2ntブログ

記事一覧

ちょっと入淫 第29話「夕悦」

1451563228_1.jpg
鵜方病院の 静かな日曜夕方。各階の病室は、一部を除いて入院患者で満室に近い状況のはずだが、この日午後の上階ロビーは、そんな事を感じさせぬ程、落ち着いた静けさを湛えていた。人の気配がない訳ではなく、平日には確かにある活気が 余り感じられなかったという事らしい。勿論それには 平日はひきも切らず頻繁に出入りする、通院の外来患者が訪れない事もあったが もう一つ・・長期の入院で、寝たまま起き出して来られない 認知症などの重症患者が少なくない事によるのかも知れなかった。

「まぁ、寝たきりになるよりは・・」この日午前、複数の新聞や雑誌をチェックした同じ上階ロビーに出た宮城は、こう呟いたものだった。「検査でも大した異常はなく、明日午前には帰れるのだからな。まあ、幸運(ラッキー)な方さね・・」 入院の間、身辺の雑事を担ってくれた研修看護師 瀬野美波も当直を終わって不在となった静かなロビーで、眼下の景色に目を遣ったりしながら、彼は小一時間を過ごした。

5pm過ぎから、早めの夕食。食堂の係員たちも、宮城が今朝から堅い食品を嗜(たしな)まない事を知っていて、粥(かゆ)を用意してくれていた。「ああ悪い、有難とよ・・」料理を受け取り、以前から知り合いの 数年程年上の男性入院患者と、適当に談笑しながら食事を進める。

「まあお蔭で、明日の午前で退院の見通しになりましたわ」宮城が言うと、聞いていた年長の男も「それは良かった。同じ肝臓でも 俺はちょいと厄介なんだが、今週一杯様子見で、上手くすりゃ帰れそうだよ」 「まあ、大事に行って下されよ。退院が近い事、私(あし)も祈ってますよ」 「有難とよ。まあ、お医者さんの忠告に逆らわず、もそっと我慢ってとこかな?」 「そうそう、それがいいですよ・・」作務衣(さむえ)の様な 淡色の入院着姿の 二人の男は静かに笑い合った。

6pm少し前、自室の TVで報道番組を見る為戻り、応接ソファに落ち着いた時、宮城の携帯(スマート・フォン)が反応した。美波を伴い、都心近くの総合予備校・佐分利学院養護課にいた女医・小町から LINEの受信。画面には「この後 6:30pm過ぎに、貴方を迎えに病院へ戻ります。外出許可は下りているので、気にしないで。服装は、入院着に上着でも OKです」 「了解、ご連絡感謝。お待ちします。後程・・」返信した宮城、やはり外出着に替える事にした。「やはり、院外で何かありそうだな。まあ、お任せでいいんだろが・・」まだ少し間がある。折角の TV番組。なるべく後まで見ながら、階下に降りる準備をする。

学院本校舎から程近い、女医・小町馴染みの和食処で夕食を済ませた三人は、予約した Sタクシーのワン・ボックス車、黒塗りのトヨタ・アルファードで一旦鵜方病院へ。待ち合わせた入院患者・宮城を乗せる為だ。初めは、この病院でも好印象の主任運転手・永野に頼みたかったのだが、生憎この日の同時刻、彼は非番の為、その後輩の運転手・水谷 卓(みずたに・すぐる)がこの任に当たる。永野より更に数cm上背があり、彼に似た印象の 体育会系的明るさを持つ男だ。

「本荘先生、今日は有難うございます!」 店外に出た小町たちを見つけるや、直ぐに運転席から飛び出し、丁重に挨拶。「水谷君、悪いわね。宜しくです・・」 「いえ、こちらこそ!」 案内を受け とりあえず、中列の右側上席に小町、その隣に美波、前列助手席に豊が着座。これを確かめて、水谷は静かに発進して行く。

