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ちょっと入淫 第20話「朝会」

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部屋に運ばれた洋朝食を摂(と)りながら、宮城はまだ迷っていた。傍らに控える看護師・美波(みなみ)に、女医・小町と過ごした熱い時の事を伝えるべきか否か・・。この朝のメインは、前日のトーストに替えて オート・ミール。なぜか無性に、余り噛む必要のない献立(メニュー)が欲しかったのだ。「もしかして、お具合が優れない・・か?」食堂にいる時から、美波の脳裏に引っかかる想いだった。

「美波ちゃん、心配は要らんよ」彼は言った。「俺、日によっては 固いモノを食いたくねぇ日があってさ。今朝、内線くれた時に 一言入れて正解だったな・・」 「ホント、そうですわ。又今朝は、オート・ミールの用意があって 直ぐ都合できたのも幸運(ラッキー)でしたわね」美波も応じた。

宮城「所でさ。やっぱり 貴女の耳に入れとく方が良いかなと思うんだが、ちょっと時間はいいかね?」 美波「ええ、ちょっとの間なら よろしいですわ・・」 「分かった。・・で、昨晩 本荘(小町)先生から、夜の特別診察を賜ったんだが・・」 「ああ、特別診察ですか。よろしいわねぇ・・」 

宮城「有難と。まああの方も、内科・婦人科がご専門だと伺ったが、それに恥じねぇ巧者(テクニシャン)だな。お蔭で、寝る前に好い想いができたって事でさ・・」 美波「ふふ・・まあ、良かったじゃありませんか。一つには その為に、先生は宮城さんに特別個室入りを指示されたんじゃありませんの?」 「う~ん、そういう事か。それにしても、良かったなぁ・・」

短い時間ではあったが、宮城は 前夜の自室での出来事を、ざっと美波に語り聞かせた。聞き終えた彼女は「宮城さん、想像通りの展開ですわね。あたしは日勤だったから その時間はいなかったけど、想像はつきますね。どう、随分濃厚な診察だったんでしょ?」と訊いた。宮城は「ああ、そんなとこ。熱くて濃い診察だったな。もう一度あると良いな・・な~んてな!」会話が区切られると、二人は 顔を見合わせて笑った。宮城、前日に続き 朝食を完食。

少し後、内線が鳴る。小町からだ。「はい・・」 「本荘です。もうすぐ当直明けだけど、ちょっとだけ 宮城さんとこへ寄ろうかな・・」 「ああ、有難うございます。お待ちしましょう」 内線が区切られると、美波は「あたし、ちょっと食堂まで片付けに行って来ます。又、後でね・・」 「有難う、宜しくです・・」

程なく、小町が病室へ。既に 白衣から夏物ブラウスと長めのパンツ・ルックで 普段見るのとは異なる雰囲気だ。余り妖艶さを表にせず、隙のない感じだ。前後して、美波も戻る。「当直、お疲れ様でした!」宮城が言った。小町も「有難う。夕べは大きな問題もなく、あたしも 学会向けの用事とかが処理できて、好い時間でした」と返した。

小町「ついでに・・」 宮城「はい・・」 「貴方の『白い情熱』の検査もさせてもらったわ!」 「ああ、そりゃ光栄だ。・・で、結果とかお訊きして良いのかな?」 「ええ、凄いわよ。宮城さんのそれ、二十代の若者と大差なかったわね。精子の数も活性も十分だし」 「ああ、そりゃ恐れ入りやす。つまりまあ、俺は勢力絶倫に近い様ですかい?」 「はい、その通り!他の項目共々 極めて優良よ。ただ、肝機能がちょっとだけ怪しいから、そこは今度の月曜朝に、もう一度検査って事で・・」 

宮城「うーん、そうですか。それによって、退院時期が決まるっで感じですね?」 「まあ正直な所、その時の採血だけはして欲しいって事。詳しくは さっき内科部長と話して 前日の日曜に決めるけど、まず月曜午前には 退院できそうな感じよね」 「なる程、分かりやした。まあ用心して、月曜午前に出られる様努力しますわ。お蔭で病室は快適だし、テレ・ワークって言うんですか、スマート・ホンやタブ端末で 仕事も相当までできるけど、やっぱり家と自社工場の様子が気になるんでね・・」宮城は、そう結んだ。

小町「お望みは聞きました。それ目標にしましょうね。その前に・・」 宮城「はい。検査の他に、何ぞあるんですか?」 「ふふ・・もう一度だけ、特診をしようと思うの。今夜じゃないけどね。場所と時間は、今日中に知らせます。これ、美波にも立ち会ってもらうから、宜しくね」 聞いた美波は「分かりました。詳しい所は 後程・・ですね」と、微笑んで返した。宮城も、無言で頷く。

そうこうする内 9am。ナース・ステーションでの、そして内科部長に対する引継ぎを経て、小町は一旦 病院の戦列を離れる。次の日曜は休み。月曜は午前出勤で、月曜午後は 予備校・佐分利学院の養護課詰めの予定だ。「じゃあ、又 ここは月曜の朝に。上手く行けば、退院の朝かしら?」 

宮城「改めて、昨夜からお疲れ様でした。そうですね、月曜午前退院を目指すって事で・・」 「もう聞いてるだろうけど、午後に 内科部長の回診がありますから。その時は、美波も立ち会うからね。何かあった時も、彼女まで宜しく」 「はい、有難うございます!」小町は退出、美波は次の患者の所へ流れ、宮城も ロビーで新聞・雑誌をチェックの為、病室を出た。

