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轍(わだち)~それから 第22話「部屋」

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(佐分利)学院高等科一年次の強化学級に加わるべく、南へ向かった養護主任 小町を見送った中条は、散歩を兼ねた休日恒例の円頓寺(えんどうじ)商店街・丸万ストアでの買い物の後、そのまま徒歩で居所へと戻って来た。朝からの曇天。帰って間もなく、降雨となった。

雨の日は、斜め向かいの某商家の屋上に、癖の悪い飼い犬「Kuso犬」が現れる事はまずない。「今日は、静かな夕方かな・・」と思いきや、突如、降りしきる雨間の、件の屋上にそいつが現れた。

「一体、何しに来たんや?」アイス・コーヒーのグラス片手にボンヤリと目を遣っていると、一声も吠えない代わりに、衆目のないのを幸い、片足を上げ、その場に「ジョ~!」と小水撒きの挙に。しっとりした雨情も、これで吹っ飛び。「消えろ、この~!最低の雨情だわ!」思わず、罵る男。それが聞こえたのか、犬はそのまま、そそくさと階下に消えた。

この日は、ほぼ日曜恒例の、親許への用事もなし。彼の両親はこの日、母方の実家のある、「三河」と呼ばれる、A県東方へ私用で出かけていた。帰りは二日後の予定だ。もう外出するつもりもなく、ボツボツと、洗濯した衣類の収納、入浴や夕食の準備とかを進める事にした。

甥と共に応援する、地元プロ野球 NCドラゴンズはこの日、西方へロード中。関西の勇者 HEタイガースと、日本野球ゆかりの球場で、ナイト・ゲームの対戦をする事になっていた。TV番組「笑点」のすぐ後、午後6時からラジオ中継開始。聞きながら夕食準備を進め、食し始めた所で、スマート・ホンにSMS着信があった。初美からだ。

「新(しん)さん、暫くね。今、親許から帰ったわ」 「それはそれは、お疲れです。親御さんはお元気?」 「ええ、お蔭で変わりなしよ。貴方は?」 「こちらもお蔭で、右に同じです。俺自身もね」 「そりゃ好いわね。所で、例の話をしないといけないわね」 「そうだな。来週半ばには、彼(あいつ)たちも帰って来るから、俺たちもそれに備えんといかんだろうな」 「今度の土曜は、どうなの?」 「俺は、午後は大丈夫。当日の時間とかは、貴女の都合で進めていい」 「有難う。又、いつも通り夕方前の待ち合わせになるわね。場所は、近づいたらにしようかしら」 「OK。明日からの仕事、つつがなく」 「お互いに」勿論、次の「絡み」への期待を持ちつつ交信終了。

豊(ゆたか)に徹、甥の健(たける)の三少年が、それぞれの強化学級から戻ると、すぐ盆の期間になる。中条は、盆明けにも彼たちを呼び、小町の芳しからぬ欲望から守る為の、方策を話し合いたいと思い始めた所であった。その為に、その前に初美と会って、彼女の知恵や意見も拝したかったのである。多言はできないが、彼女は、既に甥と徹と、一度は関係を持ってもいるのだ。
肉野菜炒めや吸い物に米飯、缶ビールに果物などの夕食を済ませ、ザッと入浴。家事を終わる頃には、残念ながら、対戦相手に逆転を許したドラゴンズの敗色は濃厚になっていた。

一方の小町。中条に見送られ、近参こと近畿参宮電鉄の特急列車で、一路Z市へ。JRのN市中央駅地下に位置する、近参名南線の起点を発った列車は、JRの操車場、倉庫地帯と住宅地を左右に見ながら、暫くは西進。田園と住宅地が入交る所を一走り。堂々たる広さを誇る、木曾三川(きそさんせん)を長い鉄橋で越え、M県へ。

県境を越え、暫くすると、最近人気の「工場夜景」でも知られる、Y工業地帯を左に見ながら、南寄りに進路を変え。ここは、M県最大の都市でもある。その後、概ね田園の中に市街地や住宅地が点在する風景を見ながら、約一時間強でZ市へ。小町が列車を降りたのは、夕方前。集改札口を出た所で、高等科の強化学級に参加中の、豊の出迎えを受ける。

「お疲れ様です!宜しく、お願いします」 「お家では、ゆっくりできた?」 「ええ、お蔭様で、まあリフレッシュですよ」 「それは良かった。又、明日から頑張って」 「はい、頑張りますよ!」 「元気でよろしい。今日の夕飯は、期待してて」 「有難うございます!」

JRの列車も乗り入れる、Z市駅に隣接するホテルに、チェック・インす。当然の事だが、二人はお忍びだ。小町はこの日、別の用事で、一人で前泊と言う事になっているし、豊は、この日はまだ実家にいる事になっている。部屋は広めのダブルだが、学院に対してはシングル泊りとしてあるし、領収書もそうなっていた。差額、そして食事代の多くは小町の自腹だが、この後の欲望を遂げる為には、大した出費ではないかも知れない。ここで一泊。明朝、理事長や他の講師、生徒たちと合流、強化学級の学舎 勢奥荘(せいおうそう)へと向かう予定である。

