2ntブログ

記事一覧

母娘(ははこ)御膳 第1話「衝動」

18735.jpg
「何なんだ?・・一体、何考えてたんだよ?」本当に、魔が差したとしか思えなかった。時季は11月初めのある平日、場所は、N市営地下鉄・栄町駅の駅長室。若い男が、駅長立会の下、私服警官から取り調べを受けている最中であった。

若者の名は、阿久比 周(あぐい・あまね)。年齢は19歳、大学受験浪人中の、所謂「一浪」である。N城址の北方、黒川と言う街から地下鉄に乗り、一度の乗換後、JRのN市中央駅近くの総合予備校 佐分利学院の受験コースに出席すべく、朝方向かっている途上で、問題を起こしたのである。

時は7am代後半。早めに出かけて、早い時間に自習を図った周は、大いに混雑する地下鉄・城下線の車内で、被害者となる女子高生と遭遇する。普段、ミニ・スカートにハイ・ソックス姿の女子高生を見かける事は間々あったが、この日はどう言う事か、邪心の様なものが、彼の脳裏に入り込んだらしい。

件の女子高生は、周のすぐ前、乗降扉の傍にいた。芳しからぬ心理の周、意識してかせずでか、少女の背後に手を伸ばし、ウェストのくびれの辺りを一撫でし。この時は、まだ気づかれていない。地下の列車が城址のほぼ真下に達した頃、彼は少女のスカート内を狙った。周囲に悟られぬ様、下からゆっくりと手を入れ、太腿を窺う。

城址のほぼ真下、市役所駅に入った時、周の所業は、少女の知る所となる。減速の負荷を利用し、太腿を僅かに撫でたその時、少女が声を上げた。「ちょっと!Chikanです!」周は、急いで手を引いたが、その時右手指の二本が、ミニ・スカートの裏地に引っかかる形となり、後に物証とされる事に。

「おい、動くな!」40代位と、20代位の男二人が、周を囲んで抑えにかかる。「お姉さん、栄町で駅長室行くからね」若い方の男が、少女に告げる。「はい、お願いします」彼女は、こう返し。数分後、列車が栄町に着くと、男女四人は駅長室へ。実は、年上の男は刑事課の警官。丁度、駅近くの署へ、私服で出勤途上であった。携行の警察手帳から、身分が分る。

少女は、駅長室に着くとすぐ、母親と学校に携帯連絡。事件に遭い、遅刻見込みを告げる。同行の私服警官から事情聴取を受け、約20分後、母親が駅長室に着くのと入れ違いに学校へ。同時に、周を取り押さえた背広の若者も、同様の対応の後、駅長室を後に。
「どうも、申し訳ありません!大変な間違いをしました!」母親と言う女性が現れると、周は直ちに、最敬礼で謝罪を表す。「本当にねぇ。ただの迷惑じゃ済まないかもよ」彼女はこう応じ。そして「こう言う間違いは、初めてなの?」
「はい。これまでは一度もなかったんですが、今朝はどうかしてまして」周は、こう返した。それから若干の会話の後、私服警官が「では、続きは署で伺いましょう」と、女性と周を促し、駅近所の警察署へ。

写真撮影、DNA鑑定、繊維鑑定が次々に行われ、爪にあったスカートの繊維反応から、Chikan容疑が裏付けられた。「物証は揃った。阿久比さん、容疑事実を認めますね」私服で出勤した、40代の警官の男が言った。「はい、認めます。間違いありませんので」周は、こう返した。

警官は続ける。「本当なら、ここで逮捕も有り得るんですが、阿久比さんは初犯の上に、親御さんの身元も間違いなく、逃亡の可能性もありません。お母さんは、花井さんと仰いましたね。どうします?立件まで進まれますか?」
聞いていた少女の母、花井 妙(はない・たえ)は、すかさずこう返した。「お巡りさん、立件は見送って頂けないかしら。彼は十分反省してる様だし、示談が必要なら、あたしの方で進めます。ですから、叶えば逮捕は回避して欲しいですわ」

警官「分りました。それでは、この件は在宅事件と言う対応をします。阿久比さんは、勾留されず、お家に帰って頂いてよろしい。ただ、検察による処分はあり得ますから、お相手のお母さんとの示談は、早めに進めて下さい。書類送検と言う事になりましょう」と見通しを語る。妙は「承知しました。そちらは早急に進めます」こう返し、周がそれを受けて「お母さん、改めて申し訳ありませんでした。お巡りさんも、ご面倒をかけました」改めて、謝罪。

「では、検察の処分については後日お知らせしますから、示談はしっかり進めて下さい。その具合では、不起訴にできる可能性もありますから」警官の言葉を受けながら、妙と周は、一礼して警察署を後にした。

