南へ・・ 第1話「案出」
- 2017/06/21
- 15:02
「おい、豊(ゆたか)、ちょっといいか?」 豊「はい、阿久比(あぐい)さん、何かありました?」 3/11の土曜、近所で落ち合って、馴染みの店で昼食の後、周(あまね)の居所で、トレーナー上下姿の彼と後輩の豊は、コーラを嗜みながら、ノートPC画面に見入っていた。閲覧していたのは、地元JR社のHPである。
周「来週は出かけるから、そろそろ決めんといかんな。南の方面へのフリー切符を見てんだが、丁度良さそうなのがあったわ」 「そうですか。有難うございます。今まで、帰る時は学割とか青春18きっぷでしたから」 「そうか、それでな・・」周が話題にしたのは、N市から南方、紀伊半島の世界遺産指定遺跡「熊野古道(くまのこどう)」の探訪向けに設けられた「南紀・熊野古道フリーきっぷ」の事だった。まず記しておくと、この券の有効期間は、出発日から三日間。幸いにして、今回の彼たちの行程も三日間である。
豊「ああ、阿久比さん『南紀・熊野古道フリーきっぷ』の事ですね。俺もそれ自体は知ってたんですが、有効期間三日の縛りがあって、これまでは使えなかったんですよ。特に年末年始は発売止めになったりで。でも、今回は三日間バッチリ嵌りますから、行けそうですね」 周「そうなんだよね。これ、最初の目的地まで、特急の指定席で行き来できるんだ。それに期間中、フリー・エリアは、自由席なら特急でも、何度も乗れるしさ」 「確かにね。運賃&料金オール込みで8000円台前半なんて、特急に乗るなら、学割運賃の往復より確実に安いですよ」
周「OK。じゃ、これで決まりだな。栄町の旅行会社、まだ開いてるな」 豊「そうですね。指定席だと、直前は満席なんてのがあり得ますから、今日辺りに押えといた方が良いかもね」 「よしっ、じゃ、行くか。帰りついでに、夕飯の惣菜も調達しようや」 「・・ですね、それ激しく同意です。行きましょう!」まだ朝夕は寒く、てんでにパーカーを羽織り、ウォーキング靴を履くと、最寄駅から N市営地下鉄2号線に乗り、二人は出かけた。
栄町の地元私鉄 名豊電鉄系の旅行会社は、周や豊もしばしば訪れていて、馴染みの男女係員も何人かいた。この日は、正装した中堅幹部の、須見(すみ)と言う男が応対に。周とも面識があった。「阿久比さん、大学お決まりだそうで、おめでとうございます!」 「有難うございます。その節目と、骨休めも兼ねて、三日ばかり 豊野の実家に世話になる事になりまして」 「ああ、好いですね。で、JRの南紀・熊野古道フリーきっぷの件ですね」 「そうです。で、今回は二人共、それでお願いしようと思いまして」 「かしこまりました。じゃ、往復の特急『紀伊』の座席状況を見てみましょうか」
須見はそう言い、出発日の3/18と、帰りの3/20の特急「紀伊」の座席状況を把握。それによると、18日土曜午前発の1号と3号は、既に満席もしくは隣席で用意できない状況だったが、同じ日の午前に臨時増便があり、往路はこれで、又、二日後の復路も、午後の臨時便で隣席確保が叶った。
「いやー良かった。これで予定通りですよ。須見さん、Good Job!お世話様です!」若者二人、思わず一礼。対する須見は「こちらこそ、毎度有難うございます!それでね、阿久比さん」 「はい」 「これ、些少ですが、私共からのご入学祝いです」 「ああ、これは感謝です!」精算の終わった切符と共に、周に、小型の封筒が渡される。中身は1000円相当のクオ・カードであった。
「あいや、儲かっちゃった。これで、夜の惣菜が一つ余分に買えるな」周と豊、顔を見合せて笑い。最近は、JR中央駅界隈に買い物客を取られ、やや元気がないと言われる、栄町のカメラ店他何ヶ所かを見周った後、某デパ地下で、餃子などの惣菜数点を買い、夕方、周の居所へと戻る。「いやー良かった。切符も取れたし。豊んちの方々にはお世話かけるが、後は、出かけるだけだな」 「まあ、それは気にしないで下さい。親類とか知り合いがウチ来るのは、慣れてますからね。それより、期間中天気が好くなると良いなあ」豊は言った。
