ちょっと入淫 第7話「受信」
- 2018/06/21
- 16:10
「来たな。間違ぇなくあいつらだ・・」宵の窓外を見下ろしながら、中条が呟く。斜め向かいの商家「松乃家(まつのや)」の通用門で、用務車から下された 動物の載っているらしい籠(ケージ)は、計三つであった。大旦那、若旦那と若女将らしい女性が、一つずつを手に提げ室内へ。その後を「ワン、ワン!」落ち着かない様子で しきりに尾を振りながら飼い犬「マル」が続いて行く。暫くして、ワン・ボックスの用務車も 駐車場所に戻される。
「さて・・」 男は続ける。「遅くとも 明日から暫くはうざくなるな・・ま、目覚まし替わりにはなるし、それはそれで良いよね・・」ふと思ったその時だ。手元のスマート・ホンに反応があった。LINEの着信があった様だ。盆の前、数日程滞在していた 木下姉妹の姉 由香からだった。
「伯父様 今晩は。暫くでした!」 「ああ、有難とよ。元気そうで何より!由紀ちゃんも変わりねぇかい?」 「は~い!お蔭様で、二人揃って元気でやってま~す!夏休みの課題も、何となく目途がついて来てね・・」画面に綴られた文面の向こうに、秀麗な二つの笑顔と姿態が見える様だ。
中条は返信す。「そうか、そりゃ良いな。俺も、お蔭で元気にやっとる。周囲も概(おおむ)ねな・・」 由香「ああ、伯父様の方も好い感じなんですね。ここんとこ ずっと暑いから どないかなぁ?なんて思うてお知らせに上がったんですよ。そうそう、初美先生も お元気?」 「ああ、それも有難と。彼女とは、盆の前後に一、二度会ったよ。大声じゃ言えん行為も 一度はあったしな・・」 「まあ!お熱くてよろしおすね。もしかして、年内にも吉報かしら?」 「うん、まあ上手くすりゃだけどな。ま、その時は、貴女も由紀ちゃんと一緒に呼んだるから 宜しくな!」 「ふふ・・好いお話ね。期待しますわ~!」
由香は続けた。「所で伯父様・・」 中条「うん、聞くぞ。何かい?」 「マルちゃんは元気?」 「ああ、オマルな。元気も元気・・さっきもさ、ちっとも落ち着かん様子で ご主人一家の周りをウロウロしてやがったぞ」 「ああ、好いですねぇ。やっぱり彼、ご一家皆様に可愛がられてるんやね~!」 「まあ、そんなとこだろうな。ちと悔しいが、事実だろう。それでな・・」と、男は迂闊にも 直前に晒された眼下の光景を 由香に語ってしまうのであった。
由香「ふふ・・何や面白(おもろ)い展開やった様ですね。聞きたいわぁ!」 中条「それはさ・・」と一呼吸おいて 返信を続ける。「実はさ、俺の学生時分の先輩が入院しよってな。それで、ここからが面白(おもろ)いとこなんだが・・」 「はい、先輩の方にはお見舞いですけど、そっちはお楽しみね。お聞きしますよぉ・・」 「・・でな。その彼に 飼い犬が 3匹おるんだが、入院中 俺んち斜め向かいの オマルのおる商家に預けられるとかで、ついさっき来たみてぇなんだな・・」 「ワハ、面白そう!マルちゃんにお友だちが来たって事ね?」 「その通り!」
その時、由香が中条に電文を送る 大坂東郊・木下邸上階の 姉妹の部屋には、勿論 妹の由紀も控えていた。姉妹揃っての、下着の様な薄物上下姿。ストッキングはニーハイだ。姉は一瞬、画面から目をそらすと「なあ由紀、ちょっとこれ見てみ~ これ見てみ~ これ見てみ~・・」と言いながら、妹にチェックを促す。一見した由紀は「お~、面白(おもろ)いな。なぁ、明日からでも 直(じか)に行って、見てみたいわぁ!」と応じた。
「ほぅ、マジでか?」一方ではそう思いながら、由香は「伯父様、由紀がね『明日からでも、伯父様んとこへ伺って 見てみたいなぁ』とか言うてますよ。そんなんしてええのかなぁ?」 読んだ中条、一瞬は「マジでか?」と思うも、直ぐに思考を切り替えた。「ああ、俺は良いよ。ただ、もう直前だからなぁ。交通手段(あし)とかは大丈夫なんかなぁ~?」男が こう懸念の返事を送るより先に、「お~し!」由紀は近畿参宮電鉄のサイトを開いていた。
「お姉ちゃん OKやで~!」中条との交信を続ける由香に、由紀はこう言った。「明日は 昼から大学に顔出すから、そのまんま帰らずに 鶴橋から N市行きの特急に乗りゃええねん。伯父様のお仕事は 5:30pmまでやから、予約は その後に着ける様にさ 4pm過ぎに発つ便にしたで。帰りは とりあえず様子見たけど、今度の日曜夕方も、次の日月曜朝のも 今んとこは空席あって 大丈夫やで~」
