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この雨は こんな風に聴こえる 第64話「復習」


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「要求した訳じゃないが・・」この夏、黒木の居所を訪れる宥海(ゆうみ)の 部屋での行儀は、回を重ねる毎に悪くなって行く風情だった。いつも先にシャワーを使わせるのだが、浴室にいる間の脱衣は 何となくも 次第に黒木の目につき易い置き方で、恰も「さぁ、どうせ『芳香』を愛でるんでしょ?」とでも言いたげに 脱衣籠に収まっている・・というより脱ぎ捨てられているのだった。勿論 愚かな?彼は、謹んでそのブラやショーツの「香り」を一瞬味わったりしたものだ。

浴室から戻り、居間に落ち着いてからも「煽り」が続く。明らかにその意思がある時は、黒木が一度は勧めるバス・ローブを拒み「何で嫌だか、分かってるでしょ?」わざと強めの言葉を返し、別に用意していた 淡色薄地のナイト・ウェアとニーハイを纏い、ソファ上で両の脚を開き「ほら、こっち!」と言わぬばかりに自ら見せに出る。下方は裸か「T」のどちらか。前者なら 下草の上にまします女性器が露わ。後者でも下草と菊花(肛門)の外周位は認められる。明らかな挑発だ。

「直ぐ乗ってはいかん・・」とは思いながら、そういう場合 黒木の下方は大抵言う事を聞かなかった。「まぁ落ち着け。易々と彼女の挑発に乗るのも恥ずかしいもんだ」と抑える上方とは裏腹に、素直過ぎる下方は 敏感に反応す。「宥海さん、とても素敵です!今、繋がりに行くから そのまま待ってて!」早々に勃起を催した竿(男根)が、そう下劣な叫びを上げている様にも感じる風だった。

「終戦の日」に当たるこの夜は、日中からの雨が続いていた。午後遅く JR金盛駅まで迎えに出向き、宥海は案の定 夜の外食を渋った。「・・だろうと思った」初めから予見していた黒木は、最近盛んになり始めた食品の配送サービス「ウーバー・イーツ」に連絡、料理数点と若干の甘味(スイーツ)を届けさせ、飲料は少し前に入手していた白ワインを充てた。食後は居所のコーヒー。これで宥海の不満はあらかた収まった様だった。

食後の前後してのシャワー、食後酒を経た就寝の段になって 宥海は「今夜は、この上にするの・・」と長手ソファを指さし 「さぁ、長さ伸ばして欲しいわね」と続け。黒木「まさか、ここで寝るのかね?」訊くと 「まぁ・・初めの内はね。後で気が変わったら、寝室に移るかも。理由は、分かるでしょ?」 「あぁ、まぁね・・」 ぼんやりと、曖昧に返す黒木の言葉が区切られる前に、彼は強引に唇を奪われた。

「あぁ、それか。初めからそう言ってくれりゃ良いに・・」 「ふふ、たまにはこういうのもご希望じゃなくって?」そう言葉を継ぐ 宥海の美顔には笑みが戻っていた。「やれやれ・・」見守る黒木も、一息つけるという感じか。しかし 彼の頭の片隅には、不良な思考が宿っていた。そしてこう言った。「丁度良い。ソファに両手ついて、ちょっとの間だけ後ろを向いてくれるかな?」 「まあ!又悪さしたいんでしょ?」 「う~ん、全否定はしませんが・・」

「仕様がないわねぇ!」とでもいう風情で、宥海は 少しだけ黒木の願望に応じてやる事にした。ソファに両の手・・というよりは両の肘を置き、下半身を突き上げると 薄物のフレアの裾が捲れ上がって優れた形の臀丘が半分見られるという寸法。これをしゃがんだ姿勢で後ろから見上げるのが 黒木の大いなる好みだった。つまり視姦だ。

「うんうん、好いぞ好いぞ・・」 そう言う時、黒木の脳裏には「ゾクッ」とする程の稲妻の様な電気的衝撃が走るものだ。これは宥海の妹・麗海(れいみ)に対しても度々仕掛けてきた事だが、この所は何故か 宥海が相手の方が昂奮する様に感じられてきていた。「やはり、本命は彼女だから・・かな」 そう思いながら 暫しの間、眼前に向けられた宥海の露わな下方をじっくりと、ねっとりとした視線を投げて観察した。

