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レディオ・アンカーの幻影 第7話「予行」

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「先にどうぞ」 「分かった。有難とね」理乃にシャワーを促し、ちょっとの間 一人になった間も、前嶋の内心は揺れ動いていた。「できるなら・・」彼は、シャワー後の理乃に、汗の匂いが漂い始めた 日中の下着姿にもう一度させて「事」に及びたかったのだ。彼女が同意するか否かは別として・・

「まぁ・・」彼はこうも思った。「どうしてもってレベルじゃない。彼女が嫌がるなら、まぁ仕方ないさ。それに・・」呟きながら、ベッド上の夜着(ナイトウェア)に目を遣ると、それは多分にバス・ローブに近かった。「うん・・」頷きながら、彼は己のそれを手に取って言った。「これ着せて『実行』てのも、それはそれて良いな・・」体位を含めた「事」の進行をどうするか、ゆっくりと頭の中を巡り始めた。傍らの TVは民放の報道番組を伝えているが、まぁ上の空だ。

「のぞみさん、お先ね!」小半時程も経ったろうか。TVを ONにしたまま、ボンヤリと窓外を行く JR東海道線の列車の往来を眺めていた前嶋の背後から、理乃が声をかけた。洗髪したらしく、ショート気味の髪が水気を帯びていた。ちょっと好い香りも・・「有難と。好い香りやね。じゃあ、ちょっと・・」 「適当にね・・」 「あぁ・・」短く返しながら、前嶋は「やっぱり・・」とふと思った。「ゆっくり、とは言わなかったな・・」ほんの僅か、引っかかるものがなくはなかったが、彼はそのままシャワーを使った。

この夜のここまでの進行は、本当に「成り行き」の結果だったのだが、後付けとはいえ 前嶋にはちょっとした狙いがあった。先程までの「ラジオ深夜館の集い」に絡んだ邑井由香利との会見で、彼はいずれ由香利に近づき、関係を深めようと目論んでいた。何よりも、彼女の名刺に手書きされた URL状の横文字は「多分、個人のメール・アドレスに違いない」との確信に近い気持ちを抱かせる様になっていた。「理乃ちゃんには悪いけど・・」今夜の事は、後日必ず来るだろう、由香利との「事」に備えた予行演習の意味もあるのだ。

当然の事かもだが、前嶋のシャワーは 理乃のそれよりは短かった。彼女がそうした様に、洗髪もした。部屋に戻ると TVの chは他局のバラエティ番組に替わり、理乃がバス・ローブ調の夜着に替えてソファで寛ぐ。短めの髪は、ほぼ乾いている風情だった。「中々好い感じだわ。この夜着(ウェア)」の言葉を 「あぁ、そう。そりゃ良いね・・」短く返す。暫くの間、短い感想を挟みながら TV番組に興じた。

「さてと・・」半時程して番組が区切られると、ゆっくりと理乃が言った。そして「そろそろ始まるね・・」 「あぁ、ラジオの事?」前嶋も応じた。理乃「そうそう。深夜館よ。今夜のアンカーは権藤さん・・だったかな」 「あぁ、第三土曜の夜なら、普通はそうじゃなかったかな?」 「この部屋って、ラジオ入るのかしら?」 「どれどれ・・」

会話を区切った前嶋が 窓際のコントロール・パネルを一瞥すると、果たしてラジオのポジションが見つかり、公共 N局第一放送が受かるのを確かめた。「良かった。今夜も好い感じになりそうだわ・・」一安心の風を見せる理乃に、前嶋は「もっと良くしよう!」そう言って笑いかけた。この夜の担当、権藤 繁(ごんどう・しげる)も理乃好感の男性アンカーだ。

「好いね、それ!」図らずも、理乃も合わせてきた。「よし、いける!」そういう確信が、前嶋の頭を支配し始めた。「勿論。そいじゃ、まずは挨拶をね・・」そう呟いてソファに座る理乃の傍らに身をかがませると、流れる様に唇を奪った。「ハハ、来たね・・」理乃も応じ、前嶋の首に両腕を回して行った。

