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轍(わだち)~それから 第40話「新路」

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9月17日の土曜、曇り日。中条は、例によって斜め向かい家の屋上に現れた、Kuso犬の咆哮で目を覚ます。

「ここまで来ると、もう予定調和だな・・」とも思う。下方を行く散歩人の連れ犬に、遠吠え交じりで仕掛け、その連れ犬も、負けじとやり返す。飼い主の散歩人は「我関せず」とばかりに歩を速め、リードで犬を促して遠ざかる。上から目線のKuso犬「わ~っ、勝った!ザマミ~!」と言わぬばかりにもうひと吠え。それから勝ち誇った様に、己の尻をグルグルと追い回す「気狂い踊り」をひとしきり。「勝手にやってろ!」愛想を尽かした男は、朝食を手にTVの前へ・・

この日午後は、佐分利学院の養護主任 小町が、新潟県下での医学会出席の為、現地へ発つ事になっていた。その見送りの為、土曜午前の仕事も早めに切り上げられる様、社長の義弟や、専務の実妹とも打ち合わせ済み。居所斜め向かいの Kuso犬の事は、もう親族たちにも知れ渡っており、専務からは毎朝「お犬様は、元気かい?」と冷やかされる始末。「・・たく、犬より低く見られとるんか」悔しいが、こいつのお蔭で精勤できるのも事実。「健(たける)の教育に悪影響がなきゃ良いが・・」つい心配の一つもしたくなるものだった。勿論、半分は、身から出た錆でもあるのだが。

この日の仕事は、11amで終了。時間に余裕があり、徒歩でJRのN市中央駅方向へ。小町、初美、それに豊、徹、甥・健の三少年とは、11:45amに、名豊電鉄バス・ターミナル下の、巨大な人形オブジェの下で待ち合わせだ。三少年には、ちょっと芳しくない夢と願望があった。それは、人目のない深夜、女性がモデルと言われる、このオブジェの股間に「女の真実たる秘裂」を詳しく描き込んで、逃走する事だった。勿論、高所もあって、未だ実現には至らないのだが。

小町は今回、新潟への行程に、空路や新幹線ではなく、長距離高速バスを選んでいた。ここから新潟までは、日に二往復。午後早い時間に発つ昼行と、10:30pm過ぎに発つ夜行があり、彼女の乗る昼行は、新潟地方の路線バス大手 新交興業の担当となる。この会社、以前は電車線も少しあった事は、鉄道ファンの間では有名な話の様だ。小町は、この街で9月19日から21日まで医学会参加。その後、月内一杯 東北の実家へ帰省。10月3日の月曜から、不在の間、代理で学院に来る保健師と交代で復帰の予定である。

「こんちは!元気に行けそうやね」 「小町先生、頑張って来て下さい!」 「皆、有難う!準備万端よ!」バスタから近い、某パスタ料理店に予約していた一同は、ランチのセットを囲み、ひとしきりスーツ姿の小町を励ます。男たちは、思い思いの上シャツにジーンズ姿、ベージュ基調の上シャツに膝丈スカート姿の初美も前後して現れたが、どうも既に、デパ地下で一部の買い物を済ませている様だった。「初美先生、お久しぶりです!」やはり前後着の三少年。「皆、元気で何より!」ほぼ一年ぶりに再会の元恩師との会話も、彼たちの楽しみの様で、明るい雰囲気の内に進んだ。大声では言えない、夏の夜の思い出は話題にならなかったが。

その近況報告とかを交えての、コーヒーや紅茶などを嗜むランチの終盤、小町が「中条さん、ちょっといい?」と声かけ。「はい、何でしょう?」彼が返すと、予め店に頼んでいた、近くの席に移り、暫し会話。この日の彼女は、長めの黒髪が、着用のスーツとよくマッチしていて、艶めかしかった。

