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交感旅情 第12話「河畔 (かはん)」

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昼近い、発電所と堰堤(えんてい)を臨む、満開の桜の下で、女二人の妖しい行為が進んでいた。ブラウスの前をはだかれ、胸の双丘を露わにされた初美に、若い宙(そら)が、乳房にむしゃぶりつく姿態である。花見客と写真隊は、ほぼその全てが、間もなく、傍らを通る JR磐越西線の鉄路の上に姿を現すであろう怪物(モンスター)の出現を、固唾(かたず)を呑んで待っている風情である。

「ああ、ああ・・宙ちゃん」 「はい、初美さん・・」 「あたしの乳房(おっぱい)を味わわせてあげたんだから、あたしの問いにも答えて欲しいわ」 「はい、余り上手く話せないかもだけど、いいですよ」散り始めの花の下、少し間を置いて、宙は語り出した。

「実は、最初の休憩の時、皆さんが降りている間に、先に戻って、下のトイレを様子見したんです。それで、ちょっと好い感じになったのが、きっかけですね」 「ふぅん。随分狭いトイレだったけど、一回戦位はできるかな・・て思ったのね」初美が返すと「まあ、そんな感じですね。日付が変わって暫くは、よく眠れませんでした。長いトンネルを抜けてから暫く、ふっと目を覚ますと、皆さんが眠ってるのが分りました。確か 1am前位だったかな。『やるなら今だ!』て思って、前にいた周(あまね)を、キスで起こしたんです」 

初美「ふふ、そこは洒落てるわね。彼も悪い気はしなかったんじゃない?」 「はい、多分そんなだと思います。それで、皆さんに気付かれない様に、二人で静かにトイレへと立った訳ですよ」宙はそう言い「初美さん、今度は、あたしのに触って欲しいわ」と続ける。

「ふふ、それ、言おうかなと思ったの。それじゃ・・」今度は、初美が宙の上シャツとブラを捲り上げ、胸の双丘を連れ出す。彼女より、僅かだが豊かかも知れない。「さ、極上のマッサージをしてあげるわ。続けて・・」 「はい、でも、ホントに母乳(おっぱい)が出ちゃうかも・・」 「大丈夫、それはないわよ」初美は笑ってこう言い、曝け出された、宙の「胸の双丘」にゆっくりと刺激を加えて行く。

「あ、は、ああ・・好いわ。それじゃ・・」軽い喘ぎを上げ、宙は続ける。「トイレが狭い事は分ってましたから、あたしは、予め自席でショーツを脱いでいたんです。思った通り、秘液で結構濡れてましたね」 「ふふ、若い娘(コ)らしくて好い話だわ。周君、知ったら匂い位嗅ぎたかったんじゃなくて?」 「ああ、彼、それを後で気がついたみたいね。はっきりとは言わないけど、少し惜しがってましたね。でも・・」

初美「でも、何かしら?」 宙「その時は、周りが暗かったのもあって、そんな事を考える余裕はなかったですね。とに角、二人無事にトイレに収まって、ドア・ロックするまでが不安でした」 「まあ、そんなでしょうね。貴女たちが、そんな場所で盛るのもどうかと思うんだけど『なりゆき』じゃ仕方がないわね。彼、発射したの?」 

宙「ええ、仰る通りの流れでして。バスの揺れと向き合いながらの、熱く深い交わりで、周も、一度は射精がありましたね。ご理解有難うございます。あ、あ・・」語りの間にも、初美の巧妙な乳房への愛撫に、宙の返事は、喘ぎ交じりになった。更に、乳頭への口づけや甘噛み、谷間への舌技が仕掛けられ、宙の表情は、一時恍惚としたものに・・。

「ハハ、まあ若いカップルらしい事。言ってしまえば『バカップル』だけど・・」初美が、この感嘆符を発した時、正午の時報サイレンが鳴った。「さあさあ、もっと昂ぶりたいとこだけど、SLの列車が来た後は、こっちへも花見の人たちが流れて来るわ。今はここまでにしましょう。貴女も、一度はイってるから大丈夫でしょ?」

 聞いた宙、些か呆れた様に「はい、まあそうですね。あたしは良いけど、初美さんは、あの方が『溜まってる』て事はないんですか?」訊く。対する初美「ふふ、まあ『大きなお世話』てとこだけど、あたしは大人だから、その辺の不安は、今はないわ。ただね・・」宙「ただね・・何でしょう?」 「夜になると、何とも言えないけど・・」 「あは、そうですか。楽しみだわ・・」宙が返した直後・・

