パノラマカーと変な犬 第44話「遭遇」
- 2018/04/02
- 20:30
8/2の水曜も、続いて暑い曇天の空模様。中条 新(なかじょう・しん)の、某マンション 7Fにある居所と、A大学の 夏季学術交流行事に参加の 木下由香(きのした・ゆか)・由紀(ゆき)姉妹の、会場たる A大学、そして佐分利学院との往来も、もう慣れた様な風情だった。夕方近く、中条より先に戻る形の姉妹は、彼行きつけの店での買い物とかも、円滑(スムーズ)にこなす様になっていた。
水曜の夕方も、姉妹は 先に中条の居所へ一旦戻り、買い物へと向かう所。そこへ彼から SNS着信があった。「行事ご苦労様。今夜はさ、三人で室(むろ)さんの店行こうかと思うんだが、どう?」 由香の返信。「室さんのお店って、お話には聞いてるとこですよね。あたしたちは賛成ですよ!」 「そうか、有難と。俺、今 ちょいと手が離せんので、席だけ電話で押さえといてくれんかな?」
由香 「了解です。後で、結果報告でよろしいか?」 「OKだ。俺が一緒に行く事を、彼に伝えりゃ分かってくれるさ。ただな・・」 「はい・・」 「二人と俺は、(佐分利)学院の傍で 偶然出会った事にしといてや」 「ああ、あはっ。・・ですね。よろしですよ。ほな、それでお話しときます。お時間はどうでっしゃろ?6:30pm頃からでええのかしら?」 「それでOKだ。では、宜しくです」 「かしこまりましてん・・」ひとまず、交信ここまで。
由香は続いて、中条から教わった 室 静男の居酒屋「MURO」に電話。すると、応対に出たのは、ここでバイトに入っている、妹の由紀と同期の A大学生 阿久比 周(あぐい・あまね)だった。「有難うございます。『MURO』です!」 由香「済いませんが、今日これから予約お願いしたいんですが」 これを聞いた周は、一瞬「!」の反応をした様だった。少しのやり取りの後、名前を聞いた周は・・
「失礼ですが・・」 「はい・・」由香が返すと 「もしかして、木下由香さん?」 「ふふ、お気づきかしら?」 「いやホント、有難うございます!お三方なら、テーブル席でも何とかです。・・で、同席の方の事、伺っても良いですか?」 「良いですよ。どうぞ・・」 「もしかして、妹の由紀ちゃんと 中条の伯父さんですかな?」 「はい、その通り!」 「そうですか、かしこまりました。ひとまずお席の確保で良いですね?」 「そうですね。お品とかは、着いてからにしますわ」 「はい、有難うございます!後程」通話ここまで。
「さてさて・・」由香は言った。「席は取れたわ。これ、伯父様に伝えんとな」 傍らでは、由紀が予約電話の一部始終を聞いていた。「そやな。その時、量を減らして買い物するんかどうかも聞いてくれると良いな」 「OK、任しとき!」由香はこう返すと、まだ仕事の中条に、居酒屋の席が確保できた事を伝え、この日の買い物はパスして良い の返事を得た。
「よ~し、ほな・・」由香が言った。「はい、何ぞ?」妹・由紀が返すと 「今からな、ざっと部屋掃除しよや。それでも 小一時間あるさかい、例の、さわりだけでも見たろうやんか」 「ハハ、面白(おもろ)いな。それ・・ほなら、寝室から行くわ」 「ああ、宜しゅう。あたしゃ、書斎の様な部屋から行くさかい、居間で合流な。厨房周りは毎日やっとるから、パスで良いやろ」 「そやなぁ。ほな、そないな事で・・」姉妹、手早く部屋を清めると、男の持つ AV をチェックすべく、DVDと冷茶のグラスを手に、画面前に陣取る。
「ハハ、大体・・」由香は呟く。そして「半分位やけど、伯父様の趣向が分かってきて、意味あったな」と続けた。聞いた由紀「うんうん。まぁな。伯父様は、実際もそやけど AVのお好みも 着エロでしたっと!」 「まあ、そんなんや。着衣をじっくり、ちょいとずつ乱して・・やな(笑)。ささ・・ばれん内に、片づけよや!」 「ああ、そやな」居間がクリアになった 6pm少し過ぎ、中条が戻る。「二人 お疲れ、戻ったぞ~!」 「お帰りなさいませ~!」顔を見合わせ、三人は笑い合った。