「あぁ、嫌だわ。あたしとした事が・・」よくある宥海の反応だ。「何かね、見られてるだけで濡れてきちゃう感じ。ホント、恆(ひさし)さんって嫌らしいんだから。今度はもっと、ネトネトとした出方をするんでしょ?」 「あぁ、アハハ。まぁそれも否定できない・・かな。でも、俺だけ気持ち良くなろうなんて絶対思わない。それは信じてくれないかな?」 「あぁ・・まあ良いでしょう。貴方、荒っぽい出方だけはしないって信じられるからね」そう返す宥海の言葉には、徐々に喘ぎが交じってくる。様子を見て、黒木は 優れた臀丘に手指を滑らせ始めた。

「あぁっ、ふぅっ・・!」ソファの座面に両の肘を置き、高々と臀丘を突き上げた姿勢のまま、宥海の喘ぎが増して行く。露わな股間を、黒木の口舌が静かに攻め始めたのだ。微かに聴こえてくる窓外の雨音が、より彼の情念に火をつけた様だった。「あっ、はあっ・・い、好い。こ・・これ、続けて。あぅぅっ!」 「うんうん、気持ち良さそうな反応を有難と。勿論、暫く続くって事で・・」 黒木の口舌は まず秘溝の周りに茂る下草を濡らし、次に秘溝を抜き挿しする様に動き 高めて行く。そんな愛撫が 10分間以上続いた。

「さぁ 恆さん・・」 少し荒くなった息で、宥海が声をかけてきた。「そろそろ用意・・でしょ?」 黒木「そうだね。貴女は下が好い?」 「うん。正常位が一番安心だもの。でね・・」 「はい・・」 「今夜は、お尺は良いの?」 「無理しなくて良いですよ。念の為、ゴムは?」 「大丈夫。必要ないわよ・・」 この夜は、往々にしてある 彼女からの口唇愛撫(フェラチオ)を黒木は要求しなかった。この夜は、とに角少しでも長く 下方を一体にしていたかった。竿への愛撫は、又近くでも良いと思ったのだ。

仰向けに臥し、薄着の下方をはだけた宥海の上に 黒木は又重なった。十分に温度と湿度が高まったのを確かめ、宥海の秘溝に彼の竿を返して行く。亀頭が吸い込まれ、奥へとゆっくり進むと、宥海の肉壁と粘膜の方から攻めてくる感触があった。「あっ、ふうっ。恆さん、さぁ、復習よ。あっ、あっ・・!」

下方の連結を確かめて 黒木が宥海の上に上体を預けると、すかさず両の美脚が上の腰を捉え、ガッシリと締め付けにかかる。これで黒木は、腰の上下動しか叶わなくなった。「さぁ動いて。そして、あたしの肉壁と 粘膜と一つになるって約束して」宥海が言った。「あ、あぁ・・わ、分かった。凄い復習だな・・」竿を包囲し うねる様な肉壁と粘膜の攻め。黒木は辛うじて 射精の衝動を凌ぎきった。

黒木「まだ夜は長い。ゆっくり昇ろうよ」 宥海「ふふ、そう我慢しなくて良くってよ。男なら、途中で一度位発射したって良いじゃないの」 「あぁ、いやいや。やっぱりさ、二人一緒に頂上に昇った時の感激こそ最高だからね・・」 「今夜も、そのつもり?」 「そうですよ~・・!」黒木は 隙をみては腰の動きを鈍らせるので、宥海はその度に組付けた両の脚に力を込め「こらっ、動くのよ!」と叱咤(しった)した。それはまるで、競馬の騎手が乗馬に走りを促す鞭の様に効くのかも知れなかった。暫くの間、男女の押し問答の様な 竿と膣との攻防が続いた。

