2ntブログ

記事一覧

母娘(ははこ)御膳 第16話「歳末」

77c5f3bf.jpg
「宙(そら)!」年の瀬の、社長室に続く「隠し部屋」で、部屋の主 花井 妙(はない・たえ)は、予想もしなかった大胆な挙に出た次女 宙の事を本気で睨みつけ、激しく罵った。普段は、自然に出る「ちゃん」の後付けもない。

彼女は、母の非常勤の部下である予備校生 阿久比 周(あぐい・あまね)の男精を横取りした上、それにつき、当然の所作となる、己が生まれ落ちた母の秘花を舐め回したからである。その時の妙には、宙の行為への嫉妬の様な何かがあったのだろうか。

「初美さん、有難う」母に抗弁する前に、宙は、居合わせた業務主任 伊野初美(いの・はつみ)に、軽く一礼をした。その上で・・

「母さん、怒らないでよ。前だって、佐分利学院の理事長先生と好い仲の時季があったじゃないの。だったら、今日のは大した事じゃない。周さんは、そりゃあたしに芳しくない事をしもしたけど、今は憧れてるの。それに、さっきの事を、抵抗なくできたのは、初美さんのお蔭よ」

「ふふ・・まあ余り持ち上げないで。あたしも、お調子者のとこがあるから、好い気になり過ぎてもいけないから」初美、謙虚を装い、こう返す。「宙ちゃん、一言良いか?」周が口を開く。「いいわ、何かしら?」彼女が返すと「俺も、本気でお母さんの事 想ってた訳じゃない。ただ、師として、先生として敬愛してたって事だ。言い訳かも知れんが、これは『一種の授業』だったんだ。無理かもだけど、そう理解してくれると嬉しいな」と応じ。

宙「授業ねぇ。ま・・良いでしょう。全部許す訳じゃないけどね。一応さぁ、あたしの要求通り、再現してもらえたから、まず、音声アプリは破棄しましょう。たださ、ウチのあたしの部屋の回線傍受ができる仕掛けは、当分は残した方がいいんじゃない?だって、会社で何かあった時に、二ヶ所以上で察知ができる様にしといた方が良いでしょ」と来た。

母「うん。まあ、良いでしょう。じゃ、まず、あたしの見てるとこで破棄してね。初ちゃんと周君も丁度良いわ。立ち会って、二人共見ててね」 「了解しました」かくして、服装を直した四人の眼前で、妙と周の秘事を記録した、音声アプリが破棄された。これで、とりあえずはネットへの流出が防げた訳だが、勿論、物語はこれで終わりではない。

「良いお年を!」交替制とは言え、年末年始も無休の、保安課への挨拶の後、5:30pmを過ぎ、一行は、会社近くで食事後に解散と言う事になった。妙の馴染みの洋食処で、彼女と初美は赤ワインを嗜んだ。酒気の許されない宙と周は、ジンジャー・エール。周は、好物のハンバーグ・セット、女性三名はミックス・フライのこれもセットである。

「じゃ、本当の、今年の終わりに、乾杯!」妙の音頭でグラスを合せ、暫くは、食事を進めながら世間一般や、この年一年の雑事などで談笑。途中、妙が「周君は、お正月、親御さんの所へ帰るのかな?」訊くと、彼は「はい、大晦日と元日は帰ります。三日からは、初詣やこちらの用事があるし、四日からは、学院の受験直前対策がありますから」と返し。「忙しいね。でも、ご実家は三河の方だったから、そんなに遠くないから良いね」 「そうですね。お蔭様で、その所は助かってます」

宙「初美さんは?」訊くと彼女は「あたしは、明日午前から年明けの三日まで。五日が始業だから、間の四日は自分とこの雑用ね」と返し。妙が「貴女も、隣のF県だから、そう遠くないわね」と声をかければ「そうですね。ここからJRの乗換なしで30分位。あ、周君より近い・・か」こう返し、微笑む。

周「本当に、一年って早いです。最近、特にそう感じます。年明けも、瞬く間に入試が続くんだろうなあ」と言えば、初美が「大人になると、もっと早いわよ。あたしなんかは、大学にいたのが、ついこの間みたいでね」と返し、笑う。眺める周「素敵な笑顔の方だ」とふと思うも、宙や妙の事もあり、その想いを振り払う。宙「それ、あたしも同じなんですね。ああ、若い時って短いんだなあ」と、嘆く様に言い。

周「まあ、要は無意味に過ごさなきゃ良いんだ。その積み重ねが、社長みたいな方とかの地位に繋がってたりして。好い努力目標だと思うな」と言うと、宙「まあ、難もそれなりだけど、周さんの話も、半分は本当だね」と返すなどして、夕食の席は、一時間余りで幕となった。

「初美さん、良いお年を!」 「有難う、皆さんも!」帰途、四人は、同じタクシーに乗り、初美、周、運賃を負担する妙と宙親子の順で降りた。前席にいた周が居所前で降りる時、後席左にいた宙は、彼を手招き「今年、母さんに習った事、あたしに教えて。きっとだよ」と耳打ち。「分った。良いだろう」彼は、耳打ちで返した。「社長、良いお年を!」 「周君もね!」当然の歳末挨拶だったが「正月は宜しくお願いします!」は、宙に伏せておくべき事とて、やはり言えなかった。

12/30の金曜も、終日晴天。この日午前で、この年の学院全教科が終わる。高等科生 豊野 豊(とよの・ゆたか)は、教科を終えた後、そのままJR中央駅から、郷里のM県下へ向かう。我国最大の K半島東部に位置する、北紀と言う林業と漁業の町で、特急「紀伊」号が約二時間強で結んでいる。ここは、海鮮の見事さが全国に知られ、又、風光に優れた事から、周の憧れの土地でもあった。豊はそれを察し「阿久比さんの進路が決まったら、一度ご案内しましょう」と誘っていた。彼は、1pm少し前に発つ「紀伊5号」に乗る手筈(てはず)となっている。