「あぁ、バカだなぁ・・」 同じ朝、例の犬共の咆哮で目を覚まし、そいつらの「愚行」を小一時間に亘り楽しんだ。由香・由紀の姉妹と中条も、彼馴染みの喫茶店まで 朝食に赴く。中京圏ではよく見られる 格安のモーニング・セットが目当てだ。トーストや茹で卵、果物やサラダ・バーの利用などが付く。

「うんうん、この朝食が好いんよ。特に中京圏のはお得なんやで~!既に様子を知る、姉の由香が説明に。由紀も「せやなぁ、薄々は知っとるけど、やっぱり『百聞は一見に如かず』やて~!」と応じた。世話好きな店主に、変な想像をされても困るので、中条は「姉妹とは、散歩中に偶然出会った」などと適当に経緯を伝えた。

雑談や 新聞雑誌のチェックを兼ねて朝食から戻ると、もう 9am過ぎ。「伯父様、永野さんが来られるのって 10amやったわね」姉妹が訊くと、中条は「そや。後、半時位やから 適当に TVでも見てゆっくりしててくれ。おおっと!又 あいつらも、出て来てるな・・」斜め向かい家「松乃家」の屋上には「マル」以下の犬共 計 4匹が、又も姿を現している。TV番組チェックの一方で、窓外で『アホーマンス』を晒す連中も、併せて観察しながら 待ち時間が過ぎた。

「そろそろ、降りようぜ・・」中条の合図で、三人は上シャツや夏ブラウスに、ジーンズや綿パンなどのアンダー、それにウォーキングやスニーカーを履いて部屋を施錠、階下の駐車場へ。10am少し前 やって来たのは、些か「場違い」な 黒塗りのレクサスLSだった。「お早うございます。今日は、有難うございます!」運転席から、聞き慣れた運転手・永野 光(ながの・ひかる)の挨拶を聞いて、三人は少しホッとした。

「永ちゃん お早う!」 「永野さん、お早うございます!」姉妹と中条も応じる。そして「今日は宜しく。それにしても 凄いなぁ!」 「ホンマ、凄いですやん。これ、父も乗っとるけど 要人さんの乗らはる特別車と違いますの?」普段と違う高級車の登場に、三人は少しだけ驚いた。

夏の制服(ユニホ)上下に 黒靴姿の永野「驚かしたのはご免なさいね。でも、ここだけの話・・」途中から、声を潜める。「はい、聞きましょう・・」姉妹と中条が返すと「実はね、本当に 皇族方や政府とかの要人様向けの車なんです。車体周りは防弾仕様ですし・・」と、永野は続けた。「おおっ、やっぱり!流石は 永野さん・・」三人、驚きを新たにした。彼の普段の「相棒」は、これも黒塗りの「トヨタ・カムリ」だが、この日は偶然、要人仕様に空車が生じた為との事だった。普段の車は、一日がかりの点検整備に臨んでいる由。

「内装も凄いなぁ。絶対、汚したりできんぞ。なぁ、由香ちゃんに由紀ちゃん・・」前席に乗り込む中条、声をかけ。姉の由香「ホンマ、そうでんなぁ。お父(ト)ンの車は、本革(シート)やったっけ?」と返せば、妹の由紀も「ただ驚きや。父のはねぇ、確か本革やなかった様な・・」と応じた。「永野さん、お世話になります!」 「はい、有難うございます。どうぞ!」後席右に由香、左に由紀が乗り込み、制帽まで纏った永野の運転で 荘重に出発。

「流石(さすが)やな。ハイ・ブリッドはホント、静かだわ」スタート時や高速域など、高級車は元々遮音が行き届いていて 静粛さに優れたのが多いも、この日永野の駆るレクサスは、孤高と言っても大袈裟に聞こえない程 飛び抜けていた。アクティヴ・サスペンションの威力もあって、揺れも余り気にならない。それと、後席で独自に空調(エアコン)を調節できる事が、姉妹を喜ばせた。

由香「由紀、これ お父んの車と一緒でさ。あたしらの席で風の加減できるさかい」 由紀「うんうん、やっぱり好いなぁ。冷房弱くて良い事もあるしさ」これ以外にも、同じ後席で TV画像が見られたり、飲料を冷やす小型クーラー・ボックスなどなど、至れり尽くせり 何でも有りの風情であった。

「初めは、俺の趣味で悪いな・・」と中条。城址の近くの I.Cから都市高速道路に乗り、東→南→東と進路を変え、長めのトンネルも現れる行く手。途中からは別の自動車道も経て、半時余りで最初の行先 T自動車博物館へ。車の歴史が流れる様に分かるこの場所は、一度は訪れた中条が、再訪を狙っていたもの。多くが集まる、各国の年代物ヴィンテージ・カーの 年季の入った重厚な姿には「こないなアンティークもええなぁ!」と、姉妹も関心を見せる。自動車の歴史は 流石に永野の方が詳しく、良き案内(ガイド)役を果たした。

2時間弱の見学を終え、館内の施設での昼食に向かう途上、案内の永野に続いて歩く中条は、由香に声をかけられる。「伯父様、ちょっと・・」「うん、何やろ?」「実はね・・」追いついた彼女は、後ろから そっと男に耳打ちを始めた。「次の行先まででよろしから、あたしらの真ん中のお席に 来てくれはりまへんか?」「二人の真ん中へ・・か。ま、そりゃ良いが・・」聞いた彼の脳裏に、姉妹の企みが ボンヤリと浮かび上がる様だった。
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 JULIA
野呂一生さんの今回楽曲「サファイア・スカイ(Sapphire Sky)」下記タイトルです。
Sapphire Sky

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