ちょっと入淫 第8話「回診」
- 2018/06/24
- 15:01
8/18 雨の金曜日。中条 新(なかじょう・しん)が、その居所で起床早々 斜め向かい家の不良な飼い犬「マル」の「粗相」なる 低レベルな雨情を見せつけられていた同じ頃、彼の学生時分の同級生 宮城一路(みやぎ・いちろ)は、予想超えの 入院先特別個人病室にて、久々に穏やかな朝を迎えていた。
前記の様に、彼の会社兼居宅は N市でも西寄りの下町。結構遅くまで、近隣の製造業の機械音などが聴こえて来たし、週末などは、彼も若い日に少しは関わった、暴走族の連中が 中心街との往来など、深夜早朝に大音響を立て走り回る事もしばしばであった。尤も慣れっこになったか、彼の 3匹の犬共は 簡単には吠えたり騒いだりはしない。状況が、相当に深刻レベルとなるまでは動かないのであった。勿論 一定鈍感になっている様な所もありはしたが。
「今朝は雨・・か。久々に静かな夜だったな。雨音以外 ものの見事に、何の物音も聴かなんだのは 久しぶりだぜ・・」ゆっくり立ち上がり、窓外に目を遣る。少し霧がかった表の街並みは、やや強い降雨だった。少しおいて 内線電話が鳴る。「はい・・」 「宮城さん、お早うございます。瀬野です。今日は早番なの」 「ああ、瀬野美波(せの・みなみ)さんですな。お早う、挨拶感謝です」
電話口に出た宮城に向け、美波は続ける。「そろそろ朝ご飯・・ですよね」 「はい、そうですね。そろそろ食堂へ行こうかな・・なんて思ってたとこでね」 「丁度好いわ。宮城さん、ちょっとお話もしたいし・・朝ご飯 あたしがお部屋へお持ちします。ちょっと そのままお待ちを・・」 「ああ、そいつは有難い。じゃあ、お願いしちゃおうかな」 「かしこまりました。ちょっとの間だけど、楽しみだわ・・」電話口の向こうに、美しい笑顔が見える様だ。
「こんな想像も いいよな・・」宮城の脳裏に、ふとこんな想いが過(よぎ)った。「直ぐ会えるのは分かってるんだが、ああやって内線で喋ってる時の、あの想像が好いんだよな。果たして、首から下は・・」暫くして、ドア・ノックの音。「はい、どうぞ・・」~冒頭に「美波さん・・」と名を呼ぼうとして 彼はやめた。昨日から、隣室は空のはずだが、それでも周囲に 彼女と懇(ねんご)ろにしているのでは?と思われてはまずいのも事実だ。
「お早うございます。お待たせしましたぁ~!」朝食と備品の載るワゴンを押した、美波の到着。「有難う。まあ中で話そうや・・」応接ブースに移った宮城、傍らに着席を促す。洋朝食を病人向けにアレンジしたメニュー。飲み物もカフェ・オーレで加糖されない。「実はさ・・」宮城は、昨夜 中条が見舞いに訪れ、ペット・ボトルの日本茶を ケースで届けた事などを話し、内二本を持ち帰る様促す。「有難うございます!それにしても まあ、ケースで・・ちょっと、やり過ぎね。笑」 「まあね。でも、こんな大雑把が彼(あいつ)の良いとこでさ・・」 「そうですか。中条さん・・一度会いたいわ~・・」
朝食を進めながらの会話が、半時程続いた。勿論 美波は投宿先の 本荘小町(ほんじょう・こまち)の居所で、先に食事を済ませての出番だ。小町は、美波より遅れて 午前途中まで 佐分利学院の養護課に出て 昼頃から鵜方病院の当直勤務の予定である。「それでね・・」美波は続けた。朝方の、今の所で 検体のお小水を取っておいて欲しいって言われてるの。それと、後少し・・」 「はいはい、後少しね。何となく分かる様な・・」宮城はそう返し、浴室併設の化粧室(トイレ)へ。
指示通りに 紙カップに検体を取り、軽くシャワーを浴びようとした宮城だったが、ここで小さな異変が生じ。何と外から「宮城さん、一緒に入っていいかしら?」の優れた一声。「!」一瞬の緊張も直ぐに落ち着けた男は「おお、素晴らしい!」こう思いながら 「これは意外!でも OKよ」進入を許す。果たして直後、彼の眼前に 眩しい女体が現われた。
「いや、素晴らしい。思った通りだわ!」 「ふふ、有難う。実はね、これも本荘先生の指示事項なんですよ」頭から爪先まで、まんま宮城を虜(とりこ)にする 美波の生まれたままの姿だ。日本女性らしい、清楚なほぼストレート・ロングの黒髪が下ろされ、胸周りは程好い「D」位のボリューム。明るめの 乳輪の色合いも好ましかった。その直ぐしたには 締りの良さを感じさせる ウェストの縊(くび)れ、下方の 程好く濃い下草、足首の締まった美脚も、宮城の目を眩(くら)ませた。 「いやー、眼福だわ・・」背後からシャワーを遣わせながら、彼は思った。思わず、勃起した竿(さお=男根)を、豊かな臀丘にこっそりと擦りつけ。気づいた美波、一瞬ムッとした風情も、直ぐに苦笑へと変わる。
