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ちょっと入淫 第45話「退院」

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明けて 8/21月曜、曇りの朝。前日よりはやや蒸し暑く、夜間も空調(エアコン)が止められないレベルではあった。中条 新(なかじょう・しん)の居所にての「夜の行事」は、結局男女入れ替わりの後、初めと同様に昇り切って幕となった。TV画面をチェックしがら眠りに就くつもりだった中条は、結局は由香を上に重ならせたまま、余り熟睡する事なく朝を迎えた。もしかすると、騎乗位で繋がったまま眠ってしまった可能性もある。

「ハハ、由香ちゃん お早う・・」 「ふふ、伯父様も、お早うございます」 6am前に目覚めた二人は まず、普段の挨拶を交わした。但し・・「結局何かい?下半身はだけたまま寝てたって事だな・・」中条が苦笑しながら呟くと、由香も「ちと嫌な感じもやけど、そないな事ですね。まあ、由紀も光(ひかる=永野 光の事)さんも見てぇへんからよろしけど・・」

その会話が区切られない内に、斜め向かいの上階から、中条が「屁の様な」と揶揄する 犬共の甲高い喧騒が聴こえて来る。男が「まあさ、うぜぇのは事実だが、それも今朝までだ。大目に見てやるか・・」と呟けば、聞いた姉も「左様(さよ)でんね~。又 今日からは、マルちゃんひとりって事かぁ・・」と、名残惜しそうに返した。「シャワー行くか?夕べ、そのまま寝てまったもんな」 「うんうん、よろしですね。ほな、ご一緒に・・」脱衣した二人は、浴室に消えた。

実はこの朝、目覚めたのは、投宿していた永野の方が先だった。約束通り、男女の行為を完遂し、由紀の体内にきっちりと射精を施した彼は「いつでも見て良いからな」と中条から許されている、狭い「書斎」の様な部屋を見渡していた。事務机が一台、隣り合って ノートPCやその周辺機器、余り使う必要もなさそうな、小型のソファ・ベッドと補助椅子、小卓が各一台。二台ある本棚の隅には、阿久比 周(あぐい・あまね)や、前夜から女医・小町の居所にいる豊野 豊(とよの・ゆたか)の様な若衆が泊まる場合に備え、寝袋が収納されている。この部屋の天井には金具(フック)が複数備わり、気分により 寝袋のストラップを吊って ハンモックとして使う事もできた。

その金具の一つが付く傍の鴨居に、中条が詩を書いた色紙が掲げられていた。勿論これは、さっきから騒ぎ出した 斜め向かい家の犬共を揶揄した内容・・つまり狂歌である。詩の下りは 次の通りである。

「目を盗み 狼藉かます 虚(うつ)け犬 それにつけても 質(たち)の悪さよ」

「ハハ・・」一読した永野は、静かに笑った。「マルの事だな。これは・・」 そして「それにしても・・」と想い続けた。「確かここには、(伊野)初美先生もお出入りのはずだが、大丈夫なんだろか?」 だがまぁしかし、それは初美と中条の 個人レベルの問題だ。これ以上は立ち入らぬがよろしい・・と、彼は判断した。

小部屋を出て、一度居間の隅を通り、寝室へと戻る。由香と中条は、浴室でシャワー中の様だ。話し声と、時折の嬌声が聴こえてくる。前夜、濃い交合で大いに喘いでくれた由紀は、まだ夢の中。下着の様な着衣の下方は、姉と同じく裸である。永野も起床前はそうだったが、今はトランクスだけは着けている。斜め向かい家の屋上に出た犬共は「ワン、ワンワン、ワォォ~ン!」相変わらず盛んに咆哮している。

「お早うございます!」目覚めた由紀と、挨拶を交わしたのは それから十数分後。シャワーを終え、由香と中条がが朝食準備に入った様だ。二人のいる厨房へも挨拶、6am代後半には、準備が整った。「さあ、今回最後の食事だな。慌ただしかったけど、濃くて良かったよ。二人は、大坂の家に着くまで気をつけてな・・」中条は、姉妹に言った。「おおきに、有難うございます!」明るい反応が二つ、返って来た。