「今日は、大変ご迷惑をかけました。同行頂き、有難うございました!」周、もう一度妙に頭を下げ。妙「もう良い・・とは言えないけど、若い内は、間違いもあるものよ。ねえ阿久比君、示談は一つ、あたしに任せてくれないかしらね。実はあたし、情報関連の会社やってんだけど、そこの法律顧問に動いてもらおうかしら。勿論、君の側にも、知り合いの弁護士がつくからね。もう二度とあんな事はしないってのが条件だけど、それさえ呑んでくれるなら、娘の宙(そら)との件、大事にはしないわよ」 聞いた周「分りました。有難うございます!ついては、連絡とか密にしないといけませんね」 妙「そうそう。君の携帯番号とメルアド教えてね」 「はいっ、只今」二人は、会社と予備校に向かう途上、連絡先を交換、再び地下鉄に乗り込む。

「お母さんは、いつもこの時間にお越しなんですか?」周が訊くと、妙は「うん。まあ一応社長だから、いつも朝早くから行ってなくても良い訳。ただ、今朝は早くからやりたい事があったから、朝一で出たんだけど、そこへ、娘からあの問題の連絡があったって訳で」 
周「そうですか。お仕事の支障にもなっちゃった様で、そちらも済みませんでした」 妙「いや、大した事ないわ。起きちゃった事は仕様がない。でも、要は二度と同じ間違いをしない事ね」 周「はい、そうですね。それは肝に銘じておきましょう」 
妙「阿久比君は、来年大学受験なんでしょ?」 周「そうなんですよ。自分なりに追い込んでるつもりですが、やはり不安はありますね」
妙「まあ、人生の腕試しみたいな感じで臨むと良いわ。失敗しても諦めないって感じでね」聞いた周、一度は失敗しているので、ほろ苦い話ではあるが「分りました。お言葉を胸に、頑張ります!」こう返す。
妙「又、会ってくれるかしら?今朝の示談以外でね」問われると、周「有難うございます!喜んで」と応じ。
小半時後、N市中央駅着。妙は自身の会社へ、周は遅刻しながらも、学院の教科に臨む。

地方検察庁から双方に、この朝の件が不起訴となった旨、通知があったのは、それから十日程後だった。勿論、物語はこれで終わりではない。検察通知があって間もなく、周のスマート・ホンにSMS着信。妙からの連絡であった。示談準備完了の知らせ。表向きは、周が先を焦って宙に体当たり、かすり傷を負わせたと言う事とされた。

栄町の、とある喫茶店で二弁護士を交え、再び会った妙と周。その席で、示談を成立させ、形ばかりの賠償と言う事になったが、妙はこう言った。「一応、賠償請求はするけど、実際は出世払い。君が偉くなって、いいお給料をもらえる様になってからで良いわ」 「有難うございます!早い時期に、必ずお支払いします」周は、こう返した。妙はこれを受け「実はね・・」周の耳元で囁く。「はい、何でしょう?」 
妙「君が、あたしにして欲しいお約束がもう一つあるの」 周「はい、お受けします」 妙「それはね・・」と切り出した。

(つづく 本稿はフィクションであります)
今回の人物壁紙 穂花

今連載の音楽リンクは、久石 譲さんの楽曲を載せて参ります。今回は「竜の少年」
The boy Who is Dragon

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hakase32

Author:hakase32
愛知県在住の後半生男です。恐れながら、主に18歳以上限定内容を記して参ります。

お手数ですが、拙各稿を初めからお読み下さる場合は、下方にあります月間アーカイブ他のご利用をお願い致します。
他ブログを含め、拙記事の無断転用及び引用は ご遠慮下さい。

下記ランキングに参加しております。
クリックをお願いできれば幸いです。

官能小説ランキング

アクセスカウンター

愛と官能の美学

Shyrockさんの R18読み物集。他の作者各位も多数リンクされています。入口は、下記タイトルです。

赤星直也のエロ小説

赤星直也さんの R18読み物集。入口は、下記タイトルです。

未知の星

赤星直也さんの R18読み物集もう一つ。他の各位の作品も収録されます。

Mikiko's Room

Mikikoさんの、カテゴリー豊富な R18読み物集。独自視点の旅日記も好感です。

Adult Novels Search

R18 読み物の検索サイトです。

ブロとも一覧

拙バナーです

知人様より、優れたバナーを賜りました。必要時はご利用を Produced by Shyrock

もう一つの 拙バナーです

知人様ご厚意により、拙バナー追加編も賜りました。必要時はご利用を。 Produced by Shyrock

清き一票を(笑)

下記ランキングに参加しております。

日本ブログ村バナー


にほんブログ村 →できますれば、こちらも応援を・・

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

月別アーカイブ

これまでの拙連載「想いでの山峡(やまかい)~林間学級の秘密(2016=H28,9~10)」と「轍(わだち)~それから(2016=H28,11~2017=H29,2)」  「母娘(ははこ)御膳(2017=H29,3~6)」  「南へ・・(2017=H29,6~8)」 「交感旅情(2017=H29,9~12)」 「パノラマカーと変な犬(2018=H30,1~5)」  「ちょっと入淫(2018=H30,6~10)」 「情事の時刻表(2018=H30,11~2019=R1,6)」 「レディオ・アンカーの幻影(2019=R1,11~2020=R2,5)」 「この雨は こんな風に聴こえる(2020=R2,6~2021=R3,3)」も お読み頂けます。