母娘(ははこ)御膳 第17話「年始」
- 2017/04/15
- 19:31
明けて新年、正月三が日は、多少曇る時はあっても、概ね晴天の穏やかな日々だった。気温も大きくは冷え込まず、日中などは10℃超えの、所謂「小春日和」と言っても良い位の好ましい気候。その様な中の二日午後、予備校生 阿久比 周(あぐい・あまね)と、豊野 豊(とよの・ゆたか)は、前後して、それぞれの実家から戻って来た。周は、夕方前の4pm過ぎ、豊は、そのほぼ一時間後の5pm頃、それぞれの居所に戻った。
初め、豊は午前中にM県下の実家を発ち、午後早くに戻るつもりだったが、この日夕方、年始に訪れる事としていた、周の年末限定バイト先の社長 花井 妙(はない・たえ)より、訪問は6:30pm以降で良い、との知らせを事前に受け、N市への戻りを少し遅らせたのである。その事は、周も似た様な状況だった。豊は、寮の部屋に落ち着くと、周に宛て、LINEで帰着を知らせる。
「阿久比さん、新年おめでとうございます!今着きました。今年も宜しくお願いします!」 「豊、連絡御礼!明けおめ、こちらこそ!」 「すぐ用意して、社長さんとこで落ち合う・・で良いですか?」 「了解、それで良い。後程、気をつけて!」交信ここまで。
二人は、すぐに正装に身を固め、各々、妙に宛てた土産物若干と、念の為の着替えと洗面具も携え、それぞれ自転車で彼女の自宅へ。許された場合を考え、トレーナーの上下と、冬場につき、短めのガウンを入れていた。予定通りpm6:30頃、二人は、前庭を経て、一部二階建ての花井邸玄関に着いた。「社長、明けましておめでとうございます!今年も、宜しくお願いします!」二人揃っての、定石通りの年始挨拶。「はい、おめでとうです。今年も宜しくね」和装の妙、答礼。促されて彼たち、玄関からすぐの、応接間へ上がる。早速、それぞれの手土産を、彼女に渡し。
妙は切り出す「二人、ようこそ。このお正月は、穏やかな天気なのが良いわね。親御さんたちはお元気?」 「ええ、お蔭様で、両親共元気でやってますね」周、こう返し。「右に同じです」豊も応じる。妙「それは良かった。・・で、今夜は、娘たちがお正月の特別研修で泊まりがけなの。よかったら、明日午前までゆっくりして行けば良いわ」 周「わっ、マジですか?」 「ええ、ホントにOKよ」 「有難うございます。お世話になります!」二人の若者は、声を揃えて一礼した。
「さてと・・」妙は続ける。「今夜は、君たちも一緒だから、馴染みのお店にお寿司を頼もうと思うの。何か苦手は、あるかしら?」 「いやいや、特にありません。全部楽しみですね」周が返せば、豊も「自分も、何でもありです」と応じ。「OK。それじゃ・・」妙は直ちに、上寿司の出前を三人前発注。着は、小一時間後だろう。そして「それじゃ、二人共、お風呂行っといでよ。あたし、その間に用意が要るとこ、しておくから」 「はい、有難うございます!」彼たちは、素直に応じ、浴室へ。
大理石だろうか、白亜の石壁が魅力の、花井家の浴室は十分な広さがあり、大人が四人位は同時に入れる余裕があった。壁と同じ設えの、ゆったりの浴槽は泡風呂にもなり。洗い場は二ヶ所で、他、独立したシャワー・スペースとかかり湯の場所も備わる。「これ、好いなあ。ちょっとした、温泉場じゃないか」躰を洗う周、感心して言う。「・・ですね。ユニバスだと本当に一人分だから、余り寛げないんですが、これならもう御の字!社長さんも、結(ゆい)先生も、宙(そら)さんも、疲れが取れて好いでしょうね」同じく豊も応じ。
周「ハハ・・本当にそうだと好いな。さて、俺は先に入れてもらうわ」と、浴槽に身を沈め「ああ、これ好い!」思わず感嘆す。豊「ああ、どうぞ。俺は、洗髪とかもう少しかかりますから、ごゆっくり」 「有難う。正月はどうだった?」 「結構、追われましたね。一応、勉強は解放だったんですが、大晦日は、実家の大掃除に洗濯、正月の買い物とかの応援。元日の昼には、もう親類衆が来て、夜までおつき合いでした。戻りの二日も、午前中は、近所の年始とかで、上り特急に乗る間際まで、何かと忙しかったです。まあ息が抜けたのは、そうですね、帰った晦日の夕方から夜と、元日の午前中だけです。幾ばくか、お年玉が得られたのは収穫ですが」豊は、元日前後の様子を、苦笑しながらこう振り返った。
周「有難うよ。慌ただしいけど、賑やかな集まりが見える様だわ。そうだな、俺んとこも似たり寄ったり。大晦日は、掃除とか親の雑用応援して、元日午後から親類とかが来るパターンも大体同じ。二日午前は、逆に、俺の方が親類の家に邪魔しに行くんだ。受験がなければ、そのまま泊りってコースだな。お年玉も、あるにはあるが、高校の頃程にはなかったなあ」同じく、苦笑しながら返し。