「場所を変えよう・・」右手を差し伸べ、起立を促すと 理乃をベッドへと誘った。「ほら、こう来ると思ったわ・・」理解している風情の彼女、勧められるままにベッドに臥し「さあ、のぞみさんも、ここよ、ここ・・」と傍らに来る様サインを送る。「はい有難う!直ぐに・・」並んで臥した。

「さぁさぁ、核心へと進む用意ができたぞ・・」ニンマリの一方で 「やはり、昼間の下着での『事』は無理・・か」の想いも交錯する。この時彼は、思い切り理乃の体臭を感じたい衝動に駆られていたのだが。遠巻きにその話をすると、理乃は「ふぅん、貴方はそういうのが好きなん?」に続き「でもやっぱり、夜は新しいので迎えたいしさ・・」と呟いた。無理はしない方が良さそうだ。

前嶋が理乃と交わるのは、二回目だった。前回は余り要領が分らず、己はとも角 彼女が喜べたかどうか確かめる様なフォローもした記憶がなかった。「前回の轍だけは踏みたくないな・・」昂奮の一方で、そういう想いも傍らに置く前嶋であった。理乃はどうも、彼が上に重なる正常位での行為を望んでいるらしい。「ねぇ、来て来て・・」仰向けに臥し、その上を覆う様求める風がその証左だ。「よしよし、只今ね・・」前嶋は応じ、理乃に重なると、もう一度上から唇を奪う。それだけでなく、舌で彼女の口内を一渡りまさぐってやった。

「ん、あぁ・・い、好いわ・・」一旦奪った唇を解き離すと、理乃は呻く様にこう呟いた。そして「ねぇのぞみさん、昼間の下着と どっちが好い?」と、わざと意地悪そうに訊いた。「う~ん、難しいなぁ・・」聞いた前嶋は、本当にどちらに「転ぶ」か難しかった。「確かにさ、日中の匂いが残る下着姿は魅せられる。が、しかし・・彼女はもう夜着に替えてるし、今更着替えたくもないだろう。それに・・」と呟きを区切り、下に組み敷いた理乃の寝姿を、頭から爪先までざっと一瞥してみた。

「うん、これはこれで好いよな・・」彼は再び呟いた。そして「理乃ちゃん・・」声低く呼んだ。「はい、何?」些か単調な感じで彼女が返すと「迷って悪かったけど、これで決定です」と、きちんと纏っている夜着を指差して言った。「ハハ、そうでなくちゃね・・」理乃は、笑って応じた。そして「できたら『頂上』へは、生まれたままの姿で昇りたいわね。これ、貴方もよ」 「う~ん、そうかぁ・・」聞いた前嶋は、まだそれには踏み切れないでいる。

彼は続けた「それ、ちょっと 成り行き次第って事にしませんか?この前 二人で昇った時も、完全に裸じゃなかったしね。だから・・」 「仕様もない!でも、まぁ良いわ。つまり貴方は『半脱ぎ』の方が昂奮する訳ね」 「仰る通りです・・」前嶋は、バツが悪そうに答えた。そして「さぁ、そいじゃ実行しようかな。接吻(キス)の次は、オッパイさんにご挨拶しないとね・・」 「はい、あぁ・・そりゃそうだわ。じゃあ、始めてみて・・」前嶋はこれを聞くと、頷いて理乃の襟を 上から開いて行く。ブラは着けておらず、下方もノーパン状態らしい。忽ち 色白で中庸の、形良い胸の双璧が前嶋の眼前に現れた。二つの乳頭も明るいトーンで魅力だ。「宜しく、お願いします・・」低く呟くと 彼は双璧を一仕切り撫で回し、その一方に 静かに、しかし「グッ!」という感じでむしゃぶりついた。
(つづく 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 乙葉ななせ
日野皓正さんの今回楽曲「ラ・オラ・アジュール(La Hora Azul)下記タイトルです。
La Hora Azul

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