「実はね・・」女医が切り出す。「今朝、学院に出て、途中から初美を呼んで、少し話をしたんだけど。彼女、貴方の事で、大きな決意をしてるみたいよ」 「はい、決意・・ね。それは、もう・・?」 「そう、あの事よ」 「あの事ですか・・分ります」決意・・或いはそれは「結婚」を意味するかも知れなかった。

小町は続ける。「彼女、ウチの理事長の推薦で、関連の情報企業に行ってるのは知ってるわよね」 「ええ、その辺はね」 「で、そこが、貴方の加入してる生保会社とも関連があって、そこから、貴方の保険契約の詳細を知ったみたいなの。あたしは言及しないけど、かなり入念な契約をされてる様ね」 「ええ、まあね・・」 「絶対って断言はできないけど、彼女がその決意をしたって事と、全然無関係とは言えないでしょうね」 「なる程、そりゃそうだ。よく『女は現実志向』って言うから、俺のその辺を知ったって事が、決意に繋がった線もあるって事を、仰りたかった訳ですね」 「まあ、そんなとこね」 「そうですか、そいつは有難うございます。まあ急でも何やから、折々話す様にしますかな」 「それが好いわ。この後、初美からも話があるだろうけど。又、何かあったら声かけてね。あたしは良いから・・」 「分りやした。情報感謝です!」会話が終わると、二人は、何食わぬ顔で一同の席へと戻った。

もう暫くの、身の回りの会話の後、1pm前、一同は、バスタ3Fの新潟行乗り場へ。先発の富山行が、正に出発する所。これに続いて、小町の乗る便が入る。バスは「I自動車」のバッジが着くも、よくよく見れば、我国最大手の関連メーカー H自動車の大型モデル「セレガ」と瓜二つではないか。「OEM(相手先ブランド)供給だな、これは」中条が言った。「バッジは『I社』でも、実態は『H社』で生産されたんですね」豊が返す。「そう、最近の自動車業界では、結構あるな」 「それは良いとして、ナンバーが『999』は面白いね」健の指摘に、一同は静かに笑った。

「お待たせしました。ご乗車を受け付けます」二人いる運転手の内一人の案内で、乗車開始。小町、書類や着替え、洗面具などを収めたキャリー・バッグを床下トランクに預け、スマホや飲料、文庫本など、僅かな手回り品のみを席へ。やや狭いが、一人ずつの席が独立した三列の内装。これも狭いが、トイレや給茶器も完備。これからほぼ七時間に及ぶ行程も、まあ快適そうだ。「七時間・・この間に、心の一区切りができる様にするわ」小町は言った。「応援します。今月の残りが、貴女にとって有意義なものになる様に・・」初美と中条、こう言い。「僕たちも、応援しますよ!」徹が音頭を取り、三少年も応じ。「皆、有難う。行って来ます」女医は、静かに返した。

「恐れ入ります。発車時刻になりました」運転手の知らせに「はい、済みません。それでは、出して下さい」一同は、少し下がってこう応じ。行程前半の運転手がコクピットに着き、行程後半の運転手が隣に控え。30席弱の車内はほぼ埋まり、小町も、左側の前から三番目の席に着く。「出たら、すぐ下に下りれば、もう一度見送れるからな」中条、皆にこう伝え。

「行ってらっしゃい!お気をつけて」1:10pm、バスは静かに乗り場を離れた。以前に比べ、問題とされたディーゼル・エンジンの騒音も、随分抑えられている。まず挙手で挨拶すると、一同は、すぐエスカレーターで階下へ。暫く後、Uターンの形でアプローチを下ったバスが、再び現れる。「さあ、これで暫くお別れだ!」もう一度、手を振り合っての挨拶。一同は、右折、そして左折で通りの向うに姿を消すまで見送った。