彼は続けた。「今日の日中、小社(ウチ)の永野から お話は伺っております。まず、ご入院の宮城様をお迎えして、先生のお住まいでよろしかったですね?」 小町「ええ、その通りよ。宮城さんには 病院階下へ降りてもらう事になってるから、そんなに時間はかからない。後、帰りの事だけど・・」 「はい・・」 「今の感じだと、用件が終わるの 日付が変わる位になりそうね。時間が分ったら、又連絡するから宜しくね」 「かしこまりました。遅番ですし なるべく自分が参る様にしますが、大丈夫です。それができない時は、必ず代理が参りますので」 「悪いわね。お世話になるわ」 「有難うございます。間違いなく承ります!」

JR中央駅西の、新幹線発着プラット・フォーム側を発ってものの数分とちょっとで 車は鵜方病院へ。既に階下ロビーに降りていた宮城を拾う。「小町先生、お世話様です。これから暫く、病院外診察だって伺ったもんで、これでいいんですよね・・」些か訝(いぶか)る様に、宮城が訊く。これに対し、小町「ええ、確かに病院外診察でね。詳しくは、一緒に行けば分かるわよ」 「了解、まぁそれは、いいでしょう・・」

返事をしながら車内を見回すと、中央列に美波の微笑む姿も認められた。それから豊が、前席から一旦降り、宮城に挨拶。「初めまして、T高校、それに佐分利学院高等科に通う、豊野 豊(とよの・ゆたか)と言います。どうか宜しくお願いします!」 「おー、豊野君な。話は聞いとる。俺や中条の後輩だろ。宜しくな」 齢の差はあるも、同じ学校のよしみもあり、宮城と豊が打ち解けるのに、そう時間と手間は要さなかった様だ。

「良いですねぇ。美波ちゃんも一緒か。こりゃいいや・・」 簡単な挨拶を終え、宮城は二列目右側の上席へ。左隣が美波、直ぐ後ろに小町が座る。豊は引き続き、助手席だ。「そうか、永野君は今の時間、非番なんだ。けど Sタクは好感だな。彼の他にも、今 来てくれてる水谷君他、優秀な運転手(ドライヴァー)が揃ってるらしいから 安心してられる。そうだな、水谷君!」 「有難うございます。そうですね。いつも『その通りです』とお返しできる様、頑張って行きます!」まだ若い彼は、気負ってそう答えた。

盆明けの日曜夕方のせいか、交通量は少なめ。ものの 10分程で、車は N城址に近い、小町の居所の入る高層マンションの構内に入った。鵜方病院上部の医師たちも認めた、外出先治療の一環とて、タクシー運賃も 病院のチケット払い。小町がその処理を済ませ、謝意を述べて走り去る水谷運転手と挨拶を交わし 見送ると、4人はそのまま EVで上階へ。その南東角の、本来は家族向けの 3LDKはあろう広い一戸が、小町の居所である。

「豊野君は、寮みてぇなとこに入ってるんだよなあ?」宮城が訊くと、豊は「はい、まあそんなとこですね。一応は、両親の知人のとこですけど、賄い付きで住まわせてもらってる感じです。ただ、今日の夕食は 本荘先生にご馳走になりましたですが・・」 「ああ、そうか。するってぇと、今みてぇな夏休みとかの長休の折や 三連休とかに親御さんとこへ帰る訳だな?」 「はい、まあそんな感じですね。・・で、将来は家業の漁業を継ぐ事も 視野に入れてますんで、帰った折は よく親父の漁船に乗る事もありますね。自分ももう、小型船舶の免許を取りましたし・・」 

宮城「ああ、そりゃいいね。前向きなのは良い事だよ。M県の外海のあの辺は、ホント良い土地だよな。時間できたら その内訪ねてぇって想いもあってな」 豊「・・ですよね。ホント、中条の伯父さんとご一緒に覗いて頂きたいですよ。親たちもきっと歓迎だと思いますよ」 「有難とよ。まあ今は、それができる様、お互い頑張ろや!」 「はい、勿論です。自分もやりますよ!」 そんな会話の内に、小町から「宮城さん、先に美波とお風呂入って下さいな」との声が。「入浴ですね。はい、分かりました!」宮城は、美波と共に 素直に応じた。

