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情事の時刻表 第49話「後信」

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「初ちゃん、有難とよ。疲れたろ。適当に休めや」 「うんうん、有難う。でもあたし、もう少し素敵なお月様を眺めていたいわ・・」美波に豊を伴い、彼の小型船で 熱い交わりを実行すべく、豊の祖父が持つ 秘密の小島への往復から戻ったのは 10:30pmに近かった。

豊の実家への帰途 宿近くに車を寄せてくれた美波に豊と別れ、宿の主人一家が用意しておいてくれた 遅い湯を使った。中条は、初美の下方を特に入念に清めてやった。「嫌らしいわね!」と揶揄しながらも、満更でもない様子だった。浴衣に上衣に着替え、寝る前の一時を 思い思いに過ごす事にしたのだ。

高台の 重厚な二階家の上階にある彼らの居室は南向き。昼は太平洋へと続く内海が見渡せる窓際からは、南中した満月が輝きを放つ。「うん、素敵!」寝品の日本茶を嗜みながら、うっとりした風情で見上げる初美の様子を確かめ「俺、ちと宮城さんに連絡するわ!」と一言。「あぁ、どうぞ。ちょっと遅い時間だけど、大丈夫なの?」 「あぁ、そりゃ良い。彼からも、そう聞いてるからな」 「そういう事なら・・」と呟いて頷くのをチラ見して、中条は居室片隅のソファに席を取り、スマート・フォンをいじった。

以下、暫く宮城との LINEによる会話を。「宮城さん、お疲れ様です。遅くに失礼、例の件 どうにか山場を越えました」 一呼吸おいて、宮城から返信。「お~中条、今晩は。待ってたぞ。まぁ遅ぇのは仕様がねぇな。あっちの事は普通深夜までかかるもんだ。今回は、まだ早い方だろ。どうやら無事済んだらしいのは良かったな。俺は又 お前が『中折れ』でも起こしたんじゃねぇかって心配してたぜ(笑)」

中条「そいつは有難うごぜぇます。宮城さんを、マジで心配させちゃいけませんからね。でも大丈夫、俺のアレはお蔭で無事ですから・・」 宮城「ほぅ、マジだろうな。まぁ初ちゃんも一緒だったからまあ良いや。何かありゃ、彼女が本当の事を語ってくれるだろうしさ」 「あぁ、アハハ。まぁそんなとこですね。所で、今日の出来事をボツボツとご報告しますわ~!」

宮城「あぁ、宜しくな。良いか、一切の脚色なしに、事実をありのままに言ってくれ。まぁお前は、嘘がつけねぇ性格は分かってるが・・」 「有難とです。この期に及んでお信じ下さるたぁ喜ばしいです」 「まぁ、言わんで良いぞ。そんな大それた事かよ?」 「ハハ、それもそうですね」 「・・だろうが。まぁ今日のお前たちの行状は 少しは想像がつくぞ。嘘交えても、仕様がねぇだろ」 「はい、まあそんなとこです。では・・」

冒頭の挨拶を区切ると、中条は 夕食後からつい先程までの宵の出来事を宮城に伝えた。そして「・・でね、宮城さん。看護師の瀬野美波さんとはお初だったんですが、あの女性(ひと)、初めのお話より随分と嫌らしいですね。特にさ、昔から知ってるらしい豊君を 見事に調教してましたね」 読んだ宮城「あぁ、そうか。ちっと前 俺が鵜方病院に世話なった時、研修で来られてた折はそうでもなかったんだけどな。・・いや待てよ。中条、ちょっと聞けや」 「はい、伺いますよ。続けて下さい」

返信を受け、宮城は続けた。「何かさぁ、今感じたんだが、それって小町先生の指金臭ぇなぁ。つまりよ、お前の話と 俺の想像突き合わすと、まずお前と豊君が、お相手の初ちゃんと美波さんを交換(スワップ)した。お熱い出来事になってさ、前後して昇った後に美波さんが、初ちゃんとお前にもう一度交わる様に促したって事だろ」 「そうですね・・」 「んでもって、初ちゃんとお前が ちと過激な正常位で交わった『ハメ撮り』位置に彼女と豊君が滑り込んで、初ちゃんの菊花(しりあな)に、細筆で仕掛けたって寸法だ」 「正にそうです」