周と豊は、教科を終え次第、学院階下のロビーで落合い、周の馴染みの中華店で昼食後、JR中央駅へ向かう事にしていた。一つ意外だったのは、朝方登院した時、二人の事が、宙に知られていた事だったが、周は、敢えて訊かない事にした。
正午少し前、午前の教科を終えた、セーターにジーンズ、ブルゾンにスニーカーなど、平装の三人は、学院ロビーに集まると、その足で昼食処へ。普段なら、周辺の企業のサラリー・マンなどで行列が生じる事も間々あるが、この日は歳末期間に入った事もあり、割合すんなり席に着けた。

三人は、生ものを避け、炒飯に餃子、搾菜で昼食を。「今日は、一定大蒜(にんにく)が入ってても、平気だから良いよなー!」と、周が冗談交じりで言えば「そうですねー、一応お休みだからー!」他の二人が、笑顔で応じる。食事を進めながら彼は「そうか、あの時年末の挨拶をしなかったのは、今日の為だったのか・・」と、ふと思い。

12:30pm過ぎ、周は、豊に持たせる缶コーヒーや乾物などを、コンビニ店で買った後、JR中央駅へ。宙に「今日は、俺たちも途中まで中央西線で帰ろう。そこから地下鉄でも、直ぐだもんな」と声かけ。宙は「良いよ。それで帰ろう」と応じ。出発まで十分弱、列車は既にプラット・フォームで待機中。電車ではない、ディーゼル動力の気動車編成。停まっていても、結構な賑やかさだ。

一旦、普通指定席に落ち着いた豊は、乗降台(デッキ)越しに言った。「花井さんに阿久比さん、年明けは勝負ですね。新年は、お元気でつつがなく迎えて下さい!」 「有難う!」 「お前モナー!」宙、周もそれぞれこう返し。「お待たせしました。特急『紀伊5号』間もなく発車です。お見送りのお客様は、フォームまでお下がり下さい」出発が告げられ、豊は列車の乗降台、宙と周は、プラット・フォーム点字黄線の内側に分れ。

「乗車終了、出発準備よし!」乗務員の号令下、近年増えた、ドア・チャイムを合図に扉が締められ、施錠される。黙礼を交わす三人。制動(ブレーキ)の解かれるエアの動作音と前後して、エンジンが唸(うな)りを上げ、特急「紀伊5号」は、勇壮に滑り出す。実はこの時、周も豊も「年始は宜しくお願いします!」の言葉を喉まで出しかけて、宙がいる事に気付き、辛うじて思い留まったのであった。

見送る周「ああ、良かった・・」一瞬、胸をなで下ろす。これから、宙にも「良い年を!」の挨拶を経て、己も帰省しなければならない。別の番線から発つ、中央西線のプラット・フォームへ向かう二人を横目に、豊を乗せた、満席に近い特急が出て行く。「お前たちが、大声で言えない企(たくら)みをするからだ!」遠ざかる、ディーゼル・エンジンの響きが、そう語っている様に聞こえた。
(つづく 本稿はフィクションであります。JR列車名を含む)

今回の人物壁紙 神咲詩織
久石 譲さんの今回楽曲「シー・オブ・ブルー(Sea of Blue)」下記タイトルです。
Sea of Blue

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hakase32

Author:hakase32
愛知県在住の後半生男です。恐れながら、主に18歳以上限定内容を記して参ります。

お手数ですが、拙各稿を初めからお読み下さる場合は、下方にあります月間アーカイブ他のご利用をお願い致します。
他ブログを含め、拙記事の無断転用及び引用は ご遠慮下さい。

下記ランキングに参加しております。
クリックをお願いできれば幸いです。

官能小説ランキング

アクセスカウンター

愛と官能の美学

Shyrockさんの R18読み物集。他の作者各位も多数リンクされています。入口は、下記タイトルです。

赤星直也のエロ小説

赤星直也さんの R18読み物集。入口は、下記タイトルです。

未知の星

赤星直也さんの R18読み物集もう一つ。他の各位の作品も収録されます。

Mikiko's Room

Mikikoさんの、カテゴリー豊富な R18読み物集。独自視点の旅日記も好感です。

Adult Novels Search

R18 読み物の検索サイトです。

ブロとも一覧

拙バナーです

知人様より、優れたバナーを賜りました。必要時はご利用を Produced by Shyrock

もう一つの 拙バナーです

知人様ご厚意により、拙バナー追加編も賜りました。必要時はご利用を。 Produced by Shyrock

清き一票を(笑)

下記ランキングに参加しております。

日本ブログ村バナー


にほんブログ村 →できますれば、こちらも応援を・・

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

月別アーカイブ

これまでの拙連載「想いでの山峡(やまかい)~林間学級の秘密(2016=H28,9~10)」と「轍(わだち)~それから(2016=H28,11~2017=H29,2)」  「母娘(ははこ)御膳(2017=H29,3~6)」  「南へ・・(2017=H29,6~8)」 「交感旅情(2017=H29,9~12)」 「パノラマカーと変な犬(2018=H30,1~5)」  「ちょっと入淫(2018=H30,6~10)」 「情事の時刻表(2018=H30,11~2019=R1,6)」 「レディオ・アンカーの幻影(2019=R1,11~2020=R2,5)」 「この雨は こんな風に聴こえる(2020=R2,6~2021=R3,3)」も お読み頂けます。