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ちょっと入淫 第46話「点景」

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「あぁ、バカだなあ・・」と、今度は中条の方が揶揄される番だった。宮城の退院から 10日。8/31の木曜午後、彼たちと Sタクシー主任運転手の永野は 再び N市副都心の、金盛(かなもり)公園に集っていた。宮城は夏の平装、他の二人は同じく正装。この夏は 8月も下旬に至ってようやく安定した晴天が続く様になり、この日も まだ蝉(せみ)の声を聴く暑さではあったが、晴れに恵まれた。湿度もそう高くはなく 夜間も不快な熱帯夜とはならず、立ち木や建物の陰に入れば何とか暑さも凌げるレベルになった。それを待っていたかの様に、街中でも「アキアカネ」と呼ばれる赤蜻蛉(とんぼ)の姿が 少しずつ目立つ様になった。

月末もあって、己の会社の会計締め処理などを控える宮城は いつもより少し早めに昼食を済ますと、直ぐに習慣にしている 近隣の空き缶回収に赴き、金盛公園へは 1:30pm前後に着いた。勿論 使い込んだ婦人自転車と空き缶を入れた大型ビニール袋は必須で、背後には 例の犬共三匹を従えていた。盆前と違って、もう不快な暑さではない。汗にはなるも、公園の木陰に滑り込めば それなりに心地よく、従う犬共「一太」「サンコ」「フゥ」も 真夏よりは元気と余裕が感じられた。

ベンチに落ち着いた 10分程後、中条が現われた。勿論 10日前の退院時、SNSにて祝いの挨拶は済ませている。「宮城さん、お疲れ様です。経過は如何ですかい?」振り返った宮城と顔を合わせた彼は、軽く一礼して ざっくばらんな感じで訊いてきた。「ああ、応援有難とよ。帰る日に採った血液検査でも、異常値は小さかったな。後はよ、もう一つの『夜の診療』の事で、お前にも話があるんや。意味は分かるな?」宮城はそう返すと 一旦ニヤリと笑みを浮かべ「まあ詳しくはよ、もう直ぐあの『彼』も来るから、揃ってからにしよ・・」そこまで続けた時、右手から「フィ~ッ!」と、一際甲高い列車の警笛が発せられた。

中条は言った。「南隣、美波さんや豊君と同じ県の工業地帯から 北方 G県向けの燃料列車だな。これね、昔の国鉄期の電機が 2機重連で先頭に出るんで、鉄道ファンには人気らしいですね」 「ああ、俺も見る事あるよ。同じ機関車でも 2機いると勇壮だよなぁ・・」宮城が呟くその眼前を、旧国鉄 EF64(1000代)型電機 2機重連に率いられた油槽車の 14両編成が通り過ぎる。先頭の機は「JR」の白表記以外は、旧国鉄時代のままである。

「皆さん、お疲れ様です。日頃は、有難うございます!」もう一度の警笛一声の後、燃料列車が左手に消えると 入れ替わりに永野が現われた。宮城「永野君もご苦労様!退院の時は世話になったな」 永野「いえ、こちらこそ感謝ですよ。中条さんも、この前はお世話様でした!」 中条「ああ、いやいや。もう毎度のって事でさ。今から休憩かい?」 「ええ、今から状況が許せば小一時間ですね。次の予約が 3時過ぎに JR金盛駅前ですんで、それで郊外まで往復して 社に戻ったら、夕方からは月末締めの処理に合流して夜までって感じでしょう」 「お~、そうか。俺たちも月末締め抱えてはいるんだよな。お互い様・・か」永野の話を聞いた、宮城と中条もそう反応した。

宮城の犬共の内、ポメラニアンの「一太」と「フゥ」は もう顔も見慣れたらしく、中条に永野と認めるや 小走りに寄って来て、それぞれの足元に座り込みを決めた。もう疑ったり訝(いぶか)ったりする風情はない。もう一匹、パピヨンの「サンコ」は相変わらず宮城の傍らで蹲(うずくま)っているが・・。「迷いがなくなりましたね。もう我々は信頼されてるんだ・・」永野が呟くと、中条も「まあ そうだろうな。何せ 犬の嗅覚は、あらゆる生き物で群を抜いとるって話だ。人間の何万倍、百万倍違うって見方もある程でな・・」 「なる程・・」じゃれつく二匹を適当にあしらいながら、二人はそう短く言葉を交わした。

