ちょっと入淫 第19話「喧騒」
- 2018/07/23
- 21:27
8/19土曜の朝は、割と爽やかな感じで訪れた。暫くぶりの晴天。鵜方病院上階の 宮城一路(みやぎ・いちろ)が入る特別個人病室は 南東に位置する角部屋で、ブラインドを上げれば 朝陽がよく入った。暑い時季なるも 前夜は気温や湿度が高止まりする熱帯夜を免れ、冷房を停めても快適であった。
「静かだし、よく眠れるのは好いな。ま・・俺が引退(リタイア)してりゃ、ここに居つき・・な~んて事を考えても良いんだが。勿論冗談だけどな・・」宮城はふと、そんな事を想ったりもしていた。と、傍らの内線が鳴る。「お早うございます!」研修で隣県から来ている看護師 瀬野美波(せの・みなみ)からだった。
宮城「ああ、お早う。美波ちゃん、今日は早番かい?」 美波「ええ、そうよ。少し前から入りまして。今から お食事持って上がりますね」 「ああ、有難う。楽しみ・・だな」朝食の折の話相手としても楽しかったが、やはり彼には 一糸纏わぬ姿でシャワーの朝風呂を一緒に使ってくれる美波が好きだった。「さて・・」宮城は、ニンマリと笑顔を浮かべて言った。「今朝も、あの麗姿が拝める・・かな。面白そうだ・・」
同じ頃、少し離れた N城址から近い 高層マンションの一室たる中条 新(なかじょう・しん)の居所も、朝の部を迎えていた。こちらは、かなり賑やかな様だ。「ハハ・・やっぱり『予定の行動』だぜ。いや~、賑やかな咆哮や。それも屁垂れた・・」予想していたとはいえ、斜め向かい家の屋上に 揃って現れた、甲高い 4匹の犬の咆哮は、相当なものだ。
「ワン、ワンワン!ワン、ワォォ~ン!」 「マル」に率いられた 3匹「一太」「フゥ」それに「サンコ」の発する 中条の言う「屁の様な」吠え声は、それはかなりの音量。まずは、階下を行く犬連れ散歩人が標的になる。暫し 咆哮の応酬。散歩人が恨めしそうに見上げるも、結局は 多勢に無勢。諦めて スゴスゴと通り過ぎると、屋上の 4匹は、それを嘲笑う様に、例の甲高い吠え声で見送るのであった。さながら「早う失せろ。コノヤロ~!」という所か。
「わぁっ、ワンちゃんたち 良いねぇ!」寝室で休んでいた 由香・由紀(ゆか・ゆき)の木下姉妹も、バス・ローブを纏って現れる。「お早うございます!」 「ああ、お早う!黙ってても、流石に気づいたな」中条、笑いながら(勿論 苦笑!)姉妹を迎える。「元気やねぇ、マルちゃん お友達が一杯!」窓際に並んで立ち、外に目を遣った由香が言った。「うんうん、皆元気。広いとこ出られて 嬉しそうやわ!」由紀も応じる。
確かに、犬共の動きは 鋭いキレの様なものが感じられた。ポメラニアンの「一太」と「フゥ」、パピヨンの「サンコ」と、ここの主たる「マル」。やはりこいつは、群れというかグループを仕切る 親分風を吹かせている様だ。それと、公園でとは見違える動きを見せるのが「サンコ」。打って変わった活発さで、所狭しと駆け回る。それでいて、割合大きな動きの乱れは見せない。「やれやれ・・」歓喜する姉妹の傍らで、中条は呟いた。「アホ共なりに、統率は執れてますって事かよ。まあさ『オマル』がちょいと小狡いだけやと思うんやが・・」