宮城「・・でだな。詳しいとこだと、美波さんが豊君に細筆を操らせて、初ちゃんを筆調教したって事だろ」 「そういう事です」 「う~ん、増々小町先生の指金っぽいな。因みに、初ちゃんの反応はどうだったの?」 「あぁ、彼女はかなり敏感に反応してましたね。まぁ良かったんじゃねぇですか?」 

宮城「・・だろうな。豊君も少しは知ってるが、頼まれりゃ 真に受けちまうとこがあるみてぇだからな」 「まぁ、そんな感じですね。特に 相手が以前世話になった美波さんなら、絶対に Noとは言えねぇでしょうね」 「それだよ!まず小町先生の指金で間違いねぇだろうな。因みにお前は、明日帰る前に 彼女に会えそうなのか?」

宮城のこの問いに、中条が返信するのに少しの時間を要した。確かに明日の日中 小町から昼食に誘われてはいるが、はっきり返事をした訳ではない。「宮城さん、実はね・・」男は、曖昧に返した。「続けろ。読んでるぞ」返事を得ると 「明日は、昼飯は一緒しようって事になりそうです。返事はまだですが・・」 

宮城「そうか、なるべく顔出してさ、その辺それとなく訊けりゃ良いな。尤も頭の回る小町先生の事だから、簡単に口割るとも思えねぇが・・」 「・・ですよね。ただ、明朝までに返事すりゃ良い事になってまして。それと、ご存知だろうれけど、初美が顔出しを渋る可能性もありますしね・・」

宮城「まぁ どうしても初ちゃんが嫌だって言うなら仕様がねぇが、そうでなきゃどうだ?折角向こうが誘ってくれてんだから、出てって その席でそれとなく聞いてやっても良いんじゃね?お前も話の進め方が下手だから ちと心配も事実だが、余程ヘマやらなきゃ、口割るかもな」 

中条「・・ですね。その可能性もありって事で。明朝までに、ご一緒の返信しときますよ」 「それがええ。まぁ、色好い話が聞ける事を祈るわ!」 「お気遣い感謝です。そいじゃ、又続報をお伝えしますわ」 「有難とよ。まぁ帰ってから直にでも良いけどな」 「了解。遅くに失礼しやした」交信ここまで。

「初ちゃん、悪かったな。宮城さんまだ起きてて、話に付き合ってくれたよ」中条はそう言い、まだ窓際で月を愛でる初美の所へ戻った。「あぁ いえいえ、ホントに名月だから、退屈はしなかったわよ。それにね・・」 「はい、何ぞ?」 「時々、夜の漁に出るらしい船が通るのも面白いわね」 「あぁ、それね。この辺の海、意外に夜も出入りがあるんだよな」対面の形で、中条も夜の海に目を遣る。

「所で新(しん)さん・・」初美が訊いた。「いいよ。聞いてるぞ」中条が返すと 「明日の予定ってどうかしらね?」と続く。「あぁ、それね。明日午前から、中央病院に呼ばれてる。そこで小町先生たちと会って、そのまま昼飯になるだろう。帰りの列車は 北紀長島(ほっきながしま)を午後発つから、割合自由時間はありそうだぞ」そう続けた。

「但しだ・・」捕捉の意味で、中条は言った。「初ちゃんが乗り気でなきゃ、小町先生のお誘いを断れる。その場合はさ、宿の人たちに昼飯を頼んで、午後までこの辺りをブラついても良いんだけどな・・」 初美「あぁ、それも良いわね。観光地じゃない地元の空気や美味に触れるのも、そりゃ魅力だわ。でも・・」 「うん、聞こう・・」 「折角小町先生も誘って下さってるんだし、病院もチラっと見てみたい気もするのよね。だから・・」 「はい・・」 「明日は病院へ行くって事でどうかしら?」 「分かった。そういう事なら・・」聞いた男はそう返し、女医に LINEを送った。

「小町先生、中条です。此度のご出張はお疲れ様です。お話下さった 明日の病院にての会合、謹んでお受けします。尚、今夜は遅くなりましたので、この送信は明朝にでもご覧下さい。それでは、明日はご面倒をおかけします」 そう結んで中条は、ふと思った。「まぁさ、小町先生の側にすりゃ、ちっとも面倒じゃねぇかもだ。宵の出来事にしたって、どうせ先生の指金だって考えりゃ筋が通るし・・」
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の壁紙 秋の JR名古屋駅構内夕景 2018=h30,10 撮影、筆者
今回の「音」リンク 「フェイス・トゥ・ザ・ライト(Face to The Light) by野呂一生(下記タイトル)
Face to The Light

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