「伯父さん、初美先生も、ご馳走様でした!」馴染みの店で、茶話会をすると言う三少年と別れ、初美と中条は、バスタの下辺りのデパ地下で、生鮮食品などを買い求めた後、市営地下鉄で彼の居所へ向かう。翌日は、雨の予報が出ており、なるべくこの日の内に買い物を済まそうと言う事になったのだ。話から、どうも初美は、中条宅に連泊のつもりらしい。この日夜は、中条馴染みの居酒屋へ酒食に行き、翌日夜、宅配ピザを取り寄せてのウチ飲みをする予定とした。この日できなかった掃除、洗濯などの家事は「それ、二人で手分けしてしようよ」との彼女の提案を受け入れ、翌日する事にした。余談ながら、中条の居所に置かれる、初美の持ち物が少しばかり増えて来た様な気もする所だ。

2:30pm前に帰着。中条は、すぐにラジオのスイッチを入れ、プロ野球中継を聴く。この日の地元球団 NCドラゴンズは、西日本遠征中。地元の勇者 MHカープとの連戦だ。前日は敗れたが、この日は優勢の様だ。落ち着くと、彼はコーヒーを入れ、初美にも勧める。中条「これでまず一区切りだな。小町さんも、道中で気持ちの切り替えをしてくれるだろうし」と言えば、初美も「そう。それが上手く行くと良いわね」と返し。暫くは、この夏の回顧と、進行中のプロ野球中継の話で時が過ぎ。

3:30pm前だったろうか。話が途切れた所で「新さん、ちょっとシャワーが浴びたいわ」初美が言う。「そうか。どうぞ」中条が返すと「ねえ、一緒に使おうよ」と来た。「ん?」と、男は一瞬思ったが、黙々と応じ。施錠を経て全裸になり、二人一緒のシャワーは、かつて中条が離婚した直後にしばしば世話になった、デリバリー・ヘルスの女性クルーと一緒に使った時の事を、ふと思い出させた。

「新さん・・」 「ん、何かな?」 「何を考えてるの?」 「あ、いやいや、何でもねぇよ」時折、口づけが交じるその場を何とかかわし、下着上下の中条、先に部屋へ。少しおいて、再び着衣の初美も現れる。長手ソファに並んで座り、ラジオのプロ野球中継を引き続き聴く。TVに変えようとする中条の手を、初美が制した。「それはやめて。今から・・」 「うん。今から・・大事な話かな?」 「ふふ、ちょっと違うかもだけど・・」 「いいよ。言ってみろ」 「それはね・・」女はこう言い、男のトランクスの前開きに手を伸ばすと、「彼自身」を取り出して愛撫を始めた。

中条、立膝した初美のスカート内に手を遣り「ハハ、こんな事だろうと思った。この後、ズリ降ろしたいんだろ?」と糾すと、彼女は「まあそうよ。もう少ししたらだけどね。所で、小町さんから、お話聞いた?」 「ああ、聞きましたよ。相当に、俺の内々の事を調べたらしいな」 「そう、前振りしなかったのは、ご免なさい。でも、やっぱり気になってね」 「もう良いよ。知れちゃったら仕様がねぇだろ。で、俺の用意はそれなりだったから、感動しましたってか?」男はニヤリとして言った。「まあ、そんなとこね。お仕事は目立たないけど、生き方は手堅くて。そんな男も、魅力有りかなって感じよ」

女はこう返すと、やおら男のトランクスをずり降ろす。彼の下方は、昼間から裸にされた。下草茂る、男根と陰嚢に、なよやかな手指が取り付き、虫の様に蠢き出す。男は、女の上シャツを捲り上げてブラをずらし、乳房への愛撫で応える。ついでに、舌技を交えた口づけと、程良く長いブルネットにも手を伸ばし。