階下を通り、4匹に「上から目線」で吠えつかれた散歩人が遠ざかると、次には やはり先日も飛来したらしい、鴉(からす) 4羽が接近中。この連中「マル」が屋上に出ていない時、たまに休憩している姿を見かけるのだが、この時は犬の群れがいる「異変」を察知してか「カァ、カァ。カァ!」と、まるで交信でもするかの様に鳴き声を交わし、急旋回して 元来た方向へと飛び去る。中条も薄々気づいてはいるが、これも近所の 城址公園の森に寝泊まりしている様だ。「マル」一派は、これにも抜け目なく反応した。「ウゥッ、ワン、ワォォ~ン!」散歩人よりは短めに吠えて威嚇するのが分かった。人語ならさしずめ「来るな、バカヤロ~!」という所か。
それにしても、屋上にたむろする犬共は 後がいけなかった。「ドッグ・ラン」よろしく、散歩人や鴉共が遠ざかり、視界から消え去ると、ひとしきりじゃれ合い、走り回った4匹は、あっちでも「ジョ~ッ!」こっちでも「ジョ~ッ!」と、一見適当に小水の放出を始めた。「お前ら 雄のハイキックなんて、見たくねぇんだよ!」ろくでもない体たらくを一瞥(いちべつ)した男は、こう呟く。「マル」はいつも通り、空調室外機の傍で堂々と片足を上げ、放水を見舞う。「終いにゃ腐るぞ!」 この室外機、中条が見ているだけで 数回は標的になっている。故障を拾うのは、意外に遠くないかも知れない。
その「不運」な室外機の少し奥の壁際で「一太」が片足を上げている。これも放水。少し外壁の突き出た所に、彼は陣地を見つけたらしい。やはり、居心地の良さそうな所は「マル」が抑えている様だ。雌の「サンコ」と「フゥ」は、ハイキックをしない。「これが雌雄逆やったら、もっと良いんだが・・」と、中条はくだらない想像をしたものだが、見方を変えると 足を上げないので「大」「小」どちらの用だか判然としない難点があるのも事実だった。
一方の姉妹。犬共が粗相の放水をしている事など意にも介さず「やっぱりなぁ、マルちゃんも お友達と遊んで転げ回っとる方が 幸せそうやな~」 「せやで~。マルちゃん あないに大勢連れて来るさかい、何や『徳』みたいなモン あるのやろうなあ・・」とまあ、これは 犬共の愛らしい所ばかりが目につくから、こういう事が言えるのだろう。因みに二人は、起床して小一時間後も、まだノーパンであった。時折 バス・ローブの裾をまくっては、魅惑の臀丘を、男の方にチラ見せして挑発するので 正直困ったは事実だ。
余り芳しくない体(てい)で、粗相を終えた犬共は、二手に分かれて屋上を巡っている。雌の「サンコ」と「フゥ」が、つるんでブラブラと屋上フェンスの淵をなぞる様に進んで行く傍らで、同じ屋上の中央近くに陣取った「マル」と「一太」は、互いに巴状の姿態を取り、各々の尻を追い回す「ダブルぐるぐる踊り」なるものを始めた。「あ・・アホか?」男は思わず 呟いた。「・・たく。前にも見たが、汚い面が、汚い尻を追い回してりゃ 世話ねぇ・・まして今朝は 2匹でやっとる。いよいよ手のつけられんアホに『退化』だわ~」雄犬 2匹の、彼の言う「気狂い踊り」に耽る様子を、暫しの間 唖然と眺める事に・・。
「さてさて・・」暫くして、中条が言った。「由香ちゃんに由紀ちゃん、いつまでも寝間着ではいかん。そろそろ着替えよや。今朝の朝飯は、俺の馴染みんとこ行くんや。あいつらなら、もうすぐ飯だろうからもつるんで下に降りるやろうな」 「はぁい、分かりやした。ほな由紀、用意しよか・・」姉の由香が答え、傍の妹・由紀も頷いて応じる。ほんのちょっとの間 寝室へ下がると、数分後には、着いた時と同じ ジーンズやロング・パンツ姿で戻った。それを待つ間、中条は このあり様を、鵜方病院にいる宮城に LINEで送った。