「所でさ・・」 行為の合間の、何度目かの 上と下での接吻(キス)を経て、宥海が言った。「はい、何ぞ・・?」黒木が返すと 「麗海にも、こんな事 試したりしたの?」 「う~ん、それも否定致しません・・」 「そうかぁ・・何となく分ったわ。彼女(アイツ)とも色々試したんだな?」 「あぁ・・うん、まぁね。でも、これだけは信じて欲しい。彼女、絶対に嫌な風じゃなかったから・・」 「それは信じるわよ。恆さんも存(たつる)君も、とても扱う手が丁寧だもの・・」

これは勿論「嫌らしい丁寧な扱い」である。それもあって、宥海、麗海の姉妹は 黒木と存の兄弟の出方に嵌った所があったのだ。これまで手癖の良くなかった麗海、一度は兄弟の所持金に一度ずつ手を出したも むしろこの兄弟と行為の機会を持った折、次第にそれぞれの「男」に惹きつけられた事もあって カネを返したのかも知れなかった。今夜、彼女は仕事関連の研修と会合で、外泊の為 黒木の直上にある居所を空けているはずであった。

宥海と黒木の行為は続く。上体の胸周りをメインに濃い摩りを入れ、下方を熱く繋ぎながらも 彼は弟・存や 折々相談に訪れる 巽 喜一(たつみ・きいち)弁護士の言葉を反芻していた。彼達の理解と協力もあって、黒木の進路も目途が立ち始めてもいる。「この一連の事は、全て 兄者次第だ」 「何かあれば、直ぐに相談・・な。俺は忙しくても、その位の時間は取れるからさ・・」 「そうだな存(タツ)・・。全ては、俺の心持ち次第って事だ。巽先生も、気にかけて頂き 有難き幸せです・・!」

半時程続いたソファでの行為は、終始正常位のままで絶頂を迎えた。「あ、ああっ・・よ、良かったぁ・・!」どちらからともなく呟き、再び口唇を重ねた。「暫くは、そのままで・・ね!」仰向けで呟く宥海の表情は、今までで一番美しく見えた。黒木はこっくりと頷き、暫し己も心地よい余韻を味わった。それからゆっくりと上体、そして下方を抜き離して射精の後処理と再びのシャワーなど経て寝室へと移動、両者 朝まで熟睡を得た。

翌日は曇天。夜の暑さは相変わらずで 部屋の冷房は終夜運転だったが、この日は強い陽射しを免れ 少しだけ一息つける様な気候であった。馴染みの喫茶店での朝食を終えると、宥海は夕方からの出局。昼過ぎまでは黒木の居所で過ごすつもりだった。「あたし、ちょっとその辺を走ってくる。どうせ貴方も、例の所で列車の写真でしょ?」「OK、その通りやね。まぁ気をつけて・・」 前夜の妖艶が嘘の様な、短いトレーナーと短パン姿の宥海はスニーカーを着けると、最初に会った JR東海道線沿いでの再会を約して 朗らかに階下へと向かった。

「さぁ、それじゃ・・」 愛機のデジカメと三脚、関連グッズを携えた黒木も、上シャツにジーンズ、ウォーキングを着け外出用意。時は 10:30amに近く、狙う下り貨物便の通過まで 後 20分程。「よし・・」 装いと手回り品を整え、玄関を開け 靴を履いた正にその時だった。眼前にいきなり「ボッ!」と、もう一つの美顔が現れる。麗海だった。

「ふふ・・恆お兄さん、お早う。今から撮り鉄かしら?」 「あぁ、麗海さんもお早う・・て言うか、研修お疲れサマー。もう終わったのかね?」 「うん、今朝までだったの。所で、姉が泊ってるんでしょ。分かるわよ」 「あぁ、まぁ、そんなとこ・・かな?」 「よ~し!あたしもお昼頃は時間あるから、一緒に出かけるわ。姉がどんな顔するか、ちょっと見ものよね・・」黒木、麗海の 研修の時はスーツだったろう凛とした姿と、今の平装の 微妙な魅力の差異を一瞬想った。美しい微笑みも、この時ばかりは薄気味悪く見えた。この些か変な姉妹による「一種の綱引き」、鬱陶しくも もう暫く続きそうな気配だ。
(おわり 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 宮沢ちはる
今回の「音」リンク 「雨の囁き (Vouces in The rain)」 by Joe Sample (下記タイトル。故人、ご冥福をお祈り致します)
Voices in The rain

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