2ntブログ

記事一覧

轍(わだち)~それから 第24話「見当」

IMG_2160_2.jpg
8月初日は、時折陽の射す曇り空で始まった。熱帯夜ではないが、気温は余り下がらず、朝から冷房の有難みを感じるレベル。

「お早うございます!」前泊の、佐分利学院の養護主任 小町と、高等科生 豊(ゆたか)は、午前7時頃起床。念の為、各々が少し時間をずらして下階の朝食処へ。席も、少し離れてになった。衣服の消臭も施し、細工は抜かりなし。

半時程後、やはり前後して一旦部屋へ戻り。近隣の、JRのZ市駅前にて、午前9時に学院理事長や講師、他の生徒たちと待ち合わせの予定となっている。彼たちは、それに先立つ7時半に学院の高層校舎下に集合、ワン・ボックス車 トヨタ٠アルファードとその同類 ヴェルファイアの計二台で出発。途中、関西とを結ぶ、E٠M自動車道他を経由して、研修寮 勢奥荘(せいおうそう)へ向かう途中、Z市駅前で小町と豊を乗せる事になっている。車体は、どちらも濃色だ。

「昨夜は、大変お世話様でした!」8時半、まず身支度を整えた豊が、先に宿を離れて駅前へ。次いで数分後、小町がチェック・アウトの処理を経て出発。その折、係員に「一人で泊まった事にする様に」との念押しをしたのは言うまでもない。

「今週も、宜しくお願いします!」理事長の一行は予定より早く、8時50分頃、駅前に現れた。自動車道が思ったより空いていて、N市内からスムーズに来られた由。「これで、勢奥荘には9時半に着けそうだ」一行は、笑顔でそう言い合った。

理事長の乗る、二台目の車 ヴェルファイアの三列目後席が、小町と豊の為に空けられている。両車共、運転は男性講師が担う。二人は、助手席に座る理事長に一礼して、何食わぬ顔で車に乗り込む。「ついさっき、彼と駅の中で落ち合ったのよ」の小町の言葉を、疑う者はいなかった。

勢奥荘にて月・火曜の二日間、その後、中等科生の研修地 A県東部の公営施設にて水・木曜の二日間を、それぞれ無難に過ごした小町は、金曜午前の鵜方病院にて診察勤務の為、4日木曜夜に帰宅。強化学級の生徒たちは、この土、日曜は教科の都合で、親許へは帰れない。

その6日土曜朝、生徒の一人、健(たける)の伯父 中条は、いつもの通り、向かい家屋上に現れた、Kuso犬の咆哮で起床。

「ホントにまあ、よくもぶっ続けで、あんな屁垂れ声を連発できるもんだぜ!」もう毎度の事とは言え、この朝も、暫し呆れ顔で、この不良犬の挙動を観察した。下方の通行人全員、特に犬連れには猛然と反応する所も又、いつも通り。犬によっては吠え返す向きもいて、この時のけたたましい応酬は、ちょっと見ものではあった。「まあアホ同士、せいぜい頑張れや・・」これが、中条本音の呟きである。

相手にもよるが、優勢だった時など、こいつは己の尻を追って、グルグルと回る習性がある事も、既に述べた。この朝もそれが出て、随分としつこく回り続けた。それを男は「ここまでやると、最早気狂い踊りだな」などと、少年たちのいる所でも茶化した。

この土曜も、ほぼいつも通り。午前8時出社。盆休みが近いため、その対応と、週明けの段取りなどして、午前中で勤務終了。親族たちとの昼食を済ますとすぐ帰宅。午後、夕方前まで居所の雑用をこなして、茶菓の後、時折訪れるN市中央駅近くの書店にて、6時に初美と待ち合わせる約束を。

その道すがら、中条は、既に席を予約している馴染みの居酒屋に立ち寄り、海鮮の入荷状況を訊いて、大体のメニューの希望を伝える。書店へは、彼の方が僅かに早着。雑誌に目を落としている所へ「新さん、お待たせ!」淡色の上シャツとロング・パンツ姿の初美が現れ。「ああ、いやいや、今日も麗しい事で」直ちに、馴染み処へと移動。

夏場の盛りにつき、二人は、刺身などの生ものを控えての注文。煮魚や鶏を含む揚げ物、焼き物や温野菜が主だった。酒気は大体いつも通り、最初が生ビールで、次は初美がチューハイ、中条は冷酒と言う所。酒食を進めながら、二人は以下の会話を。

「先週、小町さんに会ったよ」中条が切り出す。初美は「やはりね。で、強化学級に加わってるみたいだった?」 と返し。

中条「そうだね。この前の日曜午後、近参(近畿参宮電鉄)線のフォームで見送ったから、まあ間違いなかろう」 初美「なる程。・・て事は、その夜、豊野君と会ってた可能性が高そうね」 「そう言う事だ。まあまだ観測の域やけどね」 「で、彼とだけじゃ飽き足らず、健君や徹にも、もう一度手を伸ばしたいってのが、彼女の本音かしらね」 「まあ、貴女の見立てでほぼ間違いなしって事・・かな」

初美「ホント。事実なら困りものだわ。ここじゃ大声で言えないから、後で話すけど、何しろ、彼たちは未成年だからねぇ」 「初ちゃん、奇遇だな。実は今、俺もそれ、考えてたんだ。今は理事長が抑えてくれてるから好いけどさ」 

初美「・・でしょう。でも理事長の力だって万能じゃないわ。いつどこから漏れるか分ったもんじゃない」 「だから、そうならん様に、あいつら二人と(豊野) 豊君を、小町さんから遠ざける様にせんといかんし、彼女ももう、生徒に異常接近せん様にしてもらわにゃって事だわな。幾ら養護主任や言ったって」 

