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パノラマカーと変な犬 第62話「麗影」

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「いやいや、ご苦労やった!」 「こちらこそ、おおきに。有難うございました!」 名豊電鉄の N市中央下駅から別行動となる、結(ゆい)、宙(そら)の花井姉妹と 宙の彼氏 阿久比 周(あぐい・あまね)と別れた由香、由紀の木下姉妹と中条が、多少の買い物を経て市営地下鉄に乗り換え、城址西側の 彼の居所に戻ったのは夕方近く。とりあえず、冷蔵庫にあったアイス・コーヒーを三杯に分け、居間(リヴィング)に運んでそれぞれがソファに収まり、話を続ける。

中条が言った。「二人、疲れたろう。今夜は俺んとこの最後の夜だから、これから買い物とかには付き合わせたくねぇ訳。で、夕飯だが 酒気と野菜の類はあるもので都合して、後は宅配のピザとかで良いかな?」 聞いた由香「ああ、有難うございます。・・ですね。あたしらも ちと疲れたんかなぁ・・どうしてもって言わはるならご一緒しますけど、行かなくて済むなら、有難いなぁ。由紀もそやろう?」 「はい~!出かけずに済むなら、あたしも大感謝ですぅ~!」こう同調する由紀だったが、直ぐに何かに気づいた様だった。

彼女は続けた。「今夜はええけど、明日の朝ご飯は大丈夫でっか?ちと早起きなんですよね・・」 対する中条「ああ、大丈夫やよ。さっき、貴女たちが土産品見とる間に、俺ちょいと抜けてって、フランス・パンを買ってた訳。卵や野菜、ヨーグルトはあるから安心しろ」 「おおきに、有難うございます。それやったら良いですね」安堵したらしい姉妹は、美しく笑った。

中条「さて俺は、風呂用意して、野菜スティックとかを用意して来る。貴女たちが応援してくれりゃベストだが、そうでなければ 明朝直ぐ発てる様に、そろそろ手回り品の用意をする事だな」 由香「有難うございます。あたしが厨房とかの応援しますから、その間に由紀、持ち帰るモンの準備、できるとこまでしとき!」 「OK。ほな、自分のからまとめるわ。お姉ちゃんのは 後からやけど、一度点検してな」 「ああ勿論!ほな、始めっか・・」

由香は中条と共に、夕食の準備に入り、由紀は帰り荷物のまとめにかかった。が 勿論、三人の間が 平穏・・と言うか 平凡の終わるはずはなかった。「ちょっと、トイレへ・・」中条が厨房を離れ、小用に立った所を、隣室で持ち帰る物を仕分けていた由紀は見逃さなかった。「ふふ、トイレね・・」向かう中条の背後に、ピタリとつける。目的は勿論・・

「伯・父・様・・」トイレ入り口に立った中条の背後から、由紀はすり寄った。「おお、由紀ちゃん。又、連れションかよ?」まさにドアを開けようとしていた男が、振り返り言った。由紀「はい、その通り!今日がひとまずの最後やさかい、トイレの事だって、コテコテに濃く行きまっせ~!」 「ハハ、コテコテかぁ。俺、夕べ頑張ったから、今日は余り期待できねぇかもだぞ」 「ふふ・・大丈夫よ。そこをその気になる様にしますさかい。姉もおるしね、何なら 直ぐ呼んでもええんですよ~!」

「まあ待て待て。最後だ言ったって、まだ夜まで間があるだろ。肩の力抜いて、リラックスしてやれば良いんだよ」 「ハハ・・それもありですね~!」そう言い合いながら、由紀は中条の背後から、又も竿(さお)と陰嚢を連れ出した。「ああ素敵・・このお竿と玉袋の感触、忘れん様にせんといけまへんな!」 「まあ、そないなとこやろう。あ・・そやけど俺、今日は昇らんからな」 「ふ~ん、そないかしら。あたしたちの特別(スペシャル)な愛撫(タッチ)をかわせるかしらね?」そうこう言い合っている内に、既に二人が入っている トイレのドアがノックされた。

「お・二・人・・!」ドアの向こうから、由香の優れた笑顔が覗く。が それに比して、言葉の方は際どかった。「何ですねん?・・伯父様。又由紀に、お竿を狙わせて・・ホンマ『釣り』でんなぁ」 「ああ、いやいや。成り行きでこうなっちまってさぁ。二人がここ来てすぐの時も、確かあったんじゃと思うたりしてさ・・」と、中条が返すと 「ま 折角ですさかい、あたしも見させてもらいますわ」ニヤリと微笑み、開けたドアの位置を動かない。

「ささ、伯父様・・」由紀も、姉に似た微笑で言う。「どうぞ遠慮なく、放出して下さりませ。それ見せてくれはったら、あたしの『する』とこ お見せしまっせ」 「あたしも、今度だけは 右に同じでしてん・・」見ていた由香までが、そう言った。「・・分かった。そないな事なら・・」曖昧に返そうとする男の下方に、穏やかなるも熱い愛撫が施され 高まって行く。