「初ちゃん・・」彼女と唇を重ねる中条、息を荒げながら訊く。「貴女、まさか今から行為するつもりじゃ?」対する初美「そうよ、そのまさか。今頃気がついた?」と返し、愛撫の度合いを深めて行く。やがて、礼儀を正した「彼自身」の鈴口に唇を合せ、舌も使ったフェラチオへと進む。「所謂、昼マンかよ?」 「はい、その通り!ねえ新さん。あたしの真実を、下品な言葉で言ってみて」 「オイオイ。そんな事、俺に言わすのか?」 「いいから!」下方に仕掛けられ、荒い吐息の中条、呻きながら言い。「お・ま・ん・こ・・」

初美「は~い、よくできました!お返しに、あたしも、貴方の真実の事、言ったげるね!」 「無理せんでもえぇぞ。貴女が下品に見えちまうわ」中条の浮かぬ顔を尻目に、女は「お・ち・ん・ぽ・・」とはっきり言い。「あ~あ、やめて欲しいわ・・」一方で思いながらも、男は「OK。行為で返させてもらうぞ」こう言って、女をソファの上に仰向けにし、脚を曲げ開いて臀丘、そして菊花(肛門)を指でさすりながら、股間の口唇愛撫(クンニリングス)にかかる。捲られた、フレアの膝丈スカートの下は、サスペンダー型のパンスト。ノーマルのショーツは、既に脱いだ後だった。

「初めから、ノーパンは嫌かしら?」初美の言葉に「いやいや、望む所さ。俺の願望分ってくれて、有難うよ」中条はこう返し、彼女の下方への愛撫を進める。程良く秘液で潤った、下草と秘裂に唇と舌を見舞い「ジュルジュル・・」と音を立てて、合わせ目に舌を出し入れしたり、何度も陰核(クリトリス)とかへの口づけを繰り返すなどした。「ああ、好い。んんん・・」ブルネットを揺らし、女が低めの声で喘ぐ。

暫く後「さあ、新さん」初美が言った。「一つになろう。終ったら、お酒が美味しいわよ」 「ああ、まあね。じゃ、まだ明るいけど、繋ぐよ・・」 「ゴムは良いのかな?」と思いながらも、中条はこう返して、臥した彼女の下方から秘花に、礼儀正しい一物をゆっくりと繋いで行く。いつも以上に濃厚な、肉壁、そして粘膜の迎撃を受け、深まる程に、厳しい締め上げ。やがて、興奮を呼ぶ「ポルチオ性感」をもたらす子宮口に達し「ふぅんん・・」軽い喘ぎの合図で、連結が果たされる。

男は、これを確かめて、女の上体を抱きしめにかかる。「ああ、熱い。もう・・時間など関係ねぇ。初ちゃん、これから俺の女は、貴女一人だ。愛してる、愛してる!」応じる女「新さん、あたしもよ!上と下から操り合って、これまで以上に、強く、深く、一つになるの!貴方は、必ずあたしの中に発射するのよ。そしてあたしは、貴方の男精を、一滴残らず搾り取る。一つは、二人の歓びの為。もう一つは、新しい命の為・・」

これを受け、中条は、ゆっくり腰を動かし始める。初めの頃は、揶揄されたスロー・ピストン。だが今、組み敷かれる初美は、恍惚の美しい表情で、歌う様な喘ぎを聴かせ「新さん、好いわ。もっと・・もっと続けて。貴方は上から支配、あたしは下から統制・・」背後に両腕、腰に両脚をガッシリと組み付け、今までにない強い力で蟹挟みを仕掛け、男と一体になって行く。長手のソファ上で、唇を交わしながらの熱い正常位の抱擁。下からの、女の寝技に酔い痴れる男。傍らでは、ラジオのプロ野球中継が続く。微かに聞こえる、観衆の歓声。このシーズン、Bクラス落ちが噂される NCドラゴンズだが、この日は勝利を収めたのであった。
(おわり 本稿はフィクションであります)

今回の人物壁紙 星野ナミ
松岡直也さんの今回楽曲「この道の果てに(The End of The Way)」下記タイトルです。
The End of The Way

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