「宮城さん、お早うございます。ご機嫌如何?」 「お早う 中条、有難とよ。お蔭で、静かで極上の環境だわ~!」 「ああ、そりゃ良いね。因みにあいつらも、元気にやってますよ~」 「お~、そりゃ良い。余り調子こくと 松下さんに迷惑やから、程々になると良いなってとこだが・・」 「それですがね、宮城さん・・」 「うんうん、聞くぞ」 「松下さんちの『オマル』がしっかりリードしとる様だから、一応大丈夫でしょう」 「そうか、それなら良い。お前の話じゃ『マル』はアホっぽいから、ちと心配してたんだが・・」 「まあそれも心配無用じゃないですか?」 「分かった、有難と。俺、そろそろ朝飯前のシャワーだから、この辺で・・」 「はい、分かりやした。お大事に・・」交信ここまで。但し勿論、事実とは違う所もある。
「今日はさ・・」中条が続けた。「はい・・」 「何でしゃろ?」 返す姉妹に「まあ、あのアホ共ばかり観察しとるのも 能がねぇしな。10amから夕方まで、ちょっと市内の見所を 幾つか回ろうと思うんや」 「ああ、それよろしおすな。そやね~。ワンコの観察だけじゃ、そりゃ軽いさかい、丁度よろしわ~!」由香が答え、由紀も「同感でっせ~。あたしも、楽しみですわ~!」と合わせた。Sタクシーの、永野が迎えに来るまで 後小一時間。中条と木下姉妹が、彼の馴染みの喫茶店に出かける頃には、斜め向かいの犬共も、朝飯だろうか 揃って階下に降りたらしく、見えなくなっていた。
場面を 鵜方病院に戻す。入院中の宮城は、朝食前のシャワーをすっかり気に入っていた。眠気が飛び、余り華のない病院の朝食とはいえ、浴びた後は食欲も感じ、旨く食せる気がした。もう一つの理由、それは・・朝食を届けた美波が、生まれたのままの裸身で ほぼ毎回 シャワーの相手をしてくれた。又 その前後、眼前で繰り広げられる 白衣の脱着も、彼を魅了した。さしずめ「プチ・ストリップショー」といった所か。
この朝も同じ事。脱衣の上、宮城がシャワーを使い始めると、続いて 全裸の美波も入って来る。「美波ちゃん、今朝も宜しく・・」 「ええ、お任せを・・」そんな言葉を交わしながら、美波は 背後から宮城に寄り添う。背後に 豊かな胸の双丘の圧を感じながらのシャワーは、それは快いものだ。「いいぞ、美波ちゃん。ちょっと、動いてくれるか?」 「はぁい、只今。こんな感じかしら?」立ったまま 初めは背後から、次いで向かい合い シャワーを流しながら 暫し高め合う。
美波「あは、気持ち好いわ。喘ぐ時の、はしたない声が出そう・・」 宮城「おお、そうか。我慢せんと 声上げてくれていいけどな・・」 「ふふ、そうかしら。それなら・・」 ボディ洗いを終え、永しに入る宮城を応援しながら、なおも美波は 身体を押し当てて行く。「ああ、好いわ・・」 「俺もだよ。美波ちゃん、なるべくゆっくりやって欲しいな・・」 「ちょっとならイケそうよ。あ、ついでに触っちゃお・・」そう続けた美波は、宮城の竿(さお=男根)に手を回して摩って行く。「おお、好い感じ!これは朝から、抜かれん様にせんと。うぅ・・」彼の竿は、もう抜かれる寸前だ。だが何とか、寸止めにしたい想いもあり、揺れ動く。極上のマッサージに酔いながらも「昨夜の、小町先生との秘事は、まだ言わん方が良いな・・」と、ふと思ったりしていた。
(つづく 本稿はフィクションであります)
今回の壁紙 JR関西線 春田~八田間 名古屋市内に入る 特急「南紀」(物語中 特急「紀伊」のモデル) 2018=H30,5 名古屋市中川区 撮影 筆者
野呂一生さんの今回楽曲「エクセプション(Exception)」下記タイトルです。
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