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情事の時刻表 第54話「再会」

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その年の 12月は、暖冬予測ではあったものの、中旬にもなると やはり朝番の冷え込みはいつも通りのレベルだった。12/9土曜の午後、よく通う金盛公園傍の喫茶店で宮城、そして Sタクシーの永野と会っていた中条は、合間に由香、由紀の木下姉妹と LINEで交信を。意図は勿論 翌週迫った彼女たちの新たな愛犬となるべき、松乃家の飼い犬「マル」と宮城の愛犬「サンコ」の間に生まれた子犬の面会と引き渡しについてである。

中条「二人共見てるか?今 宮城さんと会ってる。来週の土曜 12/16から、オマルの主家の「松乃家」さんで子犬と会う件 宮城さんも先方の松下さんも了解だってよ。翌日曜になるかもだが」と送る。 折り返し、由香から返信。「おおきに。有難うございます!ほなどないしまひょ。あたしたちは、同じ土曜の午前に大坂発てばよろしいか?」 「その事ぞ。何かよ、週間の気象情報だと、前日金曜の途中から雨らしいな。当日土曜の日中まで残るらしいから、そっちを昼頃発った方が良いかもな。尤も俺は『降られる』のは慣れてるから良いんだが・・」

「又また、何言うてはるの?」中条の電文を見た由香は、思わず苦笑した。失笑かも知れなかったが。「なぁ由紀ちゃん、ちょっとこれ見てみ・・」呆れ顔で、受信したスマート・フォン画面を妹へ。由紀も「・・たく。仰る事とやる事が違うんだよな、伯父様は・・。あたしたちが嫉妬するレベルの美人先生と、あんだけ良い仲になってんだから、こんな台詞はやめにして欲しいわ。ホンマに・・」率直な感想であった。

交信をもう少し。由香「何や信じられまへんな。今 由紀も『初美先生と良いとこまで来てんだから、そないな事仰っちゃダメ!』とか言うてますよ。あたしもそれには同意です~!」 中条「ハハ、悪いな。まぁ、なかった事にしよ。松乃家さんの都合はよ、12/17の日曜午後が好都合らしいわ。だから、前日来るならゆっくり目でも良いな」 「左様(さよ)ですか。分かりました。ほな、こちらで昼ご飯済ませてから、近参の特急乗って そちらへ向かいますかな」 「それが良い。悪くしても夕方前には着くだろう」 「・・ですね。又お騒がせですが、宜しゅうお願いします!」 「こちらこそ。楽しみにしとるよ!」交信ここまで。

「済んだか中条・・」スマート・フォンの操作を区切った所で、宮城が声をかけた。中条「はい、彼女たち、来週土曜の夕方前にこちらに入る様ですね。松下さんちが、日曜午後でセットご希望ってのも伝えましたよ」 「よしゃ有難と。そやな、新しい子を連れて帰る都合もある事だし、その方が良かろう。当日は俺も行って、彼女たちにその辺も伝えようかな。それにしても・・」 「はい・・」 「夏に入院してた時以来かな。ちと楽しみだ・・」

中条「・・でしょうね。宮城さんは 彼女たちと『深い仲』たぁ違う訳ですが、やはり若い女性(ひと)たちとの会話は 精神若返りの効果もあるだろし・・」 宮城「ハハ、まぁそうだろうな。それにさ、幾らもう犬を飼ってる言ったって、新しい子犬の事ぁ、少しは説明しとかんとあかんだろ?」 「・・ですよね。まぁ俺的には こう言ったら叱られるかもだが Kuso犬の子犬だから Kusoガキ犬・・位の認識で居るんですがね」中条が苦笑しながら言うと、流石に宮城は「コラ、コラ!」と反応するも、表情は笑顔だった。

中条は続けた。「もし、言葉が過ぎたら申し訳ねぇです。ただ、実態がそんなですからね。彼女たちにも『子犬の親はこんなだった』とかを話さんといかんかなって思う訳でして・・」 宮城「いやいや、気にすんなや。そんな事分かってるよ。松下さんにも知られん様、俺の腹にしまっといてやるわ。そんな事より、多分 17の日曜午後になりそうな子犬の面会と受け渡し、間違いねぇ様進めんとな」 

中条「お気遣い感謝です。そうそう、それですね!段取りを宮城さんにお願いしちゃって恐縮ですが、俺からも松下さんに 一言挨拶せんといけませんな」 宮城「あぁ、そやな。電話でえぇから一言申しといてくれや」 「分かりやした。そいじゃ、進行としちゃ そんな感じで」 「まぁまだ日があるから、当日までちょくちょく連絡取ろうや」 「勿論です!永ちゃん 今日は発言させんで悪かった。この話はこれまでだ」

ずっと傍らで二人の会話に聞き入っていた永野は「あぁ、いやいや。大事なご用件でしょうから、少しでも密にお話されるべきでしょう。余りの立ち入りはいけませんが、自分も興味深く聞かせて頂きました」 それから暫く、永野を交えた三人で、近所に場外売場のある JRA競馬やプロ野球、世間一般の話題などが続いた。話が区切られると、中条が「永ちゃんは、まだ時間良いのか?」

永野は「いや済みません。お二人が 競馬のお話になると、自分もつい熱くなってのめり込んじゃいまして。(苦笑) 時間ですか?勿論大丈夫ですよ。それでね・・」 「うん、何かな?」中条が返すと、永野は「実は、この後城址傍から北郊への仕事なんですが、そこまで回送状態なんです。で、新(しん)さんがお車じゃなければ、乗ってって下さりゃ良いかな・・なんて思ったんですよ」