しかし勿論、一方で気を緩める事はなかった。「有難う。お返しよ~・・」シャワーの後半 美波の背後からぬるま湯をかけてやりながら、胸の双丘をメインに上体、ウェストの縊れ、臀丘をひとしきり摩って回った宮城は、シャワーが区切られるとこう言った。「今朝は、この辺にしとこう。余り深過ぎると、感づかれ易いからな・・」 美波も もう分かっている様で「そうよね。あたしもそろそろ点呼だから、又後で来ます。今日、このお部屋の手入れは、あたしが担当なのよ」 「ああ、そりゃ良い!午後の 本荘先生の回診まで、安心してられるなぁ。食事ご馳走様!」 「いえ、お粗末様。じゃ、後でね!」他の業務に影響しない様、美波は、程々に病室を離れた。
この日は、夕方近くまで雨。宮城は 朝食後、美波が部屋を手入れし 夜具などを交換する間、ほぼ一時間強を 同じ階のロビーで過ごした。留守中の仕事絡みの事共は、概ねスマート・ホンでの情報やメッセージのやり取りで対応できた。緊急に面会すべき顧客や業者もなく、合間には 備え付けの地元紙 C新聞や経済紙 NK新聞に、隅々まで目を通せた。公園散歩や空き缶回収の時間が取れるとはいえ、普段は中々 この様にじっくり新聞紙面に目を通すのは難しかった。「これも良かった。お陰で、俺関連の商品市況がよく分かったぜ」
昼食は、初めのつもり通り 階下の食堂へ。当然の事だが、他の病室の面々とも会話の機会があり、時に宮城の知人が入退院する事もあったからだ。この日も、知人の一人が退院。「おめでとうございます!」 「お世話様でした!」の いつもの見送り挨拶の中に、彼の姿もあった。途中から小町が現われ「宮城さん、お疲れ様。後で、ちょっと回診ね」 「ああ、 こちらこそ。その時は宜しくお願いします・・」 「了解。もう少ししたら、お部屋に戻っててね」 「はい、お世話様です・・」
午後に入り、降りしきっていた雨が、弱まる気配。2pmを回り、面白くもない 午後の TV番組をチェックしていた宮城の部屋へ、小町の回診。定番とも言える聴診、触診に問診、それに血液検査の告知・・などなど。「やはり、脂肪肝の疑いが付き纏うって事よ。暫くは、お食事の制限を続けるって事で。それさえクリアすれば、退院までは短いわね」小町が言った。その時、又しても 意図的に白衣の胸元を緩め、双丘が宮城の視点から見易くする様な態度が感じられた。
宮城は「そうですか。まあ いつまでも仕事から遠ざかる訳にもいかんですから、早めの退院を目指す様 心がけますよ」と返し。胸の双丘チラ見えは、勿論喜ばしい。小町「それでね、宮城さん・・」 「はい・・」 「実は、触診はこれだけじゃないのよ。丁度いいわ。あたし、今夜は当直だから 9pmの消灯は厳守だけど、その後 貴方の部屋だけ特別回診したいの。だから、それは心つもりしといて下さらない?」 聞いた宮城は 一瞬戸惑った風情だったが、直ぐに気を取り直し「分かりました。一旦消灯後に、本荘先生の回診続きをお願いするって事で、俺もつもりをしておきましょう」 「宜しく、お願いね・・」 「こちらこそ・・」
一方の中条。荒れ気味の雨模様も、外出予定がなかったのは幸いだったかも知れない。この日は終日 本社倉庫で商品管理の仕事に当たり、その様な天気にも関わらず 商品の下見に訪れた顧客応対、それから数十万円規模の商談をまとめられたのは幸いだった。その来客時のみタイ着用も、夏の平装での勤務。経営幹部の親族や、上部社員たちからは 居所斜め向かいに集まった犬共の事をネタにされ、特に専務の実妹からは「お犬様方は 元気かい?」と冷やかされた。
「お生憎だな。今日はこんな天気だから、火薬が湿っとるらしくて 4匹共大人しいもんだわ」中条は、そうやり返すも「本気で、奴らを俺より上に見ようとしてるな!」と糾すと、実にあっけらかんとして 「だって事実だもん」と切り返された。こうなると、どう非難しても話にならず、ただただ苦笑するしかなかったのも事実である。
そんな状況ではあったが、勿論 商談成立は称えられた。それを見た中条は「よ~し、これで夕方は スムーズに終わらせられそうだ」 正に「しめしめ・・」と言う所だろう。案の定 5pm過ぎ、妹の専務 陽乃(ひろの)から「希望通り 5:30pmで上がられたし」との通告有。残り十数分で、溜まっていた伝票処理などの雑事をこなすと「じゃ、今日はこれにて失礼!」 「はい、お疲れ様!」
きっちりと区切り、会社を後に。少し時間に余裕があり、近畿参宮電鉄の N市中央駅下まで、徒歩で向かう事にした。降雨は続くも、もう傘を必要としない 霧雨状態に。「そろそろ、上がるだろうな・・」夏の曇り空を見上げた男は、そう呟く。使おうとしてやめた傘を携え 小半時程歩くと 近畿参宮鉄道の地下駅へ。自動化の進んだ集改札口の所で暫し待つと 6pm過ぎ、大坂なにわからの 上り特急が姿を現す。これに由香、由紀の姉妹が乗って来ているはずだ。
(つづく 本稿はフィクションであります)
今回の人物壁紙 花咲いあん
野呂一生さんの今回楽曲「フューチュア・ドリーム(Future Dream)」下記タイトルです。
Future Dream