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交感旅情 第19話「妖講」

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夜 10pm近くだろうか。宙(そら)と由紀が、姉妹の部屋での妖しげな行為の後、酒席を終えて戻った 中条たちに合流、彼たちの泊まる、隣の大部屋に移る。既に寝具が整い、全員浴衣姿の、六人が揃ったのを確かめて、中条が言った。

「さてさて皆さん、これから寝る前の 約二時間、どんな展開になるかは、薄々お分かりだろう。そう、さっき言った、三人ずつに分かれての『夜の分科会』を始めようと思う。初ちゃん、宙(そら)ちゃんと俺は、この部屋の居間寄りの寝床で、これからの事を進めてぇって事だ。姉妹さんと周(あまね)君は、君たちの部屋でも、ここの玄関寄りの寝床でも良い。どっちでするかは、君たち次第だ・・て事で、宜しくです」

「分りました」周は返し「由香さんに由紀ちゃん、どうする?」と続けた。「ご免なさい、ちょっとの間、考えていいかしら?」 「あたしも、そうしたいわ」と、姉妹は応じ。暫くの間「どうする?」 「隣部屋の方が良いかなぁ・・」などの問答がなされる。そこへ・・「二人、ちょっといい?」割り込む様に、宙が声をかけた。

由香「はい宙ちゃん、何かしら?」と返すと、「物は相談。六人共、この部屋でしましょうよ。今の人数分けも、最後まで続くかどうかだし、それに・・」 「それに、何かしら」今度は、由紀が訊く。宙「今夜、このお宿は全館満室よ。この後の展開、あたしには分る。皆さんにしたって、そうでしょう。いつもとは違う話声なんかが他の方たちの所へ聞こえるなんて、感心しないわ」

「宙ちゃん・・」中条は返す。「よく言った!確かに、それあるな。今夜これからの話は、いつもと違うのは事実だし・・」 宙「・・でしょう。だから、ここの大部屋で、二手に分れてするのがベストですわ」と続けたが、どうも、この夜の行動の主導権を、彼女が握り始めている事に、薄々気づく中条であった。

「そうだ、その前に・・」彼は続けた。「宙ちゃんと周君に、話があるんだ。ちょっとの間、居間へ行こうか。初ちゃんと由香ちゃん、由紀ちゃんは、ボツボツと用意をしといてくれるか?」二人を促し、居間のソファへ。襖(ふすま)一枚隔てただけだが、意外に、話声は大きくは聴こえない。「初美先生・・」由紀は尋ねた。初美「はい・・」 「これから、何が始まるんでしょう?」 「それはね・・」

初美は続けた「所謂(いわゆる)『大人の行為』てのじゃないかしら。ただ今夜は、男一人に女二人ってのが、普段と違うとこだけど」
「ふふ・・普段と違うとこ・・ですね。何となく分ります」笑いながら、姉の由香が応じ。由紀「ははぁ、分った。それで伯父様、夕方 貸切のお風呂で用心してたのね」 初美「まあ、それもあるわね。あたしたちと一緒と言っても、お風呂で昇って果てるのは、彼の望みじゃなかったって事よ」 「ハハ、成る程ね。それで伯父様、我慢して寸止めしてたのか・・」由香が言った。

中条の、宙と周への話は 10分足らずで終わった。その最後の所は・・「とに角、バスの中は、列車やフェリーとは違うんだ。トイレにしたって、どうしてもやむを得ん場合に限られる。宙ちゃんの、ディーゼル・エンジンの響きで萌えちゃうのはよく分るが、そこは周君が、大声出してでもやめるべきだったな。まあいい。次から、絶対しねぇ様に!」 「分りました。どうも済いません!」若い二人はこう言い、謝りの一礼をした。

「分りゃ良いんだ」中条は返した。そして「宙ちゃん、少し訊きてぇ・・」 「ええ、何でしょう?」 「失礼は承知だけどよ。もしかして、夕方ここへ向かう列車の中でも、萌えてたんか?」 「伯父様・・」宙は、中条の視線をしっかり見据えて、こう言った。「仰る通りよ。あたし・・あの列車の中で、萌えちゃって・・。だから、周さんと座られてた席まで行ったの」 「そうか。気がつかんで悪かった・・」

無理もない。旧国鉄ディーゼル気動車「キハ47型」のエンジン・フィールは、他の JR車両に比べ、最も船のそれに近いものがあり、一種動物的な響きが、宙の性感波長と合ってしまったのである。宿に着き、女風呂での初美への手出しや、夕食の後、部屋に戻っての、由紀との妖事にも、それが微妙に投影されているのかも知れなかった。

