交感旅情 第2話「前奏」
- 2017/09/03
- 22:01
桜の見頃も終わった曇り空の春の夜、室(むろ)の店に、思い思いの普段着で集まった、四人の男たちの歓談が続く。「周(あまね)君、それはだな・・」一膝(ひざ)、彼に近寄った中条は続ける。「君と俺だけじゃねぇんだ。俺がつき合う初ちゃんと、君の彼女 宙(そら)ちゃんの、四人で行くんだ。出発は、28日金曜の夜、往きは夜行高速バス、帰りは新幹線乗継ぎになるだろうな」
「そうですか。所謂2+2(ツー・バイ・ツー)って奴ですね。所で伯父さん、宙はこの事まだ知りませんよね。直ぐに俺から話さんといけませんね」周は、笑ってこう返す。対する中条「うん、それが良いかも。あらかた初ちゃんが話してくれてるはずだが、君からも一言あった方が、そりゃ安心だろう。彼女は、遅くなってもSMSとかは送って良いのかな?」 「ああ、彼女(あいつ)、1am位までは起きてるとか言ってました。今、0:30am回ったとこですから、ちょっと失礼して、送信しときましょうか」 「それがいいね」これを受け周、中条の話を、宙宛てにとりあえずLINEで送信、了解を得る。
「皆さん、悪い!今夜は1amでお開きにしようか。俺、この後、ちょっと周君をウチに呼んで話があるんで・・」中条の切り出しに、室と永野「了解。ちょっと早めで惜しいけど、仕方ないですね」と返し。酒気のグラスも、料理の皿も、間もなく空きそうだ。暫くの談笑の後、壁の時計が1amの時報を告げ・・
「俺、片付け手伝いますので・・」周が席を立ち、店の戸締りにかかる室を応援して食器洗いや片付けに入る。「阿久比(あぐい)さん、ちょっとダスター貸して下さい。カウンターの上とか拭きますから」永野の申し出に、周は「有難うございます!お言葉に甘えます」と返し、洗ったダスターを預け。中条も「俺は椅子とか整頓するからさ。もし落とした物がありゃ、拾っときゃ良いな」 周「そうですね、もしあったらこちらへお願いします」 「了解!」約十数分で終了。
「お疲れ様でした!」 「皆さん、遅いから気をつけて・・」 「了解、又近く!」寝静まった店の前で解散。室は店の上階自宅、永野は西方の居所、中条は、周を伴って、永野とは逆の東方の居所へ。いずれも、徒歩で数分位の近場だ。玄関のセキュリティをクリア、EVで7Fの南東向けの、中条の居室に入ったのが 1:30am少し過ぎ。
「周君、先にシャワー行って来いよ。俺、寝品のドリンク用意しとくから」 「有難うございます。と言って、酒気はもういいかなってとこですが・・」 「ああ、いやいや、アルコール初心者の君を、のっけからいじめはせんよ。懐かし系のサイダーだって!」 「ああ、好いですね。マジ感謝ですぅ!」周は、笑顔を返すと、中条から借りたトレーナー上下を手に、浴室へと向かう。十分程後入れ替わり、中条が入浴した所へ、周のスマート・ホンにLINEの送信。宙からだ。
「周さん、好いお祝いだった?」 「ああ、宙ちゃんか。さっきは遅くに悪かった。俺も、ちょっと説明した方が良いかな、なんて思ったんで」 「ううん。伝えてくれて有難う。少し前に、初美先生(筆者註 宙にとっても、総合予備校 佐分利学院時代の恩師だが、修了後も『先生』の敬称で呼んでいる)からお話は聞いてるしね」 「ああ、分ってくれりゃ良い。後は、今月末まで病気や怪我せん様に気をつける事だな」 「ホント、そうだよね」 「さて、遅くなってもいかん。この辺で・・」 「周さん、ちょっと待って!」スマート・ホンの向うで、宙が彼を制す。
返す周「はい、何だろう?」 宙「あのね、入学式の、次の週末、高め合ったのが最近でしょ。あちらの方が、温まってるんじゃないの?」些か、冷やかす様な文面だ。周は、少しおいて「ご心配有難う。まあ溜まってるっと言や、溜まってるがね」と返信。すると・・