「それでよ、それにしても・・」と宮城は切り出し、冒頭の言葉を呟いた。そして「初めのつもりじゃさ、小町先生や美波ちゃんと『夜の診療』じゃ、お前も知ってる『男女の深い行為』になりそうな事、何となく分かってたんだ。だから・・」一旦、言葉が区切られる。中条が「はい、と仰ると・・?」と返すと 「だからさぁ、頃合いを見てお前も呼んで 2by2(ツー・バイ・ツー)で 小町さんと美波ちゃんに途中で体位も替わってもらいながら、徹底的に『あの事』を楽しもうと思ってた訳よ。もうさぁ、小町さんは全部分かってたし、美波ちゃんにも『一言で』分かるレベルだったんだよ。しかしまぁ、お前のあの不注意で・・」 「ど~も済みません!確かに不注意ではありますね。黙っといた方が良かったってか?」中条は、バツが悪そうに返し、そしてこう呟いた。「美波恋しや ほうやれほ~」

「バカタレが!何が『ほうやれほ~』だよ」呆れ顔で、宮城が続けた。「俺がこの犬共を 松下さんちに預ける事をさ、お前が木下さんちのお嬢姉妹にゲロったのがそも間違いだ。見てみ、小町さん以下 病院の方々との間は上々やったが、肝心のお前の方はさっぱりワヤやんか。それとも何か?お前とお嬢姉妹の間で、大声じゃ言えねぇ事態でも勃発してたんか?」 中条「ああ、いやいや。彼女たちはあくまで、俺んちの窓の外で見られた ワンコたちの面白(おもろ)いパフォーマンスを見物に来ただけでして。永ちゃんを交えて 一度位は食事こそしてますが、泊まりも宿だったしねぇ・・」と、永野の方へ向かい 助けを求める表情を示した。認めた永野は、無言で笑みを浮かべ、こっくりと頷いた。

「まあ、仕様がねぇな・・」と、宮城は呟く様に言った。「今度のとこは、個人面の事とてこれ以上は追及せんでおく。適当に時期が来たら、ホントの事話せや。しかしまぁ、俺的にはそんなつもりだった訳でよ。そこは分かってもらいてぇな」 中条「ホント、申し訳ねぇです。ですが由香ちゃんと由紀ちゃんは、ワンコたちの様子を見に来たのがメインはホントですよ。それはお分かり頂きてぇですな・・」 「ああ、まぁ良いだろう。ただ、俺とお前の間柄だからこんな話もする訳。次やその次がねぇ様にしてくれよ。約束だぞ!」 「分かりやした。それはもう、必ず!」と、中条は返した。

「ところで・・」と、ここまで二人の会話を静かに聞いていた永野が切り出した。「うん。症状の事か?答えるぞ」宮城が返すと 「ええ。これから宮城社長のお所に出入りさせて頂く様になる者として、少し伺っておきたかったものですから・・」 「ああ、良いよ。答えられるとこはな。結局はさ、肝機能に少し異常が見られたんだが、血液検査の結果は僅かなレベルって事で、投薬と経過観察になった。以後は月一度ペースで通院して診てもらう事になるかな。その時は、又煩わす事になるかもだが 宜しくです!」 「いいえ、とんでもありません。有難うございます!」宮城から 大体の診断結果を聞いた永野は、一度立ち 丁寧に一礼した。

「皆さん、ところでね・・」宮城と永野の会話が区切られるのを見計らって、中条が言った。「はい、何ぞ?」二人が返すと 「木下さん姉妹、あんな風に『可愛いワンちゃん』とか言っておいて、俺の見ねぇ間に、結構際どい画像撮ってたんですよ。先週かな・・大坂帰って 次の日にメールで送ってくれたんだけど、例の連中が『松乃家』さんの屋上で暴れて騒いどるだけやなしに、四匹がてんでに粗相しとるとこまで捕捉してたんです。それが・・」と続けて、両隣に座る宮城と永野に披露する。松乃家のマルと 宮城の愛犬 三匹が愛らしく戯れ、騒ぎ立てる図だけでなく、それぞれが大声で言えない粗相をやらかす場面も、何カットかが収められていた。「あは、これじゃぁねぇ・・」 三人の男は、失笑を交えながら見入った。

「それでね・・」と、中条が続けた。「うん、聞かせろよ」宮城が返し、永野も頷くと「この次の画像が問題なんです。由紀ちゃんが撮ったもんで 『これは何でしゃろ?』の質問付きだったんですよ。俺はとっさにどういう事か見当はついたけど、若い女性にどう答えるべきか、ちと迷いましてん・・」と言いながら見せたのは サンコの背後から マルがその上に「がっつり」という感じでのしかかり、息を荒げている図であった。