「ねえ、宮城さん・・」共に 脱衣場所に来た美波が囁く。「はい、何ぞ?」彼が返すと 「やっぱりさ、ここでも見たい・・でしょ?」と、薄手ノー・スリーブのブラウスに両の手をかける。「よしっ、ちょっと待って・・」 宮城も、その裾に右手を添える。「見てるだけじゃ能がねぇ。応援したげるよ!」 「ふふ・・『エッチな応援』でしょ?」 「ハハ、まぁね・・」宮城はそう返し、美波のブラウスに続き、アンダーの デニム地の長めパンツ、ブラ、の順で脱ぎ取らせて行った。次第に現れる、程良い豊かさと まあ締まった括(くび)れによる、佳き体線。「ホント、プチ・ストリップそのものやな・・」

「あたしね・・」そしていよいよ、ショーツとサスペンダー型パンストを脱がせる折、美波は言った。「はい、いいよ。聞こう!」些か上気し始めた、宮城が返す。「お風呂の後は、下着を替えるつもりなの。それは、抜群に貴方好みのはずよ」 「おー、そうかそうか。そいつは楽しみ。ならば浴室じゃ、貴女を努めて丁寧に扱わんといけませんな」 「はぁい、お願いします。期待してるわ・・」そう美波の返事が聞こえると、二人は それが当然という風情で裸体を寄せ合い、唇を合わせる。「さあ、夢の夜の始まりよ・・」 「うんうん。好い時にしような・・」睦み合う様に、美波と宮城は 広い雅(みやび)な浴室へ。同じ頃、少し離れた中条の居所でも、由香と彼が、似た様な感じで入浴を始めたのだった。(こちらは「そう広く」とは行かなかったが・・)
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の壁紙 JR名古屋駅傍 ミッドランド・スクエア上階から臨んだ 名古屋城(物語中 N城址のモデル)夜景 名古屋市中村区(名古屋城の所在は中区) 2015=H27,12 撮影 筆者
野呂一生さんの今回楽曲「トレジュア(Treasure)」下記タイトルです。
Treasure

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hakase32

Author:hakase32
愛知県在住の後半生男です。恐れながら、主に18歳以上限定内容を記して参ります。

お手数ですが、拙各稿を初めからお読み下さる場合は、下方にあります月間アーカイブ他のご利用をお願い致します。
他ブログを含め、拙記事の無断転用及び引用は ご遠慮下さい。

下記ランキングに参加しております。
クリックをお願いできれば幸いです。

官能小説ランキング

アクセスカウンター

愛と官能の美学

Shyrockさんの R18読み物集。他の作者各位も多数リンクされています。入口は、下記タイトルです。

赤星直也のエロ小説

赤星直也さんの R18読み物集。入口は、下記タイトルです。

未知の星

赤星直也さんの R18読み物集もう一つ。他の各位の作品も収録されます。

Mikiko's Room

Mikikoさんの、カテゴリー豊富な R18読み物集。独自視点の旅日記も好感です。

Adult Novels Search

R18 読み物の検索サイトです。

ブロとも一覧

拙バナーです

知人様より、優れたバナーを賜りました。必要時はご利用を Produced by Shyrock

もう一つの 拙バナーです

知人様ご厚意により、拙バナー追加編も賜りました。必要時はご利用を。 Produced by Shyrock

清き一票を(笑)

下記ランキングに参加しております。

日本ブログ村バナー


にほんブログ村 →できますれば、こちらも応援を・・

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

月別アーカイブ

これまでの拙連載「想いでの山峡(やまかい)~林間学級の秘密(2016=H28,9~10)」と「轍(わだち)~それから(2016=H28,11~2017=H29,2)」  「母娘(ははこ)御膳(2017=H29,3~6)」  「南へ・・(2017=H29,6~8)」 「交感旅情(2017=H29,9~12)」 「パノラマカーと変な犬(2018=H30,1~5)」  「ちょっと入淫(2018=H30,6~10)」 「情事の時刻表(2018=H30,11~2019=R1,6)」 「レディオ・アンカーの幻影(2019=R1,11~2020=R2,5)」 「この雨は こんな風に聴こえる(2020=R2,6~2021=R3,3)」も お読み頂けます。