宙「ふふ、本音が出たね。今、あたしがどんな格好だか分る?」 周「ハハ、又俺を揺さぶる気だろう。相当際どいモノ着てる様にも感じるがな」 「あのね、アンダーが超短いネグリジェよ。完全に、膝上20cm超かしらね。それに寝る前だけ二ーハイ。ショーツは・・さあ、当てて欲しいわね!」 「う~ん、それは・・」周が、返信に詰まった所へ、浴室を出た、バス・ローブ姿の中条が、サイダー瓶とグラス二個、アイス・ペールを携えて戻った。「ちょっと、待ってくれるか?」 「ええ、いいわ・・」
周「伯父さん、済みませんね。さっきから、宙がLINEをよこしてまして」 対する中条「ああ、何、?気にせんでええ。必要なら続けろ。何?夜の話題かね?」ニヤリとして返す。周「はい、まあ、大体はそんなとこでして・・」苦笑しながら応じ。「そうかぁ、まあ、これ飲んだら寝室行くか?俺はここのソファで寝るからさ」 「いや、伯父さん、無理言って申し訳ないんですが・・」周はこう言った。
そして続ける。「実はこの後、ちょっと観たいTV深夜番組がありまして、今夜は自分が、ここで休めたらと思うんです。それじゃダメですか?」 「いや、俺はいいよ。・・で、何かね?観てる内に寝てましたってか?」笑いながら、中条は応じ。「所で周君、そのLINE、見られちゃ拙いのは分ってるが、途中まで、ここでやり取りってのは無理か?」 「いや、まあいいでしょう。大した事なさそうだから」と、周は返した。
かくして、宙とのやり取りが再開される。周「お待たせ。今夜の、貴女のショーツがどんなかってとこだったよな」 宙「はい、その通り!今、あたしが何着けてるかって事よ。ついでに訊くけど、今夜は伯父様の所に泊まってるの?」 周「そうだよ。今は入浴されてるが(これは言い訳)。随分酒気(アルコール)も頂いたし、伯父さんにバイト先のボス、それにSタクシーの永野さんも来られてさ、男同士の話も、中々面白かったな」
宙「ふぅん。永野さん、昨日はお休みだったんだ」 周「まあ、昨日午後と、今日午前がフリーだったって事だけどな」 「あの男性(ひと)のお話って、結構面白いから、あたしも、その内ゆっくり喋りたいと思ってたのよ」 「うん。まあ、街の知識も知ってられるけど、それより、聞かせる技が素晴らしいんだろうね」 「そうそう、素敵な話し方よ。それが好いって訳!」 「どうだろう?口説かれたら落ちそうか?」 「うん。まあ、分らないわね。さあ、さっきの話よ。どうかしら?」
「どうしても、答えんといかんか?」内心ではそう思いながら、周は「多分ね・・」と前置きし「ノーマルはないと思う。『T』かな?のっけからノーパンってのも風情がないしな」そう答え。宙は「ふふ、残念ね。今夜は、最初からノーパンよ。夕飯の後、少し教養科目の復習して、シャワー浴びたんだけど、それからは、さっき言った夜着に替えて、お尻の下にはタオルを敷いてるの。もしも、貴方とのやり取りで股間が濡れても平気な様にね」
「ハハ、そうか・・」短く返した周だったが、一方で「そんなタオルなら、俺にくれないか?貴女の性臭を感じたい!」想いもありはした。傍らで、微笑みを浮かべ、酒食を共にした若者の、恋人とのやり取りを見守る中条だったが、程なく彼にも動きが訪れる。周同様、スマート・ホンにLINE送信がされたのだ。初美からだった。
「新(しん)さん、遅くに悪いわね」 「ああ、初ちゃん、今晩は。何、明けて今日は日曜だ。夜中だろうと、気にはせん。昨夜の周君祝いの席は、無事終了だ。今、彼とTV観ながら、サイダー飲んで、寝るとこさ」 「ああ、そうなの?なら好都合ね。あたしね、今、ちょっと寛いだ格好で寝る前の時間だから、連絡したって事よ」 「そうか、そりゃ良いな。きっと魅力の格好だろう。色々意地悪く訊こうかな」 「ふふ・・『意地悪く』じゃなくて『エッチに』でしょ?」 「まあ、そんなとこだな。時間はいいのか?」 「ええ、少しならね」ここで中条は、周の方へ向き直る。「奇遇だな、丁度良かった」 「・・ですね」男二人は、互いに好都合を感じ始める。
(つづく 本稿はフィクションであります)
今回の人物壁紙 立花はるみ
葉加瀬太郎さんの今回楽曲「Born to Smile」下記タイトルです。
Born to Smile
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