豊「まあ、ないよりは、あった方が良いですよね」と応じると、周は「そうそう、言えるよなー」笑いながら返し。一旦上がって休憩の彼と入れ替わり、豊が浴槽へ。二人が入って二十分程後、室外から、妙が声かけ「二人、入るわよ!」
「おお、ヤバい!大丈夫ですか?」豊が慌てた風情を見せるも、周は「焦るな焦るな。落ち着いてお迎えすりゃ良いよ」と言いながら「OKです。どうぞ!」と返し。浴室が開扉され、四十路とは言え、まだまだ魅力の姿態(プロポーション)が現れ。
「先生、好いですねぇ」二人の若者が、全裸の一礼で迎え。「ふふ、ホントの事言って良いわよ。でも、君たちも元気そうで何よりだわ。あ、これはね、全体じゃないの。下の方のお話ね」妙、こう言って笑う。「有難うございます。いえ、真実を突いたお言葉、好い感じですよ」と、彼たちも笑って返し。妙はついでに、出前の寿司が到着した事も告げた。
妙「お風呂では、何話してたの?」 周「ええ、元日前後の事ですね。まあいつもなんですが、大晦日は、掃除や買い物の応援とか、年越し準備。自分ちは、親父が蕎麦(そば)を手打ちするもんですから、その手伝いとかもありまして。で、今日お持ちしたのも、それなんです」 「ほう、お父様、蕎麦も打たれるんだ。楽しみだわ。きっと娘たちも喜ぶでしょう」 「有難うございます。そうなれば嬉しいです。後は、元日午後から来る、親類たちの応対とか、戻りの二日午前には、近所の年始とかですね」」 「そうかぁ、短いけど、親孝行もできて、素敵なお正月だったんじゃない?じゃ、豊君も訊きたいわ」
豊は応じ「はい、自分の正月も、大体は阿久比さんと似てました。大晦日は、実家の年越し準備の応援。元日午後から親類に会うとか、二日午前の年始も、大体同じです。ウチは、蕎麦は打ちませんが、晦日蕎麦の時に、魚の干物とかを一緒に頂く事がありまして」 「ハハ、海の傍らしいね。今日もらったのも、そっちの方みたいだし」 「はい。上手くお好みに合うといいかなって思うんですが」 「ああ、大丈夫でしょう。君の親許の辺は外海だから、鮮度は素晴らしいわ。期待できるって!」 「はい、有難うございます!」
妙、ボディ・ウォッシュと洗髪を終えると「さあ、三人一緒に入ろうか!」と、若者たちを従え、浴槽へ。彼女の両脇に、周と豊か控える。「あのさ」妙が言う。「お湯の中だから、ちょっと勝手が違うかもだけど、自分のしたい方法で、あたしに少しマッサージをくれるかしら。悪戯はダメよ。気持ちよくしてくれるなら、触っていいわ」 「おお、マジですか?有難うございます!」 「感謝です。とに角やってみます!」周と豊は、それぞれ右と左から、妙の白い女体に手を伸ばす。
まず周が、妙の首筋に手指を走らせ、耳たぶ、肩、上腕と下り、腋から胸の双丘辺りへと巡って行く。豊も、周の動きを見真似しながら、ほぼ同じ手順でさすって行く。次には、二人して、妙の美脚を愛でる様に撫で擦り。マッサージと言うより、愛撫に近い出方。勿論、妙もそんな事は分っていた。「二人、中々好いわ。あたしも心地良い。とても好い感じよ。続けて・・」 「はい・・」 「かしこまりまして・・」少し熱めの、快い湯の中で、三人の、時折の喘ぎを交えての、年初の「愛撫」が暫し続いた。
入浴から小一時間を経て、居間へ戻ると、平装への着替えが許される。周と豊は、持参のトレーナー上下。妙は、桃色調の着物から、紫基調のフレア・ワン・ピースに薄茶の冬用上衣へと替え。それから、食堂にての元日の祝杯。未成年ではあるが、周も豊も、最初の猪口一杯だけは、冷酒を仰いだ。後は禁酒につき、サイダーを賜る。妙はそのまま、もう少し杯を重ねた。上寿司の魅惑のネタと、モズクなとの海草、それに、豊の届けた干物などで舌鼓を打った。
更に一時間強後の、pm9過ぎ。食事とその後の果物などを嗜み、応接間と続きの居間で、休憩に入ってTV番組のチェックなどする周と豊の所へ、妙が現れ。「二人、聞いて」こう切り出す。「はいッ、聞きましょう!」彼たちは、居住まいを正して聞く態勢に。これを見て「今夜の寝室は、あたしの隣の部屋ね。ツイン・ベッドがあるから、すぐ分るわ。又、寝る時に案内するわね、でも・・」 「でも・・寝る前に、何があるんでしょう?」 「ふふ、それはね・・」妙はそう言い、フレアのワン・ピースの下方を、彼たちに向け、ゆっくりと持ち上げ始めた。
(つづく 本稿はフィクションであります)
今回の人物壁紙 前田かおり
久石 譲さんの今回楽曲「ピアノ(Piano)」下記タイトルです。
Piano