「分った、宙ちゃん・・」中条は言った。「今夜は、できるだけ貴女の望みに沿う様にするわ。初ちゃんに俺と一緒に、今夜これから熱く昇ってく事になるだろうけど、その事はしっかり押えとくからな。さて、美人姉妹さんと周君」 「はい、聞きましょう!」三人はこう応じた。

中条「宙ちゃんの話通り、この部屋で一緒に過ごして欲しいって事だ。後は、君たち三人の問題だから、好い様に進めてくれれば良い。まあ、途中で組み合わせが変わる事もありかも・・だが」 由香が言った。「分りました。あたしが年上だから、こちらは仕切りましょう。余り声が出ない様にしないといけませんね」 中条「そうだね。まあ、俺の年代までの、割合若いカップルも何組かいるから、そう気にする必要もねぇかもだが、一応気をつけようや」 「そうですね。じゃ、周君に由紀ちゃん、始めるよ。まずは、ご挨拶からね」その言葉に次いで、一旦座椅子に着いた由香と周は、唇を合せにかかった。「ああ、好い・・」周の呻(うめき)が聴こえる。

「周さん、次、こっちよ!」由香との挨拶が区切られると、すかさず、妹の由紀が、周の唇を奪う。「ああ、由紀ちゃんも素敵・・」周の、余りに素直な言葉は、流石(さすが)に宙を動揺させたのかも知れなかった。しかし、彼女は落ち着いていた。中条に向かい「それじゃ、あたしたちも始めましょ・・」 「分った、いいだろう」彼は返した。

「伯父様・・」宙は続けた。「まず、初美先生とのご挨拶をどうぞ。あたしは、途中から入って行くわ」 「そうか、宙ちゃんは、後から入り込むのが好きみてぇだな」 「はい・・と言うよりね」 「うん、何かな?」 「あたしね、他の人たちが行為してるのを見るのが好きなんです。それ、ちょっと可笑(おか)しいかしら?」 「まあ、確かに変わってるのは事実だな。もしかして・・?」 「もしかして、何かしら?」 「それは、性交(セックス)も含まれるのか?」 「伯父様、初美先生・・」宙はそう返すと、満面に薄気味悪い笑みを浮かべた。

「仰る通りよ。あたし、他人様の性交を観察するのが大好きなの。これはね、去年以来、周さんがウチの母と仲良くなった時期があったんだけど、二人が行為をする所を、度々見る機会があって、それでそんな趣向になったみたいなの。因みに彼は、ウチの姉とも関係した事がありまして・・」 「宙ちゃん・・」驚いた様に、初美が訊く。「周君、結(ゆい)も抱いた事があるの?」 「そうですよ。姉は、周さんと交わった時、あたしを呼んで『男女の事は、こうするのよ!』なぁんて偉そうに見せつけた事もありまして・・」宙は、落ち着いて答えた。

「呆れたわ・・」初美はもう、全身から力が抜ける様だった。総合予備校 佐分利学院の講師陣を外れた、己と入れ替わりにその陣容に加わった、花井 結の意外な所だった。しかし、もう夜の行為は始まっていた。「まあ、いいわ・・」初美も、一応の決心はした。「新さん、まあ触りだけでも見せたげようか?」 「悪いな、それもやむなしだろう・・」中条は返し、夜具寄りの座椅子に並んで座り、初美と唇を合せる。それは次第に、舌をも使った熱く濃いものに変わって行く。

初美「ああ、好いわ。続けて・・」 「OK。できるだけ温めた方がいいぞ・・」双方の背後に両腕を回し、濃い挨拶が区切られると、中条は、右手を初美の胸元へと滑らせる。ブラをずり下げ、胸の双丘が現れる。「ああ、素敵・・」乳房の愛撫を得て、喘ぐ初美に、宙がやや乱暴に唇を奪う。「ね、初美さん・・」 「ん、うう・・」 「あたしのキスも、もう慣れたでしょ?」 「ん・・まぁ・・」余り言葉の体をなさない、初美の喘ぎ半分の返事。中条が、彼女の胸の双丘に顔を埋めにかかり、再び「ん・・んん」唇を奪われたのままの、籠った喘ぎ。少し離れた夜具では、周が、由香を下に組み敷いて重なり始め、傍らで、由紀が盛んに煽っている。熱い夜へと、時が進む。
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の壁紙 北アルプス連峰冠雪 長野県大町市上空付近 2005=H17,4 撮影 筆者
葉加瀬太郎さんの今回楽曲「カラー・ユァ・ライフ(Color Your life)」下記タイトルです。
Color Your life


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