初美「そうよね。今夜は、その辺をゆっくり話し合いましょう」 
中条「OK。ただね、ここじゃ衆目があるからさ、必要なとこは、俺んちで後程・・でいいかな?」 「勿論。それ、あたしから願いたいわ。・・てとこで、この話は区切りにして、もう少し美味しい所を楽しみたいわね」 「好いでしょう」二人は、一旦話題を変え、世間一般や芸能、中条の写真や初美の音楽の話題とかで、一時間程をを過ごした。

タクシーで中条の居所へ。交替で、ザッとシャワーの後、彼の洋酒と初美の置いているリキュール、それにチョコやサラミ、干し昆布など簡単なつまみで飲み直し。その席で初美が「さっきの事だけど、小町さんが関わってる生徒たちの事!」こう言い 「そう!全員が未成年だって事。俺も気にはなってたよ」中条が応じ。

初美「去年の今頃、初等科の特別林間学級で、未成年男子と交わると、法令違反で逮捕もありって言ったの、彼女よ」 「そうらしいな、俺も聞いたよ」 「・・たく。言い出しっぺがあんな風じゃ、ホントに先が思いやられるわ。まああたしも、手出しした口だから、大きな事は言えないけどね」 

中条「ああ、分るよ。あの女性(ひと)は多分、理事長のガードを心から信じてるんだろうな。だが、過信はいかん。貴女が言ったみたく、いつどこから漏れるか分らん。理事長は、芸能界にも近い立場やから、もしかすると、週刊誌とかが学院近くで覆面取材してる線も捨てられんもんな」 

初美「それよね。彼女が今、その辺をどれ位理解してるか、ちょっと不安もあるわ」 中条「その前に、徹君と、ウチの健を、彼女からどう上手く距離を置かせるかが大事な気もするけどな」 「確かにね。彼たちを、これ以上大人の妖しい欲求に晒さない様にしないと」 「そうそう、それ大事。あいつら二人を守れてから、小町さんに、未成年趣味から手を引かせるってな段取りになりそうだな」 

初美「結構大変だと思うわ。少し日数を見ておいた方がいいわね」 
中条「勿論、そりゃそうだ。今年中にそれができれば好い方だろう。でも、だから今から始めんとってとこもあるわな。何しろあいつら、大学と高校の受験を控えてんだからさ」 「本当にそれよね。三人とも、勉強に集中できる様にしてあげないと、かわいそうだわ」

話が一区切りになった様な。「又後で、続きを話そう」と言う事になり、バス・ローブ姿の初美は、着替えに隣室へ。実は、この少し前から、彼女は中条の居所へ、一部の持ち物を置いて行く様になっていた。バス・ローブや夜着るミニコス、歯磨きや洗髪、化粧用などのお泊りグッズとかだ。

女の着替えの間、男は、所々に散らばる、街の灯を眺める。一人の時は折々あるのだが、女の訪れている間は、中々ない。「これ、ちょいと好い気分転換やね」そろそろTVの報道番組でも、と思ったその時「お待たせ・・」初美の着替えが終わった様だ。
(つづく 本稿はフィクションであります)。

今回の壁紙 近畿日本鉄道鳥羽線 鳥羽~池の浦間 三重県鳥羽市 2015=H27,7 撮影 筆者。前回、小町乗車の、近畿参宮電鉄特急列車のモデル「伊勢志摩ライナー23000系列車」

松岡直也さんの今回楽曲「午後の水平線(A Farewell to The Seashore)」下記タイトルです。
A Farewell to The Seashore

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hakase32

Author:hakase32
愛知県在住の後半生男です。恐れながら、主に18歳以上限定内容を記して参ります。

お手数ですが、拙各稿を初めからお読み下さる場合は、下方にあります月間アーカイブ他のご利用をお願い致します。
他ブログを含め、拙記事の無断転用及び引用は ご遠慮下さい。

下記ランキングに参加しております。
クリックをお願いできれば幸いです。

官能小説ランキング

アクセスカウンター

愛と官能の美学

Shyrockさんの R18読み物集。他の作者各位も多数リンクされています。入口は、下記タイトルです。

赤星直也のエロ小説

赤星直也さんの R18読み物集。入口は、下記タイトルです。

未知の星

赤星直也さんの R18読み物集もう一つ。他の各位の作品も収録されます。

Mikiko's Room

Mikikoさんの、カテゴリー豊富な R18読み物集。独自視点の旅日記も好感です。

Adult Novels Search

R18 読み物の検索サイトです。

ブロとも一覧

拙バナーです

知人様より、優れたバナーを賜りました。必要時はご利用を Produced by Shyrock

もう一つの 拙バナーです

知人様ご厚意により、拙バナー追加編も賜りました。必要時はご利用を。 Produced by Shyrock

清き一票を(笑)

下記ランキングに参加しております。

日本ブログ村バナー


にほんブログ村 →できますれば、こちらも応援を・・

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

月別アーカイブ

これまでの拙連載「想いでの山峡(やまかい)~林間学級の秘密(2016=H28,9~10)」と「轍(わだち)~それから(2016=H28,11~2017=H29,2)」  「母娘(ははこ)御膳(2017=H29,3~6)」  「南へ・・(2017=H29,6~8)」 「交感旅情(2017=H29,9~12)」 「パノラマカーと変な犬(2018=H30,1~5)」  「ちょっと入淫(2018=H30,6~10)」 「情事の時刻表(2018=H30,11~2019=R1,6)」 「レディオ・アンカーの幻影(2019=R1,11~2020=R2,5)」 「この雨は こんな風に聴こえる(2020=R2,6~2021=R3,3)」も お読み頂けます。