「あぁ~、好い感じ。もうたまらんわ~!」たまりかねた中条、音を立て放出す。「ふふ・・一杯出しはったね」由紀 笑顔で反応、「ホンマやね。伯父様のアッチ、まだ若いわぁ!さあ、あたしたちのも見せたげようかしらね!」と言えば、姉・由香も「お~、良いんじゃね?あたしも見てもらうつもりやさかい、由紀から行ってみ!」と煽る様な出方。

様子を見た妹は「ほな、お返しさせてもらいまひょ」と言って パンツとショーツを脱ぎ下ろし、下方も露わに洋式便器に跨がり、中条からよく見える様、股間を開く。「ううっ・・やっぱり良いわ。何度でも見たくなる・・」直ぐに「聖水」が射出され、器用に便器の底へと落として行く。

由紀の「用」が終わると、姉と交代だ。入れ替わりに由香が 便器上から妹の時同様の「聖水発射」。これも、全部便器へと流れ落ちた。中条は言った。「いや~、有難と。二人共素敵だったぞ!まだまだ見てぇとこだが、この辺にしとこう。ま、風呂がどうなるかわからんが・・」 聞いた姉妹は「伯父様、今夜イケるんやなくって?」と、つい呟いたものだった。

夕食の下準備を終えての入浴も、三人一緒の様なもの。姉妹と中条は、互いの身体を洗い合ったり流し合ったりで、まだ明るさの残る夕刻を過ごす。「風呂性交(バス・セックス)はお嫌いでしたっけ?」と、下方洗いを披露しながらの 姉妹の問いに男は「ああ。ま、ちょいと嫌い・・じゃなくて苦手・・なんだよな」という感じで、曖昧に受け流す中条であった。風呂上がり直後、注文のピザ二枚が届き、由紀のペリエと 由香、中条の赤ワイン、野菜スティックや果物などを揃え、夕食。

料飲を嗜みながらの、一時間余りの「反省会」を終え 片づけを経て、中条は TV番組をチェックも、好ましい番組がなく「さて、どうする?」の所で、姉妹から あろう事か AV 観賞の希望が出た。「何だよ、マジで観る気か?」訝(いぶか)る男に 姉妹は「だから、ひとまずの最後に似合いやないですか。何卒、何卒・・」と拝み倒そうとして。中条は「仕様がねぇな。まあ、ソフト目なら 見せてやるよ・・」かくして、入院患者と看護師女性の 不倫風情のストーリーがメインの作を、三人で観る事に。

由紀にアイス・コーヒー、由香に赤ワインの残りを譲り、中条は、ブランデーをロックで。AV観賞の合間に、姉妹は交代で着替え、中条期待の下着調コス姿がもう一度 見られる事に。「いや有難と。こっちも素晴らしいな。触りながら AV観るのって、何か良い感じだわ」 「何となく分かるわよ。伯父様のおスケベモード、後少しで全開ってとこかしらね~」何度目かの濡れ場の時、由香が言った。

「ああ、それなぁ・・」中条が返した。「今回はもう『男女核心の結合』はしねぇつもりなんだ。ただ・・」 由香「はい・・」 「軽め(ライト)なお触りなら、最後までしてぇなぁってとこですよ!」 「ふふ・・それ、あたしたちも 望むとこでしてん・・」姉妹は、笑いながら応じた。結局、最後のこの夜も、寝室のベッドは由香だけが使い、中条と由紀は、居間のソファに重なって朝を迎えた。

「所詮、Kuso犬は Kuso犬・・」斜め向かい家の飼い犬「マル」が早朝からよく吠えた。中条が「屁の様な~」と揶揄する、あの甲高い声だ。階下を行く散歩人たちに喧嘩を売った後「キョロキョロ・・」と辺りを窺った上で、建屋の陰に隠れて用を足す悪知恵をも身につけた様だ。身体の一部チラ見えで、大体の所は分かるのだが。それと、マルが地上に降りたのを見たのは、この前の ボヤのあった夜一回だけだった。この朝は、その時晒した「グルグル踊り」も再演。ようやく 晴れた夏空に恵まれた 8/7 月曜の朝、三人は 6am前に起床。姉妹は、上シャツにジーンズの平装、中条はカッターに長パンツだが、この日の出番にネクタイは不要だ。

「お早うございます!」 「はい、お早う」ひとまず最後の、朝の挨拶だ。名残惜しくもあるが、やはりこの朝を以て、中条は 姉妹を親元へ帰す事にした。「俺ぁ良いんだが・・」 未だ 姉妹の「女体」の温もりは忘れ難く、それに彼女たちも 更なる長逗留を望んでいる節があったが 8月も第二週に入り、盆の時期も近い。余り引っ張ると、勤務先社長の義弟や 専務たる実妹の懸念にある様に、誘拐容疑が持たれる危険(リスク)もある。