こちらは、何とか降雨を免れ。一度部屋に落ち着き、手回り品を置くと、二人は、城址や有名な国学者の居所跡、それに点在する寺社などを巡り、一時間余り軽く散策。明朝の出発が早いため、このタイミングでしか見物できないのだ。宿の辺りへ戻ると、着いた時電話予約した、由緒ある肉料理の店で、夕食。この街の山沿いは、我国屈指の、高級牛肉の大産地である。

「豊、ホントはね」小町が言う。「君と、思いっきりステーキや焼き肉を食べたいんだけど、明日から、又(強化)学級でしょう。幾ら何でも、煙とか大蒜(にんにく)の匂いがすると拙いから、今夜は『しゃぶしゃぶ』で我慢してくれない?悪いわね」 「いやいや、とんでもない!『しゃぶしゃぶ』好いじゃないですか。俺は大歓迎ですよ。大体、何度も来れるとこじゃないですから」豊、こう返す。「有難う。じゃ、あたしも、今夜はお酒飲まないからね」 「はい。まあ、先生は、良けりゃ飲んで下さっても好いですが」教え子から、こうフォローされるも、未成年で飲酒が許されない事を考え、二人は、ペリエとジンジャー・エールで乾杯した。

極上和牛のしゃぶしゃぶコースは、女医と生徒の若者を満足させるに十分過ぎる内容だった。食後のコーヒーを嗜むべく、喫茶店に立ち寄り、満たされた気分で、二人、宿へ戻る。一時おいて、小町は豊に言った。「さ、二人で一緒に、シャワー行こうか」豊、一瞬戸惑った風だったが「はい、好いですよ。喜んで」率先して衣服を脱ぎ、いそいそと浴室へ。 「ふふ、スケベね」そう思いながらも、小町も続く。暫く、互いのボディ・ウォッシュや背の流し合いなどして過ごす。豊はこの折、洗髪もした。

「小町さんは、髪洗われますか?」頃合を見た豊、名前で呼んで訊いてみる。「そうね。ちょっとの間かかるから、君は先に出ていてくれるかな?」彼女は、そう返した。
日曜の夜と言う事で、TVも、余り面白い番組はなさそうだ。豊は、小町を待つ間、持って来たタブレットで、インター・ネットの芸能ニュースなどを見て過ごす事にした。下着を替え、浴衣を纏うと、ようやく寛いだ気になれた。小半時程して、同じく浴衣を纏う小町が部屋に戻り。

持ち込んだ飲料などを嗜み、暫く後「豊、今夜は」小町が切り出す。「はい、何でしょう?」 「君は、今夜寝るまでに、あたしの特別補習があるのは分ってるわね」そう言うと、向き合う小さ目のソファの一つに腰掛け、既に座る豊と向き合い、脚を開いてスポーツ座りの体になった。上方は、浴衣の合わせ目から胸の谷間が窺え、下方は素足に「T」を着けるのみ。立膝で、豊からはその辺りが露わに見える。「わわ、これは・・」彼の下方が熱くなり「少年自身」が勃起したいと訴える。

小町「ふふ、素直でよろしい。さあ、そろそろ始めようかしら。少しお話ししてからになるけど、君の理性は、何分もつかしら?」
豊「ああ、いやいや・・俺、余り自信ないっすよ。小町さん、挑発されると何か暴発しちゃいそうで、心配です」返す。
「そうかしら?我慢しなくていいわよ。何なら、あたしに飛びかかって押し倒すってのも、若者らしくていいんじゃない?」 「マジですか?際どいですね。ホントにやったら、暴力スレスレって線なんじゃ?」 「まあ、それもそうね」わざと股間が見える様、小町の挑発が続く。

豊「・・ですが、さっきより、ちょっと余裕が持てるかな。貴女の、素敵なお尻(ヒップ)の線が、じっくり見られる様になりまして。あの・・浴衣って素敵ですね。はだけた下の感じが、超エロいです。フル・ヌードより、断然素敵です!」 小町「そう?有難う。洗い髪も、好い感じでしょう」 「そうそう!・・ですね!洗い髪と浴衣って、最高のコラボですよね」豊、こう言って、小町の黒髪と、下をはだけ、脚を露わにした浴衣姿を称え。

「ハハ、スケベね!」 「済いません。本音ですよ」言葉の戯れ合いが暫し続いた後「さあ、じゃ、遅くならない内に、深い事始めようね」 「はい、お願いします」ソファを立った師弟、互いに背後に腕を回し、舌をも使った、深く濃い開始の口づけを交わす。まだ、夜はこれからだ。
(つづく 本稿はフィクションであります)。

今回の人物壁紙 天使もえ
松岡直也さんの今回楽曲「サン・ダウン(Sun Down)」下記タイトルです。
Sun Down

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