交感旅情 第4話「備忘」
- 2017/09/07
- 15:42
明けて日曜の朝、前夜が流石(さすが)に遅い就寝だったので、中条の居所に泊まった、周(あまね)の目覚めは芳しいものではなかった。天気は良く、陽春らしい快適さが感じられるが、彼自身は必ずしもそうではない。8amを大きく過ぎた頃、覚醒をもたらしたもの、それは・・窓外に、けたたましい、甲高い咆哮。下方から、もう一つの吠え声が聴こえて来る。そう、中条の居所 斜め向かい家の屋上に、例によって、躾(しつけ)の良くない飼...
交感旅情 第3話「姦談」
- 2017/09/05
- 21:41
「おや、伯父さんとこにも、何か来ましたか?」 「ああ、来た。初ちゃんからだ」 「ハハ、丁度良かった・・」 「うん、まあな・・」深夜の居室で、夜着姿の周(あまね)と中条(なかじょう)は、顔を見合せて笑った。双方のスマート・ホン、周は宙(そら)から、中条は初美(はつみ)から、それぞれLINEで言葉を受け取る格好だ。「ノーパンか。好いなあ・・」周は呟く。「ねえ、周さん・・」宙の言葉に「はい、何?」と返し。「あのね、...
交感旅情 第2話「前奏」
- 2017/09/03
- 22:01
桜の見頃も終わった曇り空の春の夜、室(むろ)の店に、思い思いの普段着で集まった、四人の男たちの歓談が続く。「周(あまね)君、それはだな・・」一膝(ひざ)、彼に近寄った中条は続ける。「君と俺だけじゃねぇんだ。俺がつき合う初ちゃんと、君の彼女 宙(そら)ちゃんの、四人で行くんだ。出発は、28日金曜の夜、往きは夜行高速バス、帰りは新幹線乗継ぎになるだろうな」「そうですか。所謂2+2(ツー・バイ・ツー)って奴ですね。所...
交感旅情 第1話「行先」
- 2017/09/01
- 22:19
4/15土曜の夜遅く、後少しで日付が変わろうとする頃、A大学経済学部入学を果たしたばかりの阿久比 周(あぐい・あまね)は、総合予備校 佐分利(さぶり)学院時代の下級生 白鳥 健(しらとり・たける)の伯父 中条 新(なかじょう・しん)と共に、日頃のアルバイト先 欧風居酒屋「MURO」のカウンター席で会合をしていた。つい先日の12日、満二十歳を迎えたばかり。その事を知っていた中条は、周の休日 土曜日を選んで、この酒席を...