「さて皆さん、ちょっと早いですが・・」先に飲食を終えた永野が切り出す。「うん、悪いな・・」中条が返すと 「あ、いいえ・・とんでもないです。自分はこれから、お二人を中央駅までお送りするんで、車を出して来ますから。8amの出発でしたよね」 「無理言って済んまへん!仰る通りです!」姉妹、頭を下げながら返す。中条「永ちゃん、有難う。そいで、もう分かってるだろうけど、俺の車は商品積む関係で もう会社行ってるんで、戻ったら 俺ん場所停めれば良いよ」 「はい、有難うございます!」そう返し、永野は一旦 己の居所へ。

「さぁて、片付けるか・・」中条は呟き、処理を始めると、姉妹に「今回の最後だからさ、屋上に出てる犬共を見たってくれや。どうせ後少しで朝飯だろ。それが済めば、もう上がって来られねぇだろうから。宮城さんが今日午前退院だから、今の内だろうな・・」と言い「狂態」を見る様促した。聞いた姉妹も「有難うございます。ほな、心残りない様、見させてもらいますよってに・・」と応じ、コーヒー・カップを携えて窓際へ。外では引き続き「マル」以下計四匹による騒ぎが続いていた。合間に片足上げての「放水」を伴ったのが遺憾ではあったが。

「お待たせしました!」自身のワン・ボックス車「トヨタ・ノア」で戻った永野が再び姿を現したのと、中条の携帯(スマート・フォン)への SNS着信がほぼ同時。「有難とよ。永ちゃん、コーヒーのお代わりでも飲んで ちょいと待ってくれるか?」 「かしこまりました。遠慮なく・・」永野が一服の間に、中条は、実妹の専務から届いた電文をチェック。

「皆さん、大変悪いが・・」中条、居間のソファでコーヒーを嗜む永野と、窓際の姉妹に声をかけた。「はい、聞きましょう」三人が応じると 「今、会社から連絡あってさ。駅の見送りで 9am出にしてあったのが飛んで、普段通り 朝礼から出よって事になったんだ。だから永ちゃん、申し訳ないが、二人を中央駅まで連れてってくれると有難ぇな」と続けた。聞いた永野は「ああ、いやいや OKですよ。自分はそのつもりでしたから。何でしたら、プラット・フォームまでお見送りします。後少しで、出た方が良いですね」 「ホント、重ね重ね悪い。そうしてもらえれば、非常に有難ぇ!」 「いや とんでもない!自分もですが、新さんもどうか本業を優先して下さい。朝礼が抜けられないには、多分大事な案件があるからじゃないですか?」 「うんうん、有難う。その可能性大だよな」

そうこうする内に 7:30am少し前。木下姉妹が、中条の居所を辞す時が来た。持ち物を纏(まと)め、窓外をチラ見すると、もう犬共の姿は消えていた。商家の玄関先には、店用のワン・ボックス車「トヨタ・ハイエース」が姿を見せている。この後、宮城から預けられていた「一太」「サンコ」それに「フゥ」の 3匹をそれぞれの籠(ケージ)に収め、載せる準備に入るのだろう。

中条の駐車場所に収まった、永野の車に乗る準備をしていると、どうもそれらしい一行が出て来た。動物用らしい籠が三つ、旦那親子と若女将に担われて、車の後方に載せられる様が見えた。傍らで「マル」が落ち着かぬ様子で「ワン、ワン!」と吠えながら付き纏っているのも、来た時と大体同じだ。