数分の内に、正装から 夏の平装に替えた男は、由香から 室の店予約の件を聞き「有難と。それでOKや。そいじゃ、貴女たちの用意ができたら、行くか・・」と応じ。聞いた姉妹は、こっくり頷き、出かける用意を少し。既に 男と同様な 夏の平装に替えていたから、それ程時間はかからない。以前も記したが、徒歩で数分の近場である。
「いらっしゃいませ!」 「ようこそ!」賑わう居酒屋「MURO」の店内は、活気を帯び始めた所。初め、由香と中条は生ビールの中サイズ、酒気の許されない由紀はペリエ。乾杯の後、この夜は、中条が新潟へ行った折りに嵌まった、吟醸日本酒を少し、冷やして味わった。食の方は、特に珍味はなかったが、この土地ゆかりの Nコーチンの串焼きや、周お薦めの鰻長焼き、姉妹の一好物 海草サラダや中条が嵌まったばい貝の蒸し焼き、終盤の梅茶漬けなどが現れた。
店主(オーナー)の室とは、余り話ができなかったも、表向き「姉妹はホテル泊まり」の所は何とか伝えられた。「周君、合間できたら、ちょいとこちらへ・・な」と、中条が声をかけ。「分かりました!」周はこう返し、暫く後、三人の席へ。中条「忙しいだろうから、ここは手短かに済まそや」 周「・・ですね。直ぐ伺いましょう」 「今度の土曜の件、親御さんに伝えてくれたな」 「はい、確かに!」
中条は続けた。「有難とよ。話が通ってりゃ良い。君らの学術行事は、金曜までだったもんな」 「仰る通りです。・・で、土曜は、皆さんで自分の親許来られるって理解で良い訳ですね」 「そうだ。但し、昼頃ご挨拶に寄る程度だがな。夜はよ、君のご実家から ちょいと西の方て行った、お稲荷の近所に、俺が親きょうだいと住んでた 古い家に泊まるって事だ。まあ今でも、俺の会社の拠点になっちゃいるが、この日とその前後は、間違いなく泊まれる。心配なしや!」
周「有難うございます。そう言う事なら・・」そう返し「それじゃ、伯父さんたちがそこへ移動される時、ウチの車が出せる様にすればですね」 中条「そうしてくれりゃ 有難い。周君は、金曜の行事が終わると、直ぐご実家帰りだったっけ?」 「はい。多少の茶話会なら、顔を出すつもりですが、まず そのまま帰る事でしょう」 「分かった。有難う。細かい点は、当日でも良いか?」 「はい、OKです!」周は、はっきりと応じた。
「有難うございました!」二時間程いた。その間に中条は、土曜日の 周の実家訪問の段取りを大体詰めていた。後は、現地にて 四人が落ち合う段取りをするだけだ。それは、土曜の朝までに固める事にして、周の同意をも得た。再び徒歩で 男の居所に戻ったのが 9m頃。
この夜の中条、入浴を含め 姉妹には、己からは指一本触れなかった。シャワーを経て 少し早めに休ませ、翌日に備えさせる。斜めに向かいの不良犬「マル」も、この夜は屋上に現れない様だ。尤も 姉妹の居る寝室からは、今度は由紀が現れて、臥して夜のTV番組を見ようとする中条の上に重なるのが、ちょっと うざくも喜ばしくもあったが。
明けて 8/3の木曜も曇り日。三人は 6:30am過ぎ、又も 斜め向かい家屋上に現れる、珍犬とも変犬とも言える「マル」の 放屁の様な咆哮で起床。朝食後は、中条も姉妹も 前後して出かけ、まあ順調に 仕事や行事をこなした後 そのまま午後の帰宅へと繋がるはずだったが・・夕方前、男から預かりの 合鍵を携えた姉妹は、帰り着いた玄関で、ある異変に遭遇する。その詳細は些か残念ではあるが、又次回触れる事としたい。
(つづく 本稿はフィクションであります)
今回の人物壁紙 名古屋オート・トレンド 2018会場より。2018=H30,2 画像提供 A・DENKA様 有難うございます。
中村由利子さんの今回楽曲「'プレイズ'('Praise')」下記タイトルです。
'Praise'