃除が終わり、一息の頃、離れた所で、甲高い汽笛の様な一声がした。上り 3088列車が近づいている様だ。香緒里、それを認めて「さあ、それではここの最初の授業を始めましょう」と、二少年を促して教室へ。貨物列車特有の、重い走行音が響いたのは、三人が席に着いた直後だった。
休憩を挟み、10時代前半まで香緒里の授業、10時代後半から正午過ぎまでは、初美の授業だ。香緒里のそれは、英語が中学1年レベルのオリジナル教材。並行して見る事になる、理数科目は夏休みの学校課題をフォローする形。初美のそれは、少年たちの、交通問題に関する自由研究の資料から立ち上げたオリジナル教材で、社会科の方は学校課題に沿うも、時に私見をぶつける事もして見せた。そして、この後の夜、問題の補習授業が待ち受けるのだが、これは追って記す事としたい。
この日は月曜なので、日中の正午過ぎに通る、上り貨物 3084列車が来ない。来れば、これが終講の合図だが、今回は12時半に終わった。
午前10時から出動した管理人 早瀬夫妻が用意してくれた昼食を囲みながら、香緒里が言った。「皆には悪いけど、私はこれから、この川下の方に住む親類の家へ行かないといけないの。戻るのは、明後日の午後よ。だから二人、初美先生と管理人さんの話を良く聞いて、元気にしててね」「かしこまりました。大丈夫ですよ」と二少年。
昼食後間もなく、香緒里の乗るトヨタ・アルファードが、ひとまず中山荘を離れる。少年たちは、午後の自然観察をする名目で、途中まで同乗させてもらう事に。出発後、数分でそれらしい地点に。「有難うございます。お気をつけて」川下へ向かう香緒里を見送って、暫く見て周った後、若干の虫を捉えて帰途に。徒歩だと20分程の距離だ。
午後3時半過ぎ。後少しで管理人 早瀬夫妻も帰宅する。シャワーを使った健は、同様の徹にそっと話しかけた。「徹。管理人さんが、後少しでお帰りだな」「そうだな。後30分位ってとこか」
健「モノは相談。夕飯準備に入る前に、初美先生にちょっと仕掛けようと思うんだが」 徹「ああ分る。エッチな悪戯だろう」と苦笑。
二少年は、自由研究の資料を整理する傍ら、様子を窺ったのであった。
午後4時半少し前、早瀬夫妻が帰宅。少しおいて、中山荘 外玄関のセキュリティが投入される。「よし、今だ!」二少年、廊下で見送りをした戻りの、上下トレーナー姿の初美に「先生、ちょっといいですか?」と言いながら、前後を挟み込み。
「何よ。一体、何のつもり?」糾す師に、健「実はですね・・」とウェストのくびれの辺りに手をかけ、上へと撫で上げようとする。後ろでは、徹が彼女の腰と腕に手を回し、動きを抑えにかかる。
「止めなさい!いやらしい!」抵抗する初美の、悲鳴の様な怒声に紛れて、健は、一瞬だが師の胸の双丘に手を伸ばした。「やった。胸ゲット!」徹は徹で、このドサクサ紛れに、師の臀丘に下方の「自身」を一瞬擦り付けたのだった。「腰も頂き!」「やだ、徹ったら。『自身』が起ってるんじゃ・・」一瞬、初美は感じたが、その全てが悪い感触でないのも事実だった。
「済みません。やり過ぎました」二少年、直ちに初美に土下座して謝罪。「本当に!大人なら、警察に捕まるわよ。これ以上変な手に出ると、役員会に伝えるわよ」と脅す。「いやー、それは勘弁して下さい」と彼たち。初美は「冗談よ。怒りついでに訊くけど、君たちは、やっぱり女の事を、もっと深く知りたい訳?」とニヤリ。
二少年、暫くおいて「はい・・そうですね。知りたいです」それを聞いた師は「よろしい。今夜から、少しずつ話して教えるわ。ただ、小町さんや香緒里のいない時にね。それと、約束が一つ。二人が夕べ自慰(オナニー)した時の事を、全部話すの。それができたら、教えてあげる。後、もう一つ訊きたい事があるけど、それは夜ね」健、「しまった!」と思いつつ「かしこまりました。今夜、全部話します」徹も気拙そうに「僕も、全部話します」
初美「分った。じゃ、これから朝した洗濯物の整理をして頂戴。その後で、一人はお風呂用意、もう一人はあたしの夕飯準備の応援を。いいわね」「了解しました」と二少年。
洗濯物整理の後、入浴、そして夕食。その後、ちょっとの間の天体見物と、TVをチェックしたりして、そろそろ寝る準備と思われた午後8時過ぎ、講師の寝室から、二少年に呼び出しの声かかる。「二人、ちょっと来て」件の寝室へ出向いた彼たち。そこに、見たものは・・。
(つづく 本稿はフィクションであります。2016=H28,6,11記)
今回の人物壁紙 上原亜衣
渡辺貞夫さんの今回楽曲「ティップ・アウェイ(Tip Away)下記タイトルです。
Tip Away