「さらば、バカ犬愚連隊・・」中条が呟(つぶや)く傍らで 「ワンコたちの帰る様子も、見られて良かったですね。さあ、行きましょう!」前席に彼、後席に姉妹が荷物と共に乗ったのを確かめ、永野は慎重に車を発進させる。ものの数分足らずで、中条の勤務先。「永ちゃん、悪い。有難と!姉妹さんの事、宜しく!」 「こちらこそ、お世話様でした。後は任せて下さい!」 「うん。気をつけて!」 「有難うございます!」車内から、三人の謝意が唱和された。ゆっくり発進、遠ざかる車の後ろ姿を見遣って、中条は社内へと向かった。

姉妹が 大坂の親元へ戻るべく発った同じ頃、前夜遅くに病室へ戻った 宮城一路(みやぎ・いちろ)は、ゆっくり目を覚ました。遅めの朝食は、小町の指図で係員(クルー)たちも分かっている。そろそろ食事に向かうかと思った 8:30am過ぎ、病室の内線が鳴った。「美波です。お早うございます!」 「ああ、お早う。ホント早いな。夕べあれだけ遅かったのに・・」 「ああ、いえいえ。大丈夫ですよ。今朝は、ここの最後のお食事ですよね」 「そやね。名残り惜しくもあるが、そうなるかな?」 「はい。それじゃ、少し待って下されば、お部屋までお持ちしますわ」 「そうですか、そりゃ有難ぇ。お言葉に甘えます」

美波が洋朝食を携え、宮城の病室に現れたのは、それから 10分程後。もうまったりとシャワーを使ったり、ベッドで優雅な時間を過ごす余裕はないが、食事を嗜みながら雑談に耽る時間が持てるだけでも、良しとしなければならないかも知れない。「ホント、入院中はお世話サマー!」宮城は、白衣姿で控える傍らの美波に 心から一礼した。「いいえ、こちらこそ!一路さんからも、色々教えられる事があって、良い時間でしたわ」美波は、美しく笑って応じた。

彼女は続けた。「この後 9:30amから、小町先生が来られて採血をされます。それが済んで一服したら、晴れてご退院ですからね。後一息です。それまで ちょっと頑張って・・ね」 「了解ですよ。小町先生と美波ちゃんだったら、大抵の無理は聞きますって!」宮城も笑いながら返す。当然であるかの様に、又も二人はにじり寄り、その唇が重なった。

朝食が終わると、直ぐに小町が現われた。同じく白衣姿。予告通りの採血と、薬の処方が告げられ、退院時刻が 11amである事も伝えられた。「どう、名残り惜しい?」小町が訊くと、宮城は「まあ、それもあるね。何せ、短い間に 色んな事があったから」と返す。「ふふ、まだ通院があるから、お目にかかる機会はあるわね」小町が続けると 「ああ、通院ね。忘れん様に来んといけませんな」宮城も、笑い返した。小町「もし、貴方が良ければ、又いつか こんな機会を持ってもよくってよ」 宮城「有難うございます。とりあえずは、お気持ちだけ承るって事で・・」

予定通り 11am、宮城は退院の時を迎えた。病室にて待機の間に、会社の留守を預かっていた 山音(やまね)エコロジー社より、入院中一切異常なしの報を受ける。「有難うです。留守中は世話になった!」宮城は、先方の山音社長に SNSで丁寧に一礼した。着替えて持ち物を纏め 階下のロビーへ降りると、院長以下 病院の主な面々が見送りに集まってくれていた。美波から花束が贈られ、院長から退院祝いの挨拶がなされる。宮城も答礼、玄関へと向かう。正面車寄せには 既に永野運転手の駆る Sタクシー、トヨタ・カムリが到着。「宮城社長、ご退院おめでとうございます!」永野の助けで、後席へと滑り込む。「皆さん、感謝です。これからも頑張って!」宮城、病院一同に挙手の礼。「宮城さんも、お大事に!」一同からも、大きな一礼が。それらを振り返りながら、彼は病院を後にした。
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 小島みなみ
野呂一生さんの今回楽曲「ヴァーチュアル・ライフ (Virtual Life)」下記タイトルです。
Virtual Life

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