川上の山間の方角から、女二人が これまで耳にした事のない、サイレンの音と獣の咆哮が入り混じった様な、太い音色が響いて来た。宙「あれは・・?」 初美「多分ね、SL(蒸気機関車)の汽笛だと思うわ。列車が見える所まで行こうかしら」 「そうですね・・」衣服を直した二人は、川べりを離れ、JR磐越西線の線路が見える位置まで戻る。「コンデジは、あるかしら?」 「勿論!」

堰堤を右手に見ながら、川と線路の丁度中程まで来た時、右手から一陣の煙、そして・・「バォォ~ッ!」今度ははっきりと、太い汽笛が響き渡る。それに続き、獣の息吹の様な、速いテンポの排気音(エグゾースト・ノート)を轟かせ、桜の群れ咲く彼方の築堤上に、蒸機 C57に率いられた 7両編成の濃色の列車が「ボッ!」と現れた。「SLばんえつ物語」の通過である。

「ああ、一幅の絵だわ・・」初美、感嘆してこう言い。宙は「思ったより、随分速いスピードですね。歌にある様な、田舎の汽車じゃないみたい・・」と応じた。煙と走行音の協奏が、左手に遠ざかる時に、もう一声 汽笛が吹鳴された。何とか撮影を果たした女二人は、暫し聴き入った。

前後する、築堤下の、周と中条の事も少し。発電所傍の河畔へ、花見に向かった初美と宙を見送った彼たちは、直ぐに三脚を構え、撮影の準備。「余り露出は上げん方が良い。薄曇りだから、調整ゼロでも良いかもな」中条が言えば、周も「分りました。焦点(フォーカス)はどうしましょう?」 「余り自信がねぇなら、AFでも良い。ただ、過信は禁物だから、慣れてるなら、自分で合せるMFを選んだ方が良いかもな」 

周「分りました。まだ時間があるから、自分で合わそうかな」 「MFでも、焦点が合えば音で知らせるはずだから、一度試すと良いぞ」 「そうですね。やってみましょう」そうこうする内に、既に設営していた先着組も戻り、一礼を交わして、情報交換などする。

中条は言った。「撮り鉄は、構図とかで無理したり、確かに評判が不良なとこあるが、それは一部だ。大半は、常識の分った良い奴が多いからな。なるべく折り合って、仲良くする事だ」 「そうですね。そうした方が、自分たちもやり易いし・・」 「それによ、周り全体に迷惑になる様な輩が現れたら、全員で共闘して、排除せんといかん事もあるぞ。構図に入る様な、迷惑駐車の場合とかだ」 「大いにあり得ますね。まあその時にならんと分らん事もありますし・・」

各々カメラの設置を終え、一息ついた正午少し前、中条たちの脇を、黄色の乗用車が走り抜ける。「美人姉妹さん、間に合った様だな」 「そうでしょうね。この辺は満員だから、自分たちの前で、しゃがんで撮ってもらいましょうか?」 「それが良いね」正に、時報のサイレンが鳴る寸前、カメラとかを携えた、由香、由紀の姉妹が現れた。「お待たせしました!」 「間に合って、良かったな!」

中条は、周囲の撮り鉄衆にも「後二人、連れが来る」事を予告していた。更に、彼と周の前でしゃがめば、撮影可との了解も取り付けていたのだ。これを話すと、姉妹は快諾してくれた。姉の由香が、男二人と同様の一眼デジカメ、妹の由紀は「パワー・ショット」と呼ばれる、一眼に近い性能を持つ、大き目のコンデジで撮影に臨む。蒸機列車の通過まで、後少し。

「伯父さん、後で話したい事が・・」周の申し出に、中条は「分った。楽しみにしておく。そして、皆・・」と、姉妹にも声かけ。「動画や音録る人もある。喋るのは、通過の後な・・」 「分りました・・」離れた山間で、微かに汽笛が発せられる。現れるまで、後僅か。集った人々は、カメラ、或いはビデオ・カメラの電源を入れ、レンズ・カバーを外し、臨戦態勢に。周の、中条に告げた「後で話したい事」それは・・。
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 成海うるみ
葉加瀬太郎さんの今回楽曲「エターナル(Eternal)」下記タイトルです。
Eternal

JR磐越西線 蒸機 C57 「SLばんえつ物語」走行動画(引用) 下記ナンバーのクリックでご覧になれます。
C57180/1

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