前日同様 由香の応援を得て朝食準備を進め、その間に由紀は 夜具を片づけて持ち帰り荷物を点検。その中には、彼女が特に望んだ 豆柴の縫いぐるみ「豆助」の姿もあった。「Kuso助」とも言うが。「素敵なお土産を教えてくれはって有難うです。でも・・」の後で「豆助君も、頂戴!」と屈託のない風情で豆柴をねだった。内心渋々応じた中条だったが、その時の美しい笑顔は、忘れ得ない情景の一つになった。

6:30am頃から朝食。「あれを見ろ!」出窓の際へ出したテーブルを囲みながら、中条が斜め向いの屋上を指して言った。姉妹が目を向けると「ホントにまあ、悪知恵がつきやがってさ。今じゃ、下や周囲の様子見ながら粗相する有様だ。何だかだて言っても、やっぱりアイツは『Kusoマル』だわ!」丁度、片足上げのハイ・キックで小用の所。聞いた由香「やっぱり、伯父様目線では『Kuso』は免れないのかしらね!」と静かに笑い、傍らの由紀も「まあそれも、個性の内って事でしょう!」と、笑顔で応じた。「今まで、おおきに!」 「ああ、確かに!」合間に、由香から合鍵が返される。

7:30am少し前、出発の時が近づく。大坂への、近畿参宮電鉄特急の N市中央下駅発時刻は 8am。途中多少の渋滞は織り込む必要がある。「よしゃ!」男は言った。「そろそろ出ようや。忘れ物気をつけて、ついでに 斜め向かい上の あのアホにも挨拶したってくれ」 「はぁ~い 勿論!可愛いマルちゃんは、とても大きな思い出やさかい・・」姉妹はそう返し、居所を施錠する男より先に、EVで階下に降りると「マルちゃん、元気でね!」と 由香、由紀と並んで大きく手を振った。屋上に出たマルは直ぐに気づいた様で「ワン、ワン!」と元気に尾を振って反応。姉妹との 暫しの別れを、多分コイツはまだ知らない。

N市中央駅下には 20分程後に着いた。近畿参宮線の地下フォームから近いコイン・パーキングに車を入れ、徒歩で僅かの距離だ。地下フォームに降りると、直ぐに大坂浪速行きの特急「アーバンライナー・ネクスト」が現れた。当然の事だが、名豊電鉄「パノラマ・シリーズ」の備える音楽警笛ミュージック・ホーンはない。中条の薦めで初めて乗る、上質なデラックス・シートが配された 最後尾 1号車の最後列が、今回の席だ。見送る中条に見守られ、由紀は窓側、由香は廊下側の席を認め、その後にそれぞれのキャリー・バッグなどを納める。

ビジネス客に人気の様で、かなりの乗車率だ。「成るほど、この席ちょっと高めやけど、居心地は良いわぁ!」由香も由紀も、好印象を抱いた様だ。「だから言ったろ。たまにゃ乗ると良いってさ」と中条。 「・・ですね。もしも今度伺う事あったら、覚えときます」 「ああ、そうしろよ。後な・・」 「はい・・」無言で頷いた男が、姉妹に手渡したのは、二本の缶コーヒーだった。

「おおきに。今朝まで、有難うございました!」 「こちらこそ。道中のつつがなきを祈るわ!」 「はい、そちらのご心配も感謝です~!」一渡りの挨拶の後、由香が中条に耳打ちし「おスケベな夏を、有難うです・・」と一言。次いで由紀も「お蔭で、お金も随分浮きました・・」と同様に囁く。そして、姉妹が両耳に「ミ~ド~ラ~♪・・」ミュージック・ホーンの節を囀(さえ)ずったのだ。「ハハ・・ま、その通りやな」男は、思わず苦笑した。発車の時が迫る。彼が列車から離れると、すかさず乗降ドアが閉ざされた。

車中の人となった姉妹と もう一度の会釈を経て、浪速行き特急は 静かにフォームを離れた。席に 後向き中腰で膝立ち、手を振り 投げキスを贈る姉妹に、男は答礼し 見えなくなるまで見送った。少しだけ ホッとした気持ちで駅を出、ゆっくりと駐車場に戻る彼。勤務先には 9am出社の許可を得ており、急ぐ必要はない。車を出す前に、結(ゆい)と周(あまね)に宛て、姉妹が元気に帰った事を LINEで伝える。「さて・・」運転席に収まり、料金支払いの為の小銭を用意する。「或いは、この夏は 俺たち自身が『変な犬の群れ』だったのかも知れんな・・」ベルトを締め イグニッションを入れながら、中条は そう呟いた。
(おわり 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 Rio
中村由利子さんの今回楽曲「あなたが微笑む日」下記タイトルです。
あなたが微笑む日

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