「ハハハハ、なぁ中条・・」と、画像を一瞥した宮城は 笑って言った。「はい・・」返事を聞くと 「これさぁ、マルの『雄』が盛ってた、それでサンコとこうなったって言いてぇんだろ。分かるよ・・」 「ですね。どう見てもそうとしか思えねぇですよ」 「ああ、分かりますよ。確かにそんなイメージですよね・・」と永野も言った。これを見た宮城は「あは、もしもサンコが妊娠したらどうしような。マルも一応 パピヨン犬の血統書はあるらしいから、そうなっても良くはあるんだよな・・」 聞いた中条は「ふぅん、そうですか。俺には間抜けにしか見えねぇですが、まあ『オマル』も一応由緒正しい血統なら サンコ妊娠でも問題ねぇでしょう。それとね・・」と、急に言葉を区切る。

宮葉が「いいよ、聞いてるから続けろよ」と促すと、彼は「多分ですが・・」と断った上で「由香ちゃんたち、一匹は欲しいって言うかもですね・・」 「ああ、それな。まあその時は、彼女たちが希望なら考えたるわ。その時は、お前から俺に話を回してくれ、宜しく!」 「分かりやした。心得ておきます」 「まあ犬の妊娠期間は人より短ぇとは言うても二か月やそこいらはかかるだろう。暫くは、こっちの方も様子見や」 「分かりやした。さっきの答えだけど、彼女たちにゃ『犬共の 大人の事情や』と答えたら、その時ゃ矯声らしかったけど 一応納得してくれましたよ」中条は、そう言って笑った。三人が集まっての歓談、小一時間が過ぎ 2:30pmになろうとしていた。

「さてさて・・」と、宮城が重そうに腰を上げる。「月末だからさ。俺、これから夜までかかって『月末締め』をせんといかん。お前たちも、そんな用事抱えてんだろ。程々にな・・」と言い、空き缶多数を積んだ自転車をゆっくり押しながら公園の外周道へと進みだす。「宮城さん・・」中条が声をかけた。「うん、何だ?」返事を得ると 「俺たちも『月末締め』は同じですよ。もう少ししたら、永ちゃん共々現場戻りです。それで・・そろそろ空き缶回収、止められた方が良かねぇですか?」 「アホこけ!これは俺の健康策だよ。金の為じゃねぇ。だからまだまだ止められねぇって事さね!」 「ハハ、そりゃ済みません。まあせいぜい、お気をつけてど~ぞ。通院もね!」 「宮城社長、お大事に。又 来月!」永野も、一礼して言葉をかける。「うんうん、今夜は遅かろうが、お互い頑張ろや・・」 「有難うございました!」

もうすぐ時季を終わる 麦藁帽を頂いた宮城が、自転車を押してゆっくりと公園の門を出て行く。その後ろに犬共が、画像の狼藉からは信じられない様な 整然とした一列縦隊で続く。直後にパピヨンの「サンコ」 真ん中がポメラニアンの「フゥ」 最後尾を同じく「一太」が固める。まず、宮城の首から下と自転車・空き缶入り袋が 木立ちの向こうに消え、次いで犬共が順に、最後に宮城の麦藁帽が揺れながら 視界から去って行った。ベンチ上に、中条と永野が残った。

「そうかぁ、宮城さん、短くも充実した入院の日々だったんだぁ・・」中条が懐かしむ様に言うと、永野も「そうらしいですねぇ。本荘(小町)先生も瀬野(美波)看護師も、本当に優秀な方たちらしいし、瀬野さんは地元から大いに期待されてるって話も聞きましたね。だから、宮城社長の『男の本音』にも鋭く反応されたのかも知れませんね」 「ああ、そりゃあるだろうな。まあ知っての通り、俺たちも美人姉妹さんと好い時間を持てた訳だし、余り羨んではいかんかなぁ・・とも思う訳よ」 「・・ですね。で、姉妹さんとの事は表にしちゃいけません・・よね!」 「その通り!今は表にせん努力をしやしょう!」 「・・ですね。又より良い次に繋げられる為にも!」 「君の言やよし!さあ、月締め つつがなく頑張ろや!」 「はい、有難うございます!」目を合わせた二人の男は、笑顔を交わし 立ち上がった。
(おわり 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 葵つかさ
野呂一生さんの今回楽曲「ミーニング・オブ・ライフ(Meaning of Life)」下記タイトルです。
Meaning of Life

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