聞いた中条は「おーそれそれ、それを早く言ってくれよ。永ちゃんがあっち方面でなかったら、地下鉄で帰るつもりだったんだが 丁度良いや。宜しくです!」 永野「有難うございます!何でしたら、近場ですから 宮城社長のとこもお寄りしましょうか?」 「それ、良いね」と宮城も合わせ、勘定の上店を出ると、ちょっと裏手の駐車場所に控える 黒塗りの Sタクシー「トヨタ・カムリ」の後部上席に宮城、左隣に中条を乗せ、発車。

又またひとしきり 競馬とプロ野球の話で道中盛り上がった後、宮城の会社兼自宅車寄せに滑り込む。右側から降りる彼の為、永野が先に降り 右ドアを開ける。「社長、有難うございました!」 「永野君も、ご苦労様。それとな・・」 「はい・・」 「いつもの事だが、これでヨロです。降りる時、中条にサインもらってや」 「はい、有難うございます!確(しか)と対応します」 構内に消える宮城を見送って、中条と永野は、又走り出す。

「新さん・・」永野は言った。「うんうん、由香ちゃんと由紀ちゃんの事だろ?」中条が返すと 「勿論です。宜しくお伝えおきを」し控え目に続けた。中条は「任せなせぇ!多分、中央駅とかと、飯時の送迎で出番があるぞ。彼女たちも、きっ貴方に会いたがってるだろうしな」 「有難うございます。それ伺って安心しました」 そうこうする内、中条の居所の入る 高層住宅構内。タクシー券の処理と挨拶を交わし、永野は次の現場へと向かった。

12/16土曜当日。やはり事前の予報通り、前夜からの雨だったが、午後暫くして上がる。中条の元へは、姉妹の姉・由香から大坂なんば 2pm発の 近畿参宮電鉄特急に乗ったので、N市中央駅へは 4pm過ぎ着の見込みとの LINEが入っていた。午前中出勤し、仕事を片付けた彼は 専務の妹らと昼食の後帰宅。ひとまず 斜め向かいの松乃家宛て 翌日曜に犬の事で訪れる旨 電話挨拶を経て簡単に掃除を終えた所で 3pm前に初美が来訪。姉妹の「内飲み」希望もあり、馴染みの商業施設へ 車で買い物へ。その流れで中央駅へ回り、姉妹を拾う。

「お久しぶりです。又 お世話になります!」揃いのジーンズに淡色のパーカー、ウォーキング靴に上げた髪といった出で立ちの 普段着だが隙のない由香、由紀の姉妹が改札口に現れた。初美と中条も 近い装い。「よう来た!」 「いらっしゃい!」初美と中条も又、普段と変わらぬ出迎え。中央駅から中条の居所までは約 10分強のドライヴだ。助手席に初美、後席の右に由香、左に由紀が座り、通う大学の様子など、近況の報告で会話が始まったが、ルーム・ミラー越しに後をチラ見する中条からは、初美の背後に座る由紀の これまでとは少し違う目つきがやや気になった。「彼女、何や考えとる様な・・」少し引っかかる感情が、男の胸に去来した。

無事居所に入り、姉妹の親元からの手土産を受領、一服する間もなく「あたしたちも応援させてもらいます」との姉妹の申し出もあり、初美の采配で 内飲み兼夕食の準備を進める。その間に中条は入浴の準備。一息入れ TV番組をチェックする内に風呂時。「由香ちゃんたち、道中疲れたろ。先に入りなよ」の中条の言葉に由香は「あぁ、いえいえ・・伯父様、先生とお先にどうぞ。あたしたち、準備の続きをしたいですさかい・・」 「分かった、そんなら・・」と、彼は初美を促して浴室へ。

「有難う。お姉ちゃん・・」二人が浴室へ向かったのを確かめると、妹の由紀は、ニヤリとして言った。「これでどうやろ。今夜の予定が・・と言うか、企(たくら)みの事がちっとは話せるな」 聞いた由香「あぁ、まぁな。あたしゃ、この前はお風呂で伯父様に悪さができたけど、今度は先生とよろしくやりはるやろうから、残念やけどお任せってとこかいな・・」 「まぁ、そないに腐らんでも良いやんけ。よろしか?この後のお夕飯で、伯父様にお酒が一回りした辺りが機会(チャンス)やで」 

由香「何の機会や?」 由紀「そやから、あの行為が見たぁ~い!って、艶っぽくお願いするって事でんがな」 「つまり何や?先生と伯父様の性交(セックス)を見せて欲しいってお願いするんか?」 「あは・・まぁそないなとこやな。そいでな・・」 「うん、何や?」 「そないになった時の道具も持って来たわ」 「!・・呆れたな~、全く・・」 会話を区切った由紀が 由香の眼前に示したのは、初美と中条の交合時に、彼女の下方を攻めるべく持参した細筆と、教え子の一人 周(あまね)から贈られた 鷹の羽だった。
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の壁紙 近畿日本鉄道(物語中 近畿参宮電鉄のモデル)名古屋~大阪線特急「アーバンライナー・ネクスト(Urbanliner Next)」 近鉄名古屋線・米野駅 名古屋市中村区 2018=H30,1 撮影 筆者
今回の「音」リンク 「タイム・メッセンジャー(Time Messenger)」 by葉加瀬太郎(下記タイトル)
Time Messenger

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