これを見た由香は、中条に伝える。「伯父様、明日夕方から そっち参ります。たった今 由紀が、近参特急の指定券確保しましたぁ!」 電文を見た男「やれやれ、真に受ける奴があるかいな・・」と 失笑しながら一方で思いつつも 本音では「いやぁ、しめしめ。又美人姉妹の若い肌と身体が味わえるな~・・」と、正直 大いに芳しくない想像をひとくされ・・
由香から、明日以降の予定を聞いた中条は「そうか、まあ良いだろう。又、俺んちでよければ泊めたるよ。犬共だが、オマル以外は生態を見てねぇんで、早くても明日朝までは分からんが、それでも良けりゃ 出て来てくれりゃ嬉しいな」 「有難うございます!ホンマ、無理言うて済んまへ~ん!ほな、明日夕方から伺うって事で・・」 中条「ああ了解!明日の夕方からな。着いたら、俺の馴染みんとこで、晩飯食おうや。多分迎えに行けるとは思うが、遅れたら直ぐ連絡するから、その時ゃご免な」 「いいえ~!こちらこそ ご面倒おかけしまして~ん!」 「ああ、いやいや 気になんかすな。この前と同じ気分で、気軽に来たらええ。気をつけて来いよ!」 「はい、有難うございます!明晩から 宜しくお願いしますぅ・・」交信ここまで。
「それにしても・・」LINEを終わった中条は、暫しの失笑を余儀なくされた。「たかが Kuso・・じゃなかった、バカ犬 4匹のバカ騒ぎとアホーマンスを見る為だけに、わざわざ大坂から出て来るか?・・その辺の神経がよう分からんが、まああの美人姉妹と深ぇ事できるなら、ええわな。せいぜい歓迎してやるか・・」と、男の胸中はもう 不良な「姉妹味比べ」の準備モードである。
「もう一度、シャワー浴びるかな・・」中条はそう呟き 浴室へ。洗髪を伴い 小半時足らずでバス・ローブを引っかけて居間に悖ると、出窓の外、斜め向かい家の屋上に、動物複数の影がチラリと動くのが分かる。「さてさて・・」男は呟く。「来る早々、屋内案内か。オマルも、他の奴らも忙しい連中やな・・」少なくとも 2匹はいる様だ。
忘れぬ内に、松下家に預けられた犬 3匹の事を ちょっと触れておきたい。雌の「サンコ」は「マル」と同じパピヨン種。宮城の 3匹中では最大だが「マル」よりは若干小さめだ。雄の「一太」と雌の「フゥ」はポメラニアンのつがい。体躯はやはり「一太」の方が 僅かに大き目。いずれも生まれてまだ 2~3年目の若い犬で、生まれた順に「一太」 「フゥ」 「サンコ」の順らしい。
「さてさて・・」もう少しだけ TV番組をチェックしつつ 寝酒のブランデーを少し飲んで 休む事にした中条。窓外の商家屋上では、相変わらず犬共が、夜の徘徊を続ける。どいつかは分からないが、時折「ワン!」と短く啼きながら 曇りの夜につき 月明りはなくも 微かに届く 周囲の照明を受け、4匹揃っての行動らしい事が分かった。「お前ら、程々にな・・」
明けて 8/18の金曜は、天気予報通り 朝から降雨。「ハハ、出鼻を挫かれたかよ・・?」窓外を見た男は、そう呟いた。未明からの降雨は、結構な量だった。斜め向かいの「松乃家」屋上フロアも、強めの雨が打ちつける。そんな状況下 宮城が松下家に預けた犬 3匹中「一太」らしいポメラニアンが、ほんの僅かな間、姿を現す。「トトトッ」と短い間、雨間を駆け抜けて 直ぐに階下へ。
その間「マル」はというと、一つ階下のヴェランダに 欠伸(あくび)をしながら のっそりと現れる。中条は、呆れて見ていた。そして直後、こいつは彼の想像通りの行動に出た。ヴェランダの途中にある空調室外機の前で「クルリ!」と尻を向け しゃがみ込む態勢に。「あ、バカ野郎!」思わず、男が呟く。どうやら、雨中で粗相をした様だ。「あ~あ、あの位置と感じじゃ どうせやっとるだろう。ホント、始末も尻癖も悪い奴っちゃ。宮城さんちの 3匹が真似せにゃ良いんだが・・」
(つづく 本稿はフィクションであります)
今回の人物壁紙 桜空もも
野呂一生さんの今回楽曲「イン・アワ・ウェイ・オブ・ライフ(In Our Wayof Life)下記タイトルです。
In Our Way of Life