交代で入浴の後、夕食。「東北の震災から満六年、俺たちも、いつかああなるかも知れん。心がけはしとかんと・・」の様な真摯な話題の一方で「健(たける)の伯父さんがいらせば、間違いなく酒の出番だなあ」などと談笑もし、TV番組をチェックしながら食事が進み。その後、AVのチェックやネット・サーフィンなどに興じ、豊はその夜、一泊して行った。
翌3/12日曜は、昼食後 豊と別れ、夕方から夜は飲食店のバイト。この週は、翌月曜も同様だった。定休日の火曜は、私立A大学入学が決まった後、初めて女友達 宙(そら)と会った。「合格おめでとう!」 「貴女モナー!」この日 周と同様に大学進学を決めた彼女は、茶系の半コートやセーター、長パンツにパンプスと言う装い。周は、濃色パーカーにジーンズ、スニーカー姿だ。JR中央駅周辺での買い物に同行した後、彼の馴染みのネット・カフェで夕食を兼ね、一時を過ごす。思った通り 宙は、シャワーを使いに行き、周にも勧める。応じる彼「又、あの事・・かな?」そう思いながら、一度席を外し。
食事が終わり、ネットの閲覧を再開して間もなく、やはり深い一事が始まった。「いいかい?」周の方から、宙に唇を重ねて行くと、図った様に、彼の背に両腕を回す。「ああ、好い感じ」再び、今度は舌技も交えた濃いのをくれてやる。耳や首筋、上腕にも手指を回し、暫くは軽めの愛撫が続く。
十数分もすると、宙の手指は「やっぱり」周のジーンズ越しに、下方に伸び、悪戯っぽく駆け回り始める。「周さん、亀さんに会いたいよ~!」言葉はなくとも、白くてなよやかな手指の蠢動(しゅんどう)が、声高(こわだか)にそう語る。「さあ、周さん」 「次の道が開けたのよ。もっと大胆に、下の本当の姿を見せて!」宙の手指が、周にジーンズを脱ぐ様促す。「あーあ、仕方がない」彼は応じ、途中までズリ下ろして、宙が容易に触れる様、仕向けてやる。
「さあさあ、又会えるね!」宙、周の男根と陰嚢を、外に連れ出して愛撫を続け。薄暗い、ネカフェのブース席で、露わになった周の下方に 宙の手指が白い虫の様に取り付き、男根の幹、裏筋と陰嚢を包み込んで蠢く。「あ・・んん、い・・好い」呻きながら、周は言葉を発す。「宙ちゃん・・」 「はい、何?」 「俺のアレをいじってて良い。ちょっと、話があるんだ」 「いいよ。聞くわ」 「この週末、前から計画してた、豊の親御さんとこへ行って来ようと思うんだ」 「ああ、それ、言ってたわね。南のM県の海沿いでしょ」 「う・・んん、そうだ。土曜の朝発って、春分の日の月曜夜、帰るつもり。もしかすると、そのまま三河の、俺の親許へ一日二日帰るかもだが」
宙「分った。丁度あたしが、高校の同級生たちと、京都へ行く日だね。これホント、楽しみなんだわー。でも、気をつけてね」 「あ・・ああ、お互いにな。特に、夜は・・うぅぅ」 「有難う。そちらもね」宙はそう言い、周が予想した通り、彼の男根に食らいついた。「あ・・ああ、好い。何度仕掛けられても・・ふぅん!」施錠できない恥じらいや不安よりも、高められる歓びの方が上回って行く。もう少しで、又も射精と絶頂を迎えるだろう。宙は薄笑いを浮かべ、勃起した男根を、更に唇と舌で、ネットリと磨き上げて行く。
(つづく 本稿はフィクションであります)
今回の人物壁紙 冬月かえで
今回記事の、現実のフリー切符資料、下記タイトルです。
南紀・熊野古道フリーきっぷ
今連載は、東京スカ・パラダイス・オーケストラの楽曲をリンクして参ります。今回は「銀河と迷路」